03


"教科書返す"

たった5文字の文章に前回と同じような文章をうつ。
"了解 ご飯食べてから"
と返す。直後
"どんだけ食い意地はってんの?"
と返ってきたが既読スルーだ。

食べて連絡して、ラフな格好で外に出る。冬の夜空を眺めながら、荒北を待つ。やっぱり冬は空が澄んで綺麗だよね、デートのシチュエーションならロマンチックなんだけどね。いかんせん、服装はスエットのようなもんだし、相手は荒北ムードにかける。

しばらくすると足音が近づいてきた。どうやら今日は歩いて来たようだ。
荒北もモコモコ着込んでやってきた。荒北は細身だし、この季節は余計に寒そうに見える。
「はい、コレェ 」

「別に学校でも良かったのに…」

教科書を手渡された。とくに話すことも思いつかず、これで家に入ろうとしたら、荒北に話をふられた。

「…みょうじチャン テストはどうだったァ?」

「えっ? あー、まぁまぁ かな。荒北は教科書借りたんだから、それなりに出来たんでしょうねぇ?」

「るっせ、教科書逆に奪っていったのはダレだよ」
そう私です。

そこから20分程なぜか話が続いて、玄関先の塀の中で他愛ない話を立ち話した。そういえば聞こうとしてたんだけどと、前回聞きそびれたメールアドレスと寮のことも聞いたりした。

メールアドレスとかは、新開君に聞いたことのことらしい。そういえば同じクラスだからっていつだか交換したっけ。
そして自宅に戻っていることについては、寮のご飯がマズイ&ゆっくりしたいとのことだった。それで最近は時々帰っているそうだ。確か荒北のお母さん確か料理上手で有名だったような、うん、納得、食べる事は大事だからね!


さらに他の理由が加わることとそれを私が知るのは相当先のことになる。


テスト結果は、概ね良好。
荒北はどうだっただろうか、教科書を奪ったなりにそれなりに気にしてみる。が、所詮他人事、一瞬で頭の中から消え去ってしまう。


ある日の一日を終え、先生に頼まれた手伝いも終わり帰り支度をしていると、窓から自転車競技部が走り去っていく姿が見えた。テスト期間も終わった為かいつもよりイキイキしている空気が伝わってくる。あれ?今、ロードはオフシーズンじゃないのか?

その中にはもちろん荒北も混じっている。また何か打ち込めるものが見つかって少し羨ましい。そして、それに対して真摯に向き合う姿は野球と変わらないようで、なにやら懐かしい気分だ。



それから、特に顔を合わせることもなく、短い年末年始の休みも終わった。
荒北とはすれ違いの挨拶程度で、学校では特別話すことはなかった。

ただ荒北情報を、なぜか新開君が"昼、靖友カレー食べてた、グリーンピース残してたぜ"とか"落車して擦りむいてたぜ"とか非常にどうでもいい情報を時々与えてくれた。
笑顔で対応したけど、正直いらねぇよそんな情報。


三学期の期末テストが始まる








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