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文化祭2日目、最終日だ。
昼間は昨日通りだが午後3時から片付け後、5時から後夜祭だ。
つなぎも昨日帰った時に洗って持ってきた。こんな時しか着ないしね。本日も暑くなるとの事なので今日は白いノースリーブを中に着る。
後夜祭か、告白イベントもあるんだよね、あとキャンプファイヤー的なのも。
ミサキはブレスレット交換した様で青いブレスレットになっていた。え、相手誰なのよ、後で問い詰めなくては。そんな私は変わらずだ、まぁもう諦めようじゃないの。
今日の出店当番は、午前中だ。昨日は友達と交換してたから新開と被ったけど、今日は被らない。チョコバナナを無理矢理食べさせられる事もないだろう。
出店に立つ私、今日も中々の混み具合だ。スマイルゼロ円でチョコバナナをさばいていく。まぁ良い働きをしたんじゃないかな。
昨日に引き続いて、ミサキとお昼を買って中庭でイベントを見ながら食べる。展示物は昨日まわってしまったから、いく所がない。
「どーする?ミサキ」
「フラつく?ここにいてもナンパされるし」
あ、それはミサキのせいだからね。パラパラとパンフレットをまくる。
「あ、自転車競技部」
「何かやってるの?」
「ん、思い出した。体験コーナー的なのやってるはず、暇だったら付き合ってよ」
瞬間ミサキの携帯が鳴る。
「ゴメン、当番早めて欲しいって言われたから行くね、誰か声かけようか?」
「みたいだね、いいよ当番行って。とりあえず1人で顔出してみるわ」
荒北当番午後だったから居るはずだ。
自転車競技部にコソッとお邪魔する。
「荒北居ます?」
後輩っぽい男の子に聞いたら、東堂さんや新開さんじゃないんですか?と言われた。いや、荒北かフクチャンが良いかな。部室に呼び行ってくれた、なんだかカワイイ後輩だったな。
体験コーナーは外部の人っぽい人が数人居るだけで意外とガランとしていた。でもなんかアウェイ感半端ない。荒北達はいつもここで練習してるのか、部屋をくるっと見渡す。意外と綺麗にしてあるようだ。さっき開いた時ちらっと見えたあの部室以外。
部室から出てきた荒北。当番ならちゃんと当番してなよ。連れてきた泉田君という後輩にお礼を言う。
「あー、来たんだなまえチャン」
ジャージのポケットに手を入れながら出てきた。
「意外と空いてるんだね」
「東堂、新開が当番だとうっせェけどな」
あぁ、納得そう言うことね。
体験コーナーの端っこに連れて行ってくれた。人余ってるので一対一で見てくれる様だ。
そして固定されているロードバイクに乗れと簡単に言ってくる。私が言うのもなんだけど適当な説明だな。ダボつくつなぎの裾を適当にまくってロードに乗る。
「こ、これで良いの?物凄く身体痛いだけど」
もの凄い前傾姿勢だ。首やら腰やらが痛いんだけど。
「まァ、とりあえずそんな感じで良いんじゃナァイ」
適当にペダルをクルクル回してみる。凄いとしか感想出てこない。よく走れるよ、そしてこれで戦うんでしょ?ちょっと大会観に行きたくなってきた。
「荒北達凄いね!これでよく長時間乗ってられるね!」
「んな当たり前なこと褒めんな」
ハッとした荒北、どこかに歩いて行ったかと思ったらユニフォームを手にして苦い顔して帰ってきた。
「...まだ乗るっつーならこれ上から着ろ」
差し出された青い箱学ユニフォーム。え、着て良いの?それも体験させてくれんの?
折角持って来てくれたので、タンクトップの上からユニフォームを着て前も簡単に閉める。う、さすがに少し胸がキツイ。
とりあえずペダルを回す。
「少しは痩せるんじゃナァイ?」
「う、余計なお世話ですー」
「良いことしてんなぁ靖友!」
どうやら新開がこの後当番らしい。爽やかな笑みで近付いてきた。
「ハァ」
頭を抱える荒北。
「なまえチャンもう止め、降りろヨ」
え、何いきなり。でも荒北監督の言う通りロードから降りる。
「新開お疲れ、ちょっと体験させてもらってた」
先ほどと同じ様な感想を新開にも言う。
「あぁ、そう言ってもらえて嬉しいよ。おめさんユニフォーム似合ってるな」
「下つなぎで不格好だけどな」
荒北が続ける。まぁ確かにその通りだけどね。
「それが良いんじゃないか」
近よってきた新開が、私の着ているユニフォームの胸元のジッパーを一気に下げた。キツかった胸元から空気が入り、一気に涼しくなる。
「へっ!?」「っ!?」
「暑かっただろ?」
「え、あ、うん。暑かった」
さも当然の様に言う新開。え、こーゆーもんなのか?よく分からないがそのままユニフォームを脱いで軽く畳んで荒北に礼を言って返す。
「悪いんだけど、出店来てくれる?」
電話を切ってクラスの出店に行くと、いつぞやの予想通りチョコがなくなったのか単なるバナナを売っていた。早い話が出歩いてバナナを売ってこいと言うことだ。
まさに今ダンボールで作った首さげバナナ置き場に大量バナナを乗せて出発しようとする。
とりあえず、誰だよこの大量発注した人は。他の子も同じ様にバナナを乗せる、出歩くエリアを適当に決めて売りに回る事にした。
歩き出すと他のクラスも似たようにお好み焼きの格安キャベツとか売り回っているのが目に入る。どこも一緒だよね、在庫抱えたくないしね。とりあえず早く売りさばかないと文化祭もあと一時間で終わってしまう。
すれ違う人に笑顔で"バナナどうですかー?"と声をかけて行く。ちょいちょい買ってくれるが一本ずつだったりで中々減らない。
そんな外部の男性に話かけられた。
「ねぇ、チョコバナナ売ってたクラスの人だよね?」
「はい、そうですけど?」
「昨日見てカワイイなーって思ってて〜、話しかけられなくてさー」
なんだナンパか、一応客にあたるので断りにくい。昨日か、新開あれでもナンパ除けになっていたのか。
どう断ろうかな。
「...そう言ってもらってとっても嬉しいです。でも私これ売らないと時間空かないんですよー」
いきなり私は少しぶりっ子となった。
「んーなんで、買ってくれると...嬉しいですけどぉ」
「え、じゃぁ全部買っちゃうよ」
含みを持たせ風で言ってみたら全部買ってくれた。
「え、嬉しいです!ありがとー」
それから少し話してあげて、少しごねられたが、なんとかやんわりと断れた。
バナナもスッキリだ。外部の男性をとびきりの笑顔で見送った。
「ブハッ なかなか面白いなみょうじさん!」
廊下の角から東堂君が顔を出した。うわ、一部始終見られてたのか。
「ちょっと覗き見はどうなの?東堂君は助けてくれる人でしょう」
「最初は助けようかと思ったが、つい面白くてな!一応いつでも助けられる様ここにいたんだぞ。俺には劣るがみょうじさんも美しくて、トークも切れて演技も上手いのだな!」
「わぁとっても嬉しいー」
呆れた顔で言う私。
「む、さっきの笑顔は見せてくれないのか?」
眉をひそめて言ってくる東堂君。
「ん?あれはバナナを買ってくれないと無理だねー」
「もう無いじゃないか!」
じゃ来年だねって言ったら、それは長過ぎやしないかと言われた。
バナナを捌き終わって帰ったら、1番帰り早かった。そりゃ大量バナナをナンパ野郎に売ったからね。さすがなまえだね!と言われた。なーにがさすがだよ、持たされたバナナ一番多かったぞ。
15時になり、文化祭終了のアナウンスが流れる。皆で屋台装飾とかを壊していく、これで校庭に運んで後夜祭で盛大に燃やすのだ。全クラスからゴミは出るのでなかなか盛大なキャンプファイヤーだ。
文化祭の時は忘れてたが、美化委員として16時半になったら見回りだった。
16時半前くらいに指定の場所に集まる。文化祭も終わったせいか皆疲れ切っている。美化委員の仕事は気付いたゴミや物品を拾ったりしていくだけだ。周る場所を書いた表をもらい4人のグループで出発する。もらった表によると職員室やら保健室やら文化祭で使われてないようなとこだった、そんなにごみは多くないはずだ。
...よし、この辺で終わりだな。後はゴミを捨てて委員長に報告してそれぞれ解散だ。
「みょうじ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
もらった表をヒラヒラさせながら佐藤君が言う。なんかあったっけ。
ゴメン、先いっててついでに報告もよろしくと言い、佐藤君と人の気のない階段終わりの隅で二人きりになる。
「なんかあった?」
「ゴメン用はあるんだけど、ないんだ」
ん?頭にはてなを浮かべる私。
「あー...ぇーと、単刀直入で言うと、好きなんだみょうじのこと」
「へ!?」
何時ぞや聞いた話だったけど、実際言われるとどうしていいか分からない。
「ずっとっつっても、えっと3年からだけど、気になっていた。考えて欲しいんだけど...」
真っ赤な顔でそう言ってくる佐藤君。いつもはもっと明るく歯切れが良くしゃべるのに、違う人みたいだ。顔に熱がこもるのが分かる、見なくても分かる私も顔が真っ赤な事が。照れ隠しで手を顔の付近に持って行く。どうしよう、仲は良かった、中学は同じクラスだったし色々話はしてきた。
「まさか俺相手で照れんの?みょうじ」
「っ、この状況で照れない訳がないでしょ」
そして佐藤君は普通にカッコいいし、私には勿体無いくらいだ。
はぁ、と佐藤君がしゃがんだ。
「ほんとみょうじは最近やたら可愛くて嫌」
「〜っ、佐藤君もカッコ良くて嫌」
「そうすぐ返すみょうじも好きだよ、雰囲気悪くしないように話易いように会話続けてくれる気遣いが」
ニヤッと言われて、うっと言葉に詰まる私。
「...ゴメン」
「大丈夫大丈夫、分かってたから。俺のことそーゆー風に見てないのも知ってるし、試しに簡単に付き合うようなみょうじじゃないのも知ってるし。まぁこの辺で踏ん切りつけとかないと俺も先に進めないから」
つらつらと話す佐藤君に合わせて、私もしゃがむ。
そうか、私の事ずっと見ててくれたのか、嬉しいけど少し恥ずかしい。頭の中で付き合えばいいじゃないという私だっている、ただ言葉になって出てこない。
「...本当佐藤君の思った通りの感じの奴でゴメン」
「プッ だから良いって。...あー、そうだ俺これでも頑張ったからもし相手居なければコレ交換して」
佐藤君が腕に揺れるブレスレットを指指す。一生懸命気持ちを伝えてくれた佐藤君...それくらいなら
「ん、良いよ」
「え、マジで!?」
聞いた本人が一番驚いてる。え、これくらいはなんの予定もないし問題ないんだけど。
「んっとにお前、本当色々と悪い女だな」
佐藤君が吹き出したように笑い出す。
「え、なんでよ?折角交換しようとしてんのに」
「みょうじには教えねぇよ」
相変わらず笑いながら言ってくる。
不服顔でブレスレットを外して佐藤君の手の平に渡し、佐藤の青いブレスレットをもらって手首に通して長さを調節する。
「あーもう本当悪い女にひっかかったわ」
しゃがんだままブレスレットをつけた手首を引き寄せられる。いきなりの至近距離で焦る私。抱きしめるまでじゃないけど近すぎる距離だ。手首を掴まれたまま、頭を優しく撫でられる。
「ゴメン、これで本当に諦めるから、週明けからも無視しないでな」
顔が見えない泣きそうな声の佐藤君に動くことが出来なかった。その声を聞いているとこちらまで泣きそうになってくる。思わず、佐藤君の頭を撫でてしまった。
「っとに、本当みょうじは悪い女だわ」
「ぅ、悪い女で結構、...後夜祭始まるよ、行かないと」
「アッサリしてんな」
とか言いつつ真っ赤な顔同士だ。
「...あ、色々とありがとね」
去り際に手首の青いブレスレットを指差しながら言う。
「ん、むしろこっちこそ...意地悪してゴメンね」
意地悪?楽しそうな佐藤君を残して、後夜祭の為に校庭に集まる。
ミサキに連絡して合流する。目ざといミサキはすぐブレスレットについて聞いてきた。
「心優しい人が交換してくれました」
「そんなんで許されると思ってんの?」
「ミサキだって青いでしょ?」
言葉に詰まるミサキ。
「まぁ心優しい人は居るかもね、とりあえず付き合う事になったの?」
「ううん、交換しただけ」
「そ、あたしもだよ」
そう、同じ感じか。この文化祭というのはやたら人間関係が動く。なんか長い三日間だったな。どっと疲れた。
後夜祭が始まっても、頭は佐藤君だ。周りの景色が勝手に流れていってる。そりゃ仲良かったし、変な話勿体無いと思ってしまった。完全に元の関係には戻れないし、やっぱり付き合った方が良かったのかな。でもなぁ付き合うとは違うんだよね...頭の中でグルグル考えが回る。
そんな事を考えているうちに後夜祭はなんて言うこともなく終わった。
後夜祭も終わり、これで荷物を持って帰るだけだ。ボーッと教室に戻る途中二の腕を引かれた。
「オイ」
「ぎゃっ!」
「あーなまえチャン今日はもう帰りかァ?」
「荒北!ちょっとおどかさないでよ。そうだよ帰りだよ、クラスの打ち上げ会は来週だから」
「...今度、期末の勉強教えろヨ」
ちょ、今言うことか?
「え、また夜とかで良いの?」
「あー来週末で」
「ハイハイ」
去り際に頭をグシャグシャされた。ちょっと髪乱れるんですけど。
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