25
正直部活の大会で下心あるような変な人は居て、気分の悪い野次だってあったのでこんな野次は屁でもない。
ただ煽る野次には、煽り返したいみょうじなまえです。
スッと肩の引っかかりだけを外す。すると緩い半そでパーカーは肩から砂浜へ重力に従いストンと落ちた。瞬間静寂からおぉと言う歓声が沸きあがった。
が内心少し恥ずかしくなった、煽られて脱いでやっただけだから!砂浜に落としたパーカーは荒北に投げつけた。荒北は目を見開きながら受け取ってくれた。あ、そんなに開くんですね。
本気になった私、まぁ今までも本気だけど完全に負けたくなくなった。ミサキとサインプレーをしながら取って取られての攻防を繰り広げる。結果は6-7の辛勝だ、まあ勝てればOKだ。対戦相手と握手をして終わる。
「なまえ!かっこよかった!野次に物ともしないし、顔色一つ変えないし!むしろ笑うし!」
友人達が駆け寄ってきた。笑顔でお礼を言いながら、荒北からパーカーを受け取る。
「...観客煽んなボケなすがァ」
頭を小突かれた。多少私だってムカついたからね。
はぁ接戦で疲れた。少しふらついた私の肩をガシッと後ろから肩を回して支えてきた新開。
「みょうじかっこいいわやっぱ」
太陽の様な良い笑顔で言ってくる新開。
「ありがと、光栄です」
かっこいい人にかっこいいと言われれば嬉しいよ。
2人を次の試合に見送った。
荒北と新開は何か喋りながら、コートに向かっていった。友人に飲み物をもらい、飲みながら試合観戦だ。
新開は対戦相手にバキュンポーズをしている。対戦相手としては意味不明であろう。ホイッスルと共に相手がサーブを放ち、荒北が危なげなく拾い、新開がトスを上げて、荒北が相手コートに打ち込む。息の合った2人に思わずびっくりする。そしてそれなりに背も高いし、有利だろう。
ちなみにセコンド、...監督は東堂君だ。えらくうるさい美形監督も目立っているのは予想通りだ。何故か監督にも声援がある。
相手もけして下手でないけど、2人がサラッと拾って点を取るから、あっという間に試合が終わった。自転車以外もできるとか卑怯じゃなないか。
戻ってきた荒北達に飲み物を渡す。
「危なげなく勝ったね」
「おめさん達の応援のおかげさ」
そう言う言葉がサラッと出る新開はさすがだ。
「ハイハイ、かっこよかったよ」
荒北にも飲み物を渡す。
「お疲れ、荒北もバレー出来るんだね」
「...まァね」
「...私何かした?」
先ほどからあまり目を見ない荒北に心配になって覗き込む様に問いかける。
「!してねェヨ、もうすぐ試合だろ、準備しとけヨ」
いや、次の相手あんた達だから、まだまだだし。
アナウンスがされコートに向かう。今度は野次られない様に最初から脱いで試合に立つ。
コートに立つ私達、サービスは私達からになった。ミサキの鋭いサーブを新開がギリギリ拾い、荒北トスで新開がこちらに私のブロックを抜いて、際どい所に打ち込んでくる。上手いな新開。それをミサキがギリギリ拾い私が高くトスを上げミサキが打ち込む。長く続いた1点目はあちらに取られた。
それからもそれなりに良い試合が続く、暑さと疲労で汗が落ちる。あーもうなんで海に入りに来たのにガチバレー?いや、サインまで決めて本気に楽しんでるんだけどさ!疲れるんだって。
今回まだなんとかなっているのは荒北が調子悪いからだ。荒北は前の試合よりも周囲を気にして凡ミスしているし、結果、試合はギリギリで私達が勝った。
終了後握手をする。
「楽しかったな、またやりたいな」
どこからか出したパワーバーを食べながら言ってくる新開。とほぼ無言の荒北、あ、悔しいのか。
次の試合は、私達の結果は負けだった。さすがにバレー経験者っぽい2人組だったから、粘ったが3-7で負けてしまった。
「楽しかったねなまえ」
「ん、予想以上に疲れたけど、楽しかったよ。またバレーの授業楽しみだよ」
結局優勝は私達に勝った2人だった。だよね、めちゃくちゃ強かったもん。
アナウンスが入る。
"特別賞はー!!"
なんだそんなのもあるのか。友人がキャーキャー騒いでる。
"監督として目立って湧かせた、アラキタ、シンカイの監督だー!!"
それって有りなの!?納得出来ないんだけど!ポカンとする私達。え、それって東堂君?
すかさず壇上に上がり、マイクを持って来年も楽しみにしているがよい!と抱負を述べる東堂君はさすがだ。
帰ってきた東堂君は、日帰り温泉券は荒北達、景品は私達にくれた。なんて慈悲深い、まぁそりゃ何しろ実家が旅館だもんね。ありがたく景品を頂いた。
大会も無事終わり、夜一緒に花火をしようと予定をたて、一旦荒北達と分かれる。
海の家でシャワーを浴びて砂を落としてパラソル行き休む。本当無理、立ち上がれない、疲れた。現役の運動部じゃないもん私達。
さすがのミサキも口数少なくデッキチェアに横になっている。友人達は体力有り余ってるのか、海に遊びに行くとのことで見送った。
あの大会で目立ってしまったのか、こっちが休みたいのにやたら声がかかる。そう、いわゆるナンパだ。
「可愛かったよー、スゴイねバレーやってたの?」とお褒めの声を頂き、ありがとうございますと答えながら、断る。
何件か断っているとさすがにミサキも断るのすら疲れたらしい。
ミサキが私の手をとって歩き出す。着いた所は新開達の所だ。
ミサキがもう合流しようよと提案して、新開もそれに乗る。
「さっきからナンパされるのよ」
ミサキが理由を言う。
「そりゃあ、あれだけ目立ってるからそうだろうな」
元のパラソルに戻り、海で遊んでいる友人を待つ。戻ってきた友人に訳を話したら東堂ファンも居るので、"よくやった2人共!"と褒められた。
ということで荒北達の所にお邪魔する。
「おめさん達、それにしても水着可愛いな」
新開はしっかり褒めるコメントを忘れないのがさすがだと思う。
「フフ、でしょー!なまえなんてチャリ部カラーだしね!」
「ブッ」
吹き出したのは私だけでなく、チャリ部の3人も吹き出した。そうか、完っ全に忘れてたよ、この前そう言っていたのを。
「ちょっとミサキ!だから青って言ってよ!」
妙に恥ずかしくなって、思わず着ていたパーカーのジッパーを上まで上げた。
目の前の3人だってほのかに顔赤いし、そりゃんなこと言われれば何か恥ずかしいでしょ。
荒北とは未だ妙に視線を感じるがしかし視線は逸らされる気がする。本当この前とは逆なパターンだ。この前から私は復帰している、うだうだしてもめんどくさいだけだと気づいて、気持ちを切り替えてある。のに、今日の荒北はよそよそしいくて不安な感じになる。
うだうだ話しながら新開達の横に座る。パラソルの下でミサキはすぐ寝てしまった。そりゃ私以上に動いて拾ってくれてたし、さっきまで休めなかったしね、お疲れミサキ。ミサキの頭を撫でた。
「...みょうじ、パーカー脱がないのか?」
「海に入る時には脱ぎます、ので気にしないでください」
「よし、海入り行くか」
「いや、まだ良いです。まだまだ休みたい」
座って後ろに両手で支えて仰け反った体制の私の胸元に新開の手が伸びる。ジッパーに手がかけられたが、その手をパッと上から手で握って止めさせる。今回はそんなのは許さない、私だって学習くらいはする。新開にニヤッと笑う。おそらくジッパーを下げる予定だったはずだ、ジッパーでなく眉を下げた少し困り顔の新開だ。誰でも彼でもその顔が通用すると思うなよ、私は甘くない。
「良いじゃないか少しくらい、箱学カラーの水着堪能したい」
少しぶー垂れる新開。
「少しも何もないわエロ新開」
私が答えた瞬間良い音が聞こえた。
スパーンッと良い音が頭上でしただろう新開、ざまぁみろ。新開は荒北に空のペットボトルで叩かれたようだ。私も握っていた新開の手を離す。
「いてぇ、何すんだ靖友...」
叩かれた所に手をやる新開。
「それはこっちの台詞だろォ」
「いやぁ、靖友だってパーカー脱いで欲しいだろ?みょうじの箱学カラーの水着堪能したいくせに」
「なっ!しらねェよボケなすがァ」
私とバチッと目があったと思いきや、気まずそうに荒北は海に入りに行ってしまった。
海に向かい遠ざかる荒北の背中をみながら新開を咎める。
「...まぁた、そう荒北をからかうんだから」
「ハハッ、フォロー行ってこいよ。このメンツならみょうじしか居ないだろ?」
「はぁ、なんで新開が機嫌損ねた荒北のフォローを私がするのよ」
ため息をつき、ジッパーを下げ、いそいそパーカーを脱ぎだす。
「さっきビーチバレーの時やったストリップショーみてぇな脱ぎ方しないのか?あれすげえ興奮したのに」
あ、やっぱりそれっぽかった?年上のお姉様方には敵わないけど、頑張って色っぽく脱いだつもりだったからね。
「フフ、して欲しいの?高くつくよ」
ヒュウっと口鳴らす新開に少しイラっとして脱いだパーカーを投げつける。
「...靖友相手だと脱ぐんだな」
「ぅっ、変な言い方しないでよ」
水着の食い込みを直しながら、浮き輪をもって砂浜を歩いて行く。
- 25 -
*前次#