新開と熱さ


みょうじなまえとは、2年に入ってから特に仲良くなった。いや、勝手に近づいているだけと言うのだろうか。
1年秋に入ってきた靖友と幼馴染との事だ。見た目大人しい印象を受けるが、話してみると結構小ざっぱりしているみょうじで付き合いやすかった。

いつかのウサ吉の件で、面倒を見ていたときに通りかかった時だった。直球に理由を聞いてきたのには少し驚いた。なんしろこういう面倒ごとに関わらなさそうなのにな。みょうじの熱い叱咤激励は正直胸にくるものがあった。落ち込んでいる奴に対してジメジメするからやめろなんて初めて聞いたぞ。大人しいように見えて飄々としている勝気なかっこよさが魅力だと思う。
あれから、時々話を聞いてくれる
みょうじだ。左抜けない話も黙って聞いてくれている。


そんなみょうじを見ていると、意識する先には大抵靖友がいる。
こいつら本気で鈍すぎ、だからこそどちらにも気づかれずソーッと奪おうとするのに簡単に流される。笑えるほどガードかてぇったらねえ。


文化祭からやたら靖友が俺に対して敵意を出してきた。そりゃこっちは同じクラスだから少しちょっかいだしたっていいだろう、嫉妬する男はモテナイぞ。靖友が自身の気持ちに気づいた時点で敗北決定したようなもんだからこれくらいやらせてもらっても良いじゃないか。


海ではやたらみょうじがまぶしかった。靖友はもはや直視できてないからな。その分俺が舐め回して見ていたら靖友に気づかれた。だから許せこのくらいと言ったらてめぇの見方はシャレになってねぇヨと言われた。
野次を受けるみょうじを少し心配してしまったがそんなのいらなかったらしい。野次に負けないかっこよさは健在だ。まぁエロさもあるけどな。

靖友に戸惑いながら腕を引かれていくみょうじはめちゃくちゃ可愛かった。あーくそ持ち帰りしやがった靖友。まぁ最初にみょうじが居ない事に気付く奴には勝てねぇわ。

「...で新開はよかったのこれで?なまえは1番に応援しているけど、あたしとしては同じクラスのよしみで次に新開応援してたんだけど?」
聞いてくるみょうじの相棒。さすが気づいているのか。
「ああ、俺はみょうじのファンな感じだからな。あわよくばだったし、まぁ予想された事になっただけだ。あの2人は色々は置いといて気に入っているからな、まぁちょっかいはこれからも出すけどな。」



靖友と付き合い出してもほぼ態度変わらないみょうじが面白い。ただやることヤってはいるみたいで羨ま...まぁいいか。


ある昼、理想のマネージャーについてのミーティングが行われた。そんな時にひょこっと顔出したみょうじがピッタリだと思った、むしろみょうじがいいと思った。尽八もそうだと言ったから間違いないはずだ。マネージャーになってくれとの要件を言った瞬間同じような顔するみょうじと靖友、そこは似ている2人だ。
そんなみょうじを寿一が口説き落としてマネージャーにさせた。ナイスだ寿一。





翌日、自転車競技部にやってきたみょうじ。部員に対して一言挨拶を寿一から振られた。スッと部員たちの前に立ち言葉を発する。

「2年のみょうじなまえです。色々と知らない点や至らない点等ありますが、学んでいきますのでよろしくお願いします」
穏やかな笑顔でよくある控えめな挨拶例を言い頭を下げる。そしてみょうじは続ける。
「正直、昨日の勧誘で今日ここに立っていてなぜこうなったか考えてもよく訳がわからないのですが、勧誘時主将が負けないという言葉を使ってそれに惹かれたので、全力で勝ちにいってください、全力でサポートします」
大人しそうな外見から発せられる勝気な熱い目とストレートなコメントに思わず胸にこみ上げるものがあった。のは俺だけではなかったらしい、部屋全体に熱気を感じる。
今までこんなこと言うマネージャーいなかったからな。
そんな感じで以上ですと表情変わらずスタスタ端に下がるみょうじ。そして端に居た俺の隣に立った。

予想外の雰囲気のマネージャーに少しざわつく室内に乗じてある奴が発言する。
「...荒北さん"ニオイ″やんなくていいんですか?」
黒田だ、おそらくまだみょうじなまえと言う人物の様子を伺っているところなんだろう。
それに対して、こいつにゃやんねーヨ、今まで全員にやってたじゃないっすかとか言い合っている2人。俺にしたら正直どうでもいい。

あぁそうか、荒北とみょうじの関係俺たちくらいしか知らないからな。後輩が知ってどんな反応するか楽しみだったから、尽八と俺であえては言わないでおくことにしておいたからな、ちなみに寿一も必然的にだ。この当人2人も隠すつもりもわざわざ言うつもりもなさそうだしな、むしろみょうじは仕事しにくいとしか思ってなさそうだ。そしてそれを感じ取っている靖友も言わないのだろう。

靖友と黒田のめんどくさいやり取りを不思議そうに見ているみょうじ、疎外感あるといけないので横からフォローしておくことにした。
「...靖友は、あいつらが入部の際に辞めそうなニオイやら見込みありそうなニオイとか言ったんだ。で、あの突っかかっている後輩は黒田って言ってクソエリートのニオイだっけかな、まぁそんな感じに煽られていたんだ」
「あ、そうなの。てっきりそういう高尚なご趣味があるのかと思っていたところだった。入って数ヶ月でそう揶揄するとか荒北らしいわ」
冷ややかな顔でやり取りを横目で見ているみょうじ。おお、そのつれない感じも嫌いじゃない。


「チッうるせェな、やりゃぁ良いんだろ!?やりゃあ!」
怖い顔してつかつかやって来る靖友だがさすがというかみょうじは動じない。あ、結局やるんだ的に靖友を楽しそうに見ている。こういう所がなんとなくみょうじと俺は似ている感じがする。

みょうじの首に近づいて止まってしまった靖友。首付近に顔をうずめそうな勢いだ、おい靖友いつもはそんなに近くないだろ離れろよ。
それに対してみょうじが俺に助けを求めるような視線を寄こすが、俺にも対処しようがない。

部員も少し気になるのか聞き耳を立てている様な静寂を破って靖友が言葉を発する。
「...良いニオイがする」

そりゃおめさんの単なる下心がある感想だろう。
みょうじが少し照れた微妙な顔で半歩下がった。そりゃ公共の場でこんな事いう彼氏は引くだろう。それに見て大笑いする俺と尽八、とやや引き気味の部員。

かっこいいみょうじに代わって変態に成り下がった靖友。この評価はしばらく続きそうだ。


しょうがないから、靖友のフォローとして俺もみょうじの首すじに鼻を寄せたら確かに甘い良い匂いがする。そうしたら靖友に引っ叩かれた、靖友だけ変態じゃ可哀想だからフォローしてやったじゃないか。
そんな俺にビックリして少し照れるみょうじ、そういう顔も悪くないな。


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