関係の有無


3年の追い出しファンライドも終わって、本当に基本が1、2年となった。時々顔出してくれていた先輩マネにも中々聞けなくなってしまうので寂しいものがある。そう先輩に言ったらみょうじさんなら平気でしょって笑って返された。あの先輩とだったらもうちょっと早く一緒に仕事してみたかった、そんなしんみりとした気持ちになってしまう。

最近は、洗濯干しを葦木場君がやたら必死に手伝ってくれたりする。通常じゃさせないけど、あまりに思い詰めていそうなので、時々葦木場君が満足行くように手伝ってもらったりしている。



そしてその日は突然だ。
11月も後半に入りロードもオフシーズンに向かっていく。授業も終わり、寒くなって洗濯で手が荒れる部活に出ていた。まぁいたって普通の日の筈だった。

きっかけ何だっけかな分からないけど、現在後輩同士が言い争っている最中である。片方は黒田君だけど...。

今1年しかここ居ないしなぁ。荒北達まだ帰って来ないし、つーかここの人達意外と喧嘩っ早いんだよね、熱くなりやすいっていうか...。どうしたら良いものか。

両方それぞれ泉田君やら友人が止めているが今にも飛びかかりそうな勢いだ。見るに見兼ねて私も仲裁に入る。が熱くなってしまっているので勢いは止まらない。

詰め寄る2人、拳をギュッと握りしめたのを目の端に捉えた。
ちょっと!殴り合いっつーか喧嘩はダメなのに!衝動的に体が動いてしまった、黒田君に向けて放たれる拳を黒田君を体で押し入り私が拳を受けた。

「っつ!!」

「「!!?」」

さすがにキツイわこれ。簡単にすっ飛ばされ床に転がされる私。しっかり腕でガードしながら間に入ったんだけどな。口の中切ったわ、血の味がする...ちっ、ついてないな。

「ちょ、みょうじさん!大丈夫ですか!?」
「すいませんでした!」

周りの後輩達からも大丈夫ですか?と一斉に声がかかる。
...あれ、意外と慕われてんじゃん自分も、ってまぁこの状況なら誰でもこうなるか。冷静にそんな事を思う私。この騒ぎでどうやら殴った後輩も黒田君も一気に熱が冷えた様だ。本当こんなんで迷惑かけないでくれ。

「あー、大丈夫、大丈夫〜。落ち着いた?2人とも?」

へたり込んだままだがしっかりと笑顔で2人と他の部員に問いかけると皆ホッと安心した様だ。よし、これでとりあえず大丈夫でしょう。

「すいませんでした、本当に...」
殴った後輩がへたり込んでいる私にショボくれながら謝ってくる。
「だから大丈夫だって」
すんげぇ痛かったし口の中切ったけどと心の中で付け足しておくのは忘れない。そして頭ポンポンと宥めてあげる。


そんな時に部室のドアが開いた。
あぁ外周から帰ってきたのか、荒北達が立っていた。そしていきなりの登場でシーンとして緊張感が漂う部室。え、何もう喧嘩バレたのか。

「何があった?」
福富君が口を開く。
すかさず、固まっていた黒田君と後輩が訳を話しだす。
すると黙って聞いていた荒北が2人に詰め寄る。え、なんで?

「...で、なんでみょうじがこーなってんのォ?」
間延びするような喋り方はいつも通りなのにやたら威圧感があって、硬直する後輩と黒田君。ちょっとその2人のせいっちゃせいだけど、むしろ、私は私のせいっていう話だ。なので私が荒北を引き止めに入る。
「ちょ、ちょっと何、荒北!?これは私が咄嗟にかばっただけだから!」
今にも殴りそうな腕をつかんで引き止める。そんな私をギロっと睨む荒北。え、ちょっと待って!なんで私までとばっちりなのよ!?

「......おめェも関係ねェのに関わってくんじゃねェヨ!!すっこんでろ!!!」
「...」

なにそれ...。
ここまでなだめて殴られ仲裁したのになんでそんな事言われないといけないのよ。やけに冷静になっていく。

新開が靖友それは言い過ぎだと言ってくれる声が遠い。
もう...、なんでそんな事言うのさ...関係ないとか...私だって部員だと思っていたのにな...。そんな事言われたのが切なくて悔しくて涙が出そうだ。

おそらくここで泣けば最強の武器だろう。ただこんなとこでは泣くような可愛い神経してないし、泣く気もさらさらない。

「...関係ないって言うなら荒北だって関係ないでしょ!?その場に居なかったんだから!そっちこそすっこんでなさいよ!!!」
荒北を睨み付けて言い切ってやった。が涙が抑えきれなさそうなので部室を飛び出した。あの場でなんか絶対泣けやしない。
おいみょうじ!とおそらく新開の声がかかるが、無視して全力疾走で廊下を走る。ので誰も着いては来れなかった。






走って遠回りして行き着いた先はうさ吉のとこだった。そう癒されにきたのだ。
そんな可愛い可愛いうさ吉を抱っこする、あーモフモフする、あったかい。うさ吉に慰められるかのように止めてあった涙がポロポロ出てくる。
...うー...畜生、なんだよ、私が悪いみたいじゃない。このまま部活はサボりだな、結局迷惑かけたことになるのか?


さっきまでの出来事を思い浮かべて整理する。
2人喧嘩する、止めに入る私、俊敏に動いて殴られたことで沈静化、...うん、大丈夫だ、私何も悪くない。あんなこと言われる筋合いないし、むしろ私被害者レベルだ、私ぐらいしか損してない。
大体あの時に登場したのが悪いんだって、あのままだったらバレなかったのに。ふつふつと怒りがこみ上げてくる、そんな空気を察知したのかうさ吉が逃げようとするが抱き直してやる。

「ここに居たのかみょうじ」
「...あと1分遅く登場してくれたら良かったのに」
現れた新開に今更な事を言う。

「にしてもおめさんまた体張った止め方したんだってな」
新開が苦笑しながら聞いてくる。
「咄嗟に動いちゃったんだからしょうがないでしょ?」
「口でも切ったか?血ぃついてるぞ」
新開が血がついている口の端を指で教えてくれる。
「腕でしっかりガードしたから顔は守ったんだけどね。ふん、まぁ口の中切れたけど」
新開は持ってきてくれたポケットティッシュで血を拭ってくれた。それと同時にうさ吉も小屋に戻してあげる。逃げるかのように奥にいくうさ吉、そんなに怖がらなくてもいいじゃないか。

「ん、ありがと...迷惑かけてゴメン、戻るよ」
「まぁ、まだ休もうぜ」
新開もしゃがみ込む。そして目の前の草をプチプチちぎってはパラパラさせる。

「...新開も私が関係ないって思うの?」
「いや、そうとは思わないさ」
...だよね、間違ってないわ私。

「ただ靖友の事も分かるけどな」
どうしてだ?関係ないじゃん。そんな私の顔を見たのか新開が笑う。
「ま、そのうち分かるさ。戻るかみょうじ」
私の手を引きずりながら新開は歩き出して、結局部活に連れ戻された。

後輩達がさっきは本当にすいませんでしたと再度口々に謝ってくる。その都度大丈夫、余計な事してゴメンと返す。


荒北と目が合ったがあからさまに逸らされた。
あぁそうですか、関係ないもんね。



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