荒北と球技大会2日目


今日は秋晴れよろしく快晴だ。そんな中、球技大会2日目俺はバスケの選択だ。1回戦は1年と当たって順当に勝ち上がった。
クラスの奴らが女子のソフトの応援を行くと言うので暇潰しに俺も行くことにする。
野球もソフトも部活じゃないくせ授業であるからな。ちなみに今回の球技大会は9回も出来るわけねェから、5回で終わりだ。昨日はおかげですげェ楽な試合だった。

グラウンドからワーキャーうるせェ声がする。女の声は耳がいてェ。さてなまえチャンはどうしてっかなァ。


あの日球技大会の為に隠れ練習に付き合わされるとは思わなかった。デートかと思いついていった先には寂れたバッティングセンターだった。マジでこんなとこでいいのか思ったがバッティングセンターに目を輝かせていた。本当なまえチャンは訳がわからねェ。
そしてやる気まんまんな割りには初っ端ビビって俺に見本を見せろって言ってきて少し可愛かった。のでやたら張り切った馬鹿な俺。

なまえチャンを見ていて思う、運動神経はもともと良いがそれに合わせてコツを掴むのがものすごく早い。口出す度にどんどん吸収してフォームが変わっていった。ボールを見つめるなまえチャンの集中力ったらありゃしねェ、球技大会にどんだけ本気なんだヨ。

そうなまえチャンに聞いたら、どうせなら打ち負かしたいでしょと返ってきた。そう言う強気ななまえチャンが嫌いじゃない。
ショボイ当て方をしていたなまえチャンがどうして教えてくれなかったと言ってきた。突然訳が分からねェ。なまえチャンが指差す球速をみてビビる。そりゃ、なまえチャンでもなかなか打てねェわ。1番遅い球速にしたら、教えた通りにどんどん打って行く。ボールが止まって見えるという名言を言いながらかっ飛ばしていた。そりゃさっきに比べれりゃボールが止まって見えるだろうヨ。


ソフトの次の試合は、それぞれ1回戦を勝ち上がった俺のクラス対なまえチャンのクラスの様だ。観客の中に、当然の様に新開が居た。
「おお、靖友!一緒に応援しないか?」
「ハッ だれが敵と観戦すっかヨ」
とか言いつつ場所もねェから近くに座ることになった。
「みょうじ、1回戦からかなり打ってたぜ」
だろうな、あのバッティングセンターの様子じゃこの球技大会じゃ物足りねェくらいだろう。


「あ、荒北」
なまえチャンが声をかけてきた。
「この前の通りに打ってやるから」
一言声をかけにきたと思ったら、笑って宣戦布告していきやがった。
「この前の通りってなんだ?靖友」
「あー....なまえチャン泣かすほど打ってやるっつってたんだヨ」
思わず頭を抱える。いや、アレ俺と出掛けて行って教えた通りに打つって事だ。俺にしか分からないように遠まわしに伝えてくるなまえチャンは卑怯だ。こう何か沸騰する気がする。
「さすがみょうじだな」
こいつもんな事にゃ気づかないだろう。


試合が始まる。なまえチャンは1番にホームに立ち構える。...あいつ絶対あれから1回は練習に行ったな。この前の時より自然に構えている。
俺のクラスの女子がボールを投げる、所謂女の子投げで。女子の場合届けば投げ方はなんでも良いらしい。もちろんそんな甘い球を見逃すわけないなまえチャンは、カキーンと良い音と共に遠くにかっ飛ばす。
「ハハッみょうじ容赦ねえな」
新開が拍手している。
「あれくらい誰でも打つだろ」
3塁まで走ったなまえチャンは塁から離れてホーム戻る気満々だ。
次のやつもヒットを出しなまえチャンが戻ってきて仲間とハイタッチしている。はぁ嬉しそうにしやがって。

結局3点取られ交代となった。投手は例によってなまえチャンだ。なまえチャンは腕だけで投げるような女の子投げなんかしねェ、しっかりとミット目がけて肩から直球投げ込んでくる。うちのクラスの女子は見事に空振りを連発する、そんなに速くねェんからちゃんと見て打てヨ。

2回表も順番が回ってきたなまえチャンは狙い澄ましたように初球をかっ飛ばす。本当容赦ねェわ。本当泣くんじゃねぇのうちの女子。
左中間に飛んでいくボールを見る、あれは落ちるな。ピューッと三塁まで足を進めるなまえチャン。イキイキと水を得た魚のようだ。


試合はコールド勝ちだなまえチャン達の。ハッ、わざわざ教えなきゃ良かったなァ、手酷くやられた俺のクラスだ。



「荒北っ!」
体育館の影でなまえチャンが寄って来た。人が居なくなると途端甘えたりするこいつに弱いらしい俺。
「ね、ちゃんと見ててくれた?」
汗をぬぐいながら、笑顔で問いかけてくるなまえチャン。見てたに決まってんだろ。
「...アホみたいにかっ飛ばしやがってボケなすがァ」
「だって教えてくれたのは荒北だからね!」
腰に手を当ててドヤ顔するなまえチャン。
「そーかヨ」

「...だから、ね、」
胸元を引っ張られてなまえチャンが背伸びしたかと思った瞬間に口に感じる柔らかいもの。
「へへ、ありがとうってこと!ごちそうさま、じゃまたね!」
「...」
キスをしたかと思ったら少し照れて嵐のように去って行くなまえチャン。思わずへたり込む俺。なんなんだヨ!?あのアホは!


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