ロッカールーム
慌ただしく終わった修学旅行。修学旅行が終われば高校のイベントは終わったようなもんだ。
紅葉も良い感じの秋、マネージャー業務もそれなりに慣れてきた。部員ともそれなりに話せるようになって多少認めてもらっているのかと思う。
部活も終わりそうな時間、タオルを片付けようとロッカールームへ向かう。ドアノブに手をかけた時、話し声が聞こえてきた。この声は新開達だ。
あ、左側を抜けない話をしている...。
...良かった、新開話せるようになったんだ。胸につかえていたものが減った気がする。
開けるかどうしようかと迷ったが、そっとドアノブから手を離し、来た道を戻ることにした。静かにロッカールームから遠ざかる。うん、他の仕事してよう、今入るっていうのは野暮っていうもんだ。
しばらくすると窓から4人で颯爽と走りに行く姿があった、そっとその姿を見送る。
...良いなぁ、私も男だったら混ざれたのになぁ...女で不便はしないけれどこういうのを見ると色々羨ましいし、辛いところだ。
腕時計を見る、いつもはこれで帰る時間だ。他の部員も帰っていくのを見送る、だけど今日だけは残ってスポドリとタオルでも渡してあげようじゃないの。人数分のタオルを用意しに行く。
辺りが暗くなった頃、4人が帰ってきた。
「...おかえり。お疲れ様」
多少驚いている4人だ。そりゃそうだろうもう帰ったと思っていた人物が居たのだから。
それぞれにタオルとかを渡していく。
「はい、新開お疲れ様」
「...色々今までありがとなみょうじ」
少し泣きそうなというか感極まった新開だ。
「ん?私何もしてないよ」
言葉の意味は分かるが、私は本当にただただ話を聞いていただけだ。立ち直ったのは新開自身だし、荒北達のおかげだ。
でもまぁ良かったよ、こちらも思わず笑顔になる。なんとなく褒めたくなったので頭をポンポンと叩く感じに撫でてあげた。そんな私を新開がいきなり抱きしめてきて、新開の腕に包まれる......あの3人の視線が痛いんですけど。
「あの...新開?」「てめェは何ナチュラルに抱きしめてんのォ?」「な、何しているのだ?」
荒北と東堂君が揃って聞いてくる。
私の頭上で声がきこえる。
「いやぁ...こう色々説明無しでも理解してくれて、信頼があって、こうしても変な誤解しなくて、許してくれるのはみょうじ以外いないからな」
「俺は許してねェんだけどォ!?んなの泉田あたりにでもしとけボケなすがァ!」
「それは変な誤解が生まれるだろ。それに硬い男なんて嫌に決まってるだろう。女の子が良いんだ、こう柔らかくて」
新開が私を抱きしめながら荒北とあーだこーだ話している。何と言うか新開に余程懐かれたらしいな私は。荒北は大きくため息を吐いた、とりあえず荒北は今日は大目に見ているようだ。
福富君と東堂君はほどほどにしとけよと笑いながらロッカールームにもどっていった。荒北は近くで汗を拭いているようだ。
流石に数分抱きしめられっぱなしは恥ずかしい気がしてきた。
「あの...新開?さすがに...」
「あぁもうダメか、本当すまないなみょうじ」
そういいながらすんなり私を解放してくれた。涼しくなった体がなんだか気恥ずかしい。のは私だけではなかったようだ、新開も微妙な顔をして視線を逸らす。
「......そんな雰囲気は許してねェんだけどォ?」
「!違うって」「!いや、これは違うんだ」
不機嫌そうな荒北の声にアタフタと訂正をする私達。
新開を置いて、荒北はグイッと私の手を引いて部室の裏に連れて行く。あ、しまった怒らせたかもしれない。
「...ほんっとおまえら何なのォ」
そう言い私を抱きしめてきた荒北の背中に私も手を回す。
「えーと、ごめんね」
「...何、なまえチャン新開の事知ってたんだ?」
「多少はね」
「仲良いよねェ、ムカつくくらい。あとおめェ新開に甘過ぎィ」
確かに新開には甘いかもしれない。そして強めに絞められ少し苦しいんだけど。
「や、妬いたの?」
「...これで平常心保てられんのいなくねェ?」
ですよね、逆の立場だったら私ものすごく嫌だ。
「う、ごめんなさい」
「わりィのは調子に乗った新開だからァ」
キスが上から降ってくる。頭にされ、おでこにされ、噛まれる様に口にされる。
「ん、んんっ!」
ちょっとここ外なんだけど!舌が入ってきて思わず荒北の服を掴んで抵抗する。
「何?」
「ここ外!」
「で?」
鋭い目線をした荒北が追求してくる。え、何これ私がいけないの?おかしくない?
「....な、中がいい」
ブッ
荒北が吹き出した。え、何がおかしいのだろうか。
「敵わねェな、てめェには」
言いつつ首すじを甘噛みしてくる。だぁから少し痛いんですけど荒北さん。しかし今日は甘んじて受ける優しい私だ。でも
「み、見えるところはやめてって」
首すじと、ジャージをずらした胸元やら肩口にピリッとした痛みが走る。言ったそばからまた痕つけやがったこいつ。
「ぃっもう、終わり!帰るよ!遅いんだから」
「...ヘイヘイ」
荒北の手をとって歩き出す。
ロッカールームに戻ったら新開がいて、私達を見て笑い出した。
「ハハッ、みょうじ本当悪かったな!」
「...全くだよ、どーしてくれんのよ」
見たくない胸元だ。荒北は無言だが上機嫌になったようだ。
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