季節の変わり目に注意
いつもと変わらない日常のはずだった。朝起きて、学校へ行き朝練の手伝いをする。
授業もしっかりと聞いているし、でもなんだかボーッとする。ホワホワと浮くような感じがする。
「なまえ、お昼行こう」
誘ってくれるミサキについていってご飯を食べながらマネージャー業務について話したり、次の授業の事とかを話す。
「次、当たるんだ教えてくれないか」
戻った時に新開に聞かれたので、呆れながら教えてあげる。
まぁよくある日常だ。
放課後の部活が始まる、福富君が練習メニューを言ってそれに取り掛かる部員達。
私もいつも通りにせこせこ働く、がいつもより体が重いような気がする。もしかして太った?思うように体が動かないというか力が入らない。なんでだろうか。
外周を走り終えた人達が帰ってくるのでタオルを配る。あ、荒北だ。
「荒北、お疲れ。はいタオル」
荒北にもいつも通りタオルとかを渡す。
「...なまえチャン今日なんか変じゃねェ?」
タオルで汗を拭きながら少し怪訝そうな荒北だ。失礼な、変じゃない。至って普通だ。
「そうかぁ?」「いつもと変わらんぞ」
新開と東堂君も同意してくれる。そう、少し太ったかもだけどいつも通りだ。
洗濯をしにいく、タオルやらを詰め込んでグォングォン洗濯機をならせる。今日は天気が良いので、これで干せばよく乾くだろう。
洗濯している間に他の仕事も片付ける。ほんと、ヤバイ太ったかも体が重い気がする。
荒北達が近くに来た、何か話しているようないないような...荒北が近くにきて安心するような気がする...。
そこで意識がなくなった。
目を開けたらそこは知らない天井でした。どこの話だこれは。
「...倒れるレベルで出てくんなバカかてめェは」
「...やす、とも?」
ヒョイっと荒北が覗き込んできた。
「熱あんだヨ!39度ォ、今福チャンが家電話してやってるからァ」
熱?風邪をひいた時に出るというやつか。
「はぁ...熱出したの...数年ぶり、かもしれない...」
確かに身体の節々痛いし、力も入らないし気付けば頭も痛い、あぁ頭がよくまわらないな。ここ保健室か?あたりの雰囲気からそうであろう。荒北が運んでくれたのか。
「どんだけ健康なのヨ」
「...ゴメン、重くて...どれだけ寝てた?と、あとせめて洗濯物干さない...と」
ギシッと鳴る硬いベッドから起き上がろうとしたら荒北の手によって上から押さえ込まれ、ベッドに張り付けられた。
「なまえチャン動くなヨ、1年がやってっからァ」
...マジですか、後輩よいきなり仕事押し付けてごめんね。情けないなこんなんで、熱で涙腺が緩んでるのか勝手に涙がポロポロ出てくる。
「ちょ、ちょっとなまえチャン!?」
荒北が私の上で焦ってる。あぁもう焦らせてゴメン。
ガラッと音ともに新開と東堂君が入ってきた。がピシッと固まる3人。
「...お邪魔だったか?靖友」「保健室で何してるんだお前達は!?」
そりゃそうだろう、私は泣いてるし荒北は覆いかぶさる感じに手を抑えてるし。
「ち!ちげェからァ!!!」
私の上で慌てる荒北がいるがフォローする気力すらない。
2人は飲み物を買ってきてくれたようだ。飲み物を受け取る。
「...荒北に襲われているとこだった...ありがと2人とも....」
まわらない頭で冗談を言う私。それに吹き出す3人。
「場はわきまえろよ靖友」
「あぁどう考えてもさっきのはいかがわしかったからな」
「俺がわりィの?ヒドくねェお前ら!?」
さらに言い合う荒北と東堂君をよそに新開が今日の空を表すような爽やかな笑顔でペットボトルを渡してくる。
「どうだ、飲めそうか?」
風邪かわからないけど風邪の時は水分は取った方がいいんだよね。気づけばバカみたいにダルい体でのそのそ起き上がりペットボトルを受け取る。がヤバイ頭がすっごいグラグラして痛い、つか力が入らないこの蓋キツくないか?
「...ぅ新開...むり、開けて...」
新開に冷たいペットボトルを差し出す。
「っ!おめさん一段とアレだな。よし口移しが良いか?」
荒北が新開をひっ叩いた。わけ分からない新開につっこむこと出来ずに開けてくれたペットボトルに口をつけ一口飲む。喉も渇いていたんだな、身体に染み渡る感じですごく美味しい。
お礼を言い、ペットボトルを持ったまま横になる。
「なまえチャンそれ貸せ、布団濡れんだろ」
あぁペットボトルのことか。
「冷たくて気持ちいいから...このままで良い...」
冷たいペットボトルに顔を摺り寄せるようにして横になる。
「...みょうじ猫みたいだな」
なんとでも言え、もはや冷たかったらなんでも良い。
「てめェらは部活戻れヨ」
荒北追い払うように手を振る。
「そうだな、よく休むんだぞ。無理はするなよ」
すんなり戻ろうとする東堂君。
「俺はまだ休憩が足りないな、先戻っていいぞ尽八」
「休憩長過ぎねェ!?」
「いやぁ弱々しいみょうじ見れるなんて中々ない機会だしな」
「...てめェ尚更戻れ」
「そしてほっといたら靖友襲うだろ?」
「だァから襲わねェからァ!!」
皆には迷惑かけているのは知っているだけど、2人の声が頭にガンガン響く。
「ごめん...2人ともうるさい...戻って」
「「...」」
まぁ俺らはお邪魔みたいだから戻るなと新開と東堂君は部活へ戻っていった。
「荒北も...部活行って」
「あ?俺はサボってんだから良いんだヨ」
...あぁそうして、私の隣に居てくれるって言うことですか。
荒北が手を伸ばしてきて私の顔、首に手を当ててくる。私の体温が高いのだろう、荒北の手がヒンヤリして気持ちいい。
「...気持ちいい...です」
「そりゃ良かったねェ」
窓が少し空いていて、入ってくる風が顔を掠める。
「なまえチャン無理しすぎじゃねェ?」
「...大丈夫だよ、明日には元気だよ」
「ハッそうは見えねェわ」
保健室なのでいつもよりトーンが低く声量が落としている荒北の声が心地よくて眠気を誘う。
「靖友...もう少しだけ...側にいて...」
布団から荒北の服に手を伸ばして甘える。あぁ復活した時には頭抱えたくなりそうだけどまぁいいか。今だけお願いだ。
「...わかってんヨ」
おでこを撫でられながら優しい返事を聞いて、眠りに落ちた。
「靖友はあの状況を耐えられるのか、あの色気垂れ流しの中で」
「病人に手を出すほど飢えてはいないのだろう。しかし、新開堂々と構い過ぎなんじゃないのか?」
「あれか?靖友とみょうじだから許されるんだ、2人とも俺に甘いからな」
「いや、許されてなくないか?」
「そうかぁ?」
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