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週明けからクラスの中はどんよりしている。湿っぽくて嫌になる、そうテスト期間だ。高校2年だからテスト範囲も容赦ない。部活動も週の休みに入った。

前もってメールでどの辺り分からないか荒北に聞いておいた。さすがにいきなりじゃ私だって対応しきれない。



土曜日
荒北との約束は15時予定だ。それまで今日は1人で黙々勉強だ。朝起きて身なりを整える。鏡に映った自分、あー本当髪伸びたな...今度切りに行きたい。もういっそのことバッサリショートにしてしまおうか。でも長いとアレンジなりまとめるのは楽なんだよね。
テスト後にしたいことがたくさん頭に浮かぶ。がそんなことも今言ってられないので、机に向かう。2年になっても順位はほぼ維持している。やっぱり行ける大学の選択肢は多いことに越したことはないはずだ。きっと荒北はきっと自転車続けるんだろうな。
お昼ご飯を食べてからも勉強に向かう。中学の時よりも真面目になったもんだな私も、これもそれも順位がそれなりに良いだけ維持しようと頑張ってるからだけど。


2時半にメールが届く。
"今日無理、風邪ひいたち"
ん?あぁ、うち間違えたのだろう、それに気付かない程具合悪いのか。風邪か、このテスト前の週末にお気の毒に。
荒北は昔からよく風邪ひくんだよね。脂肪足りないんじゃナァイ...って言うとまるで風邪ひかない私がアレみたいじゃないか。荒北が脂肪足りなさすぎって言うことにしよう。

予定も無くなったし、まぁ勉強続ける...か。窓の外を見るともう夏の空だ、あー...外は暑そうだなぁ。

....。ったく、しょうがないな。荒北用ノートを開いて少し書き込む、ポストにも投函してくるかな。
薄着でノートをもって家を出る。徒歩1分で目的地についた、よしこれ入れるだけ。
ポストにノートを入れる。
「どうしました?」
え、振り向くとそこには、スーパーの袋を下げたまつ毛の長い女の子がいた。


「あ、荒北の」
「妹ですネ。久しぶりです。みょうじちゃん」
数年ぶりに妹さんにお会いした。多少目はキツイが美人系になっていた。これだったら荒北も女だったら良かったのにね。
「本当久しぶり!大きくなったね!」
私は何処ぞのおばちゃんか。この台詞いつも親戚のおばちゃん言うんだよね。
「え、そうですか?なまえちゃんも大きくなりましたね。それより届け物ですか?」
「荒北に...靖友君にノート渡しといてもらいたいんだけど」
荒北妹さんに荒北呼びは微妙だと思って名前で呼んだけど、何か非常にむずかゆい。
「あぁ、兄さんも喜ぶと思うんで中どうぞ。40度近いらしいので起きられないと思いますけど」
あの渡しといてくれれば良いんだけど...むしろ風邪うつされたくないんだけど...ご家族の手前言い出しにくく。家の中に入ってしまった。
一応マスクを渡されたのでマスクをしてから荒北の部屋の前まで案内された。えー入らないといけないの?これ。コンコンっとノックしても返事がない。やっぱりこれ寝てるって起こしちゃ可哀想だ。そして主の許可なく部屋に入っちゃダメだよな。ノートを持って立ちすくむ。

コレ置くだけだ、ゴメン荒北!っと心で思いながらソーッとドアを開ける。あ、部屋汚いかと思ったけど、乱雑なだけで意外と綺麗だ。予想通り寝ている荒北、そりゃ具合悪いしね。勉強してた雰囲気のある机にノートを置く。荒北が、寝ながら体制を直すのが目に止まった。

ここまで来たから顔でも見て帰るか。荒北を覗き込む。
寝てる荒北は珍しいので思わず観察する。寝ていると余計にまつ毛長っ、少し汗で張り付いた真っ直ぐな髪の毛、寝ている荒北は当たり前だけど静かだし、意外と綺麗だよね。あー眉間に皺よってる。辛そうだな...じんわり滲む汗を枕元にあったティッシュで拭ってあげた。まぁこれだけ汗かいているから起きたらスッキリかもね、とりあえず早く治しなよ。ストレートの髪を触りたくなったのもあって少し頭を撫でてあげる。

ピクッとブランケットにくるまれた荒北が動いた。しまった起こしちゃったかな?そっと覗き込むと、もともとの細目がさらに細く目を開いた?のかこれ。ちょっと開いてるか分からないんだけど。
「...荒北?大丈夫?」
小声で声をかける。
明らか寝ぼけてるのか、目が虚ろだ。目を閉じさせようとまぶたに手を乗せようと手を伸ばした。
瞬間その手をグイッと引っ張られベットに引きずり込まれた。さすがにバランスを崩して荒北の上に倒れこむ。
「え!?」
どうした荒北!?膝までベットの上に乗ってしまった私。
伸びてきた荒北の足が私の足を絡め取る。ぁ、ちょっとまて。あっという間に、後ろから抱き抱えられるようにされ荒北はもう一度寝始めた。オイ...抱き枕か私は、驚きはしたもののそんな事を冷静にツッコミを入れられる余裕がある。はぁ、まぁいいや、深く寝始めたら抜け出して帰ろう、およそ10分も我慢すれば良いだろう。思わずため息が出る。
っていうか荒北は誰と勘違いしてるのだろうか。これは彼女にしてよ。

外が暑い為、私は部屋着のようなキュロットで来ていたので、素足同士が絡み合いなんだか微妙な気分だ。なんであんた足スベスベなんだよ。つーか、荒北の足あっつい、腹部に軽く回された手もあっついし、体温が高いということが伝わってくる。そして背後から熱い息がかかってこそばゆい。背中に硬い胸元が当たるし、なんか微妙。我慢だ私。

唸りながら、荒北は熱いのか私の冷たい身体を擦り始めた。え、それはやめて。ゆっくり動く熱い足が私の太ももやふくらはぎを擦る。そして熱い手が二の腕をさする、そこ冷たくて気持ちいいよね!気持ちは分かるけどやめてくれ。風邪ひき相手にひっぱたくこと出来ずに僅かに抵抗をするが、寝ているようだ。むしろ荒北に起きられてもこの状況は耐え難いので黙っている。

二の腕は冷たくなくなったのか、冷たい所を探すかのように左手は太ももを這い始め、右手はTシャツの裾に侵入し始めた。えぇーちょっと待ってよ、なんなの?思わず泣きたくなってくる。熱い手で膝の裏からお尻の下まで撫で上げられ、Tシャツの裾から入った手は脇腹をなぞる。耳には熱い息が先ほどと規則変わらずかけられる。っていうことはマジで寝てるのかよこいつ。
「...んっ、」
膝の内側から足の付け根まで撫で上げられた瞬間思わず声を出してしまった。手の甲で自分の口を抑える。依然熱い手は身体をまさぐる。何やら切ないのと多少の気持ち良さに頭がグラグラしてくる。まだ硬い男らしい手は下腹部や脇腹を這い、もう片手は太ももの付け根の辺りもゆっくり撫でてくる。
私の身体に熱がこもってきて、非常によろしくない身体の状況になりそうだ。荒北相手にふざけんなよ自分。


...うん、もう良し!充分荒北も熱が冷めただろう。ていうか、私の方が熱いから意味なし!起こすの覚悟で、ベットから這い出る。荒北は身動きしたが寝ているままだった。

ノートはここの部屋に来たことを気付いてほしくないので妹さんからの手渡しをしてもらうことにしよう。乱れてしまった服や髪を直して、部屋から出て妹さんを見つけノートを渡す。
「なまえちゃんどうしました?顔赤いですけど?」
「なにか移ったかもしれない」

妹さんに挨拶して、自宅に向かう。
ふざけんなよ荒北。バクバクと音を立てる心臓、と熱くなってしまった身体。これじゃ当分顔合わせられないんだけど。






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