04
寒さも厳しくなる二月
三学期の期末テストは、一年間の範囲らしい。告げられるテスト範囲を書き込んで、友人のミサキと文句を言いながら下校する。
自宅でも適度に勉強する日が続く。そんな週末の夜に荒北からメールが届いた。
"化学の教科書"
いやいや、一言過ぎんだろ...そして持って帰ってこいよ...あきれながらも机の上を探す私はきっと良い人だ。
"今から貸せるけど"と返信したら、"'今いく"との返信。時刻は8時過ぎ、休憩になんだか甘いものも飲みたくなってきた。折角だから、コンビニまで行くかとサイフを持って外へ出る。
どうでも良いけど、荒北がせせこましくテスト勉強するって違和感があって、想像つかないな。外で動いて、デカイ口で騒いでるほうが似合うしね。そんな事を思って待っていると、荒北がポケットに手を突っ込みながら寒そうにやってきた。
「あーワリィ」
「そう思うなら持って帰ってよ、次は学校で返してくれれば良いから」
教科書を手渡す。触れた手が冷たかった。そしてサイフを持った手に気付いたようだ。
「ヘイヘイ、あー...みょうじチャンどっか行くのォ?」
「ん?甘いもの飲みたくなってコンビニにね、てな訳でまた〜」
手を振って別れようとした。
「ハッ この時間にとか、デブるよヨ みょうじチャン」
うるさいな、コンビニに行こうと足を向けたらまた余計な一言をこいつは...
そんな事を言いながら、荒北はコンビニに付き合ってくれた。
ていうか、この時期にベプシ買うな、見てるこっちが寒い。
白い目で見てると、こっちの手元を見られながらまたデブるよと言われた。ほっとけ!勉強には糖分が必要だろ。
荒北のベプシについての熱い演説をBGMにそれぞれ買ったものを飲みながら自宅に帰る。
「つか、範囲が一年間とかありえねェ、福チャンにも赤点は取るなとか簡単に言い放つし...」とぶつぶつ言い出した。もうその話はミサキと何回もしたわ。
一年間の範囲か...
「あぁ、グレ北時代も入ってるもんね」
ニヤニヤしながら言うと、苦そうな顔した荒北にデコピンされた。意外と痛いくておでこをおさえる。
ちょっと痛いんですけど!事実じゃん!と抗議する事も忘れない。
「そーだ、あのリーゼント切ってみたかったんだけど!」そして、ずっと言いたかったことがやっと言えた。その瞬間またデコピンされた。だから痛いっての。
家に入って鏡を見るとおでこが少し赤くなっている。容赦ないな、あいつも。
最近の荒北は、一言で言って話しやすい。昔のグレ北時代もあるからか余計に、人は変わるもんなんだな。一言多いのも慣れっこだ、むしろアレがないと荒北じゃないような気がするしね。
週明け
荒北は、当たり前だが教科書を返してくれた。そう、教室に顔をだして返してくれた。
返してもらって席に戻ると、ニヤついた笑みを浮かべてミサキが寄って来た。
「なぁに?教科書なんていつ貸したの?」明らかに勘違いしてそうな様子だ。ご希望の返答はできないよ、その話題。幼馴染だと言うと意外とアッサリ引き下がった。
「なぁんだ、ついになまえに春が来たと思って、幼馴染とかありがちなネタだけど絶対ないじゃん?」
「だよね、もうくされ縁だよ」そして荒北だしね。
教科書が手元にあるので、それより勉強してる?全くしてないよ〜っというテスト前にありがちなテンプレートな会話にしといてやった。ミサキに荒北の話を今更するのも気が引ける。
会話もミサキのちょっと自販機言ってくるーの一言で終了した。と思ったら斜め前の席の新開君が
「おめさん達、仲良くしてるみたいだな」
パワーバーをかじりながら話しかけてきた。いや、さっきの話聞いてでしょっとツッコミたかったけど、面倒だったので
「チャリ部には負けるけどね」
と返したら、ヒュウと口を鳴らされた。全く、読めない男だ。
ちなみにテスト終わったら、ロードレースの大会幾つかあるぜっと情報をくれた。あーそうですか、見に行こう…かなぁ。
化学の授業中に返ってきた教科書を開いたら、あるページに"ここ分からねぇ"と落書きなのか、呟きなのかが書いてあった。
私は、しょうがないので、ルーズリーフに少し解説と荒北の顔を落書きして荒北の下駄箱に投函しといてやった。
はたから見たらラブレター入れてるようで癪だったので、厳重に周りを見渡して入れといた。
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