黒田の観察と荒北の自慢


あの日やけにつっかかってきた奴と喧嘩になった時にみょうじさんに庇われる事となった。本当あの人咄嗟に身体が動いただけだと言っていたけど、ガードした手もすげぇ痛そうであった。
つーか、なんでこの人庇ってくるんだ。あの日新開さんに連れ戻されたみょうじさんはケロッとしていて拍子抜けするほどだった。それでも、改めて謝った。

「すいません、庇っていただいたのに」
頭を下げる俺。
「良いんだって、あいつらが来なかったらバレなかったんだし」
親指で遠くの新開さん達を指差しながら悪そうに笑うみょうじさんに釣られて笑う。
「...とりあえず、湿布貼ってあげますから」
「え、ありがとう」
用意しておいた湿布を取り出す。みょうじさんもガードした腕側のジャージを抜き片側だけ半袖Tシャツになる。出された白い腕が赤くなっていて痛そうだ。

「やっぱり赤くなってますね」
「そりゃまぁ痛かったからね」
「...なんで庇うんですか...」
「そりゃ黒田くんが大切だからね」
!思わず顔をみる。が何当たり前のこと聞いているんだ的な顔をしている。...この人本当いやだ。

赤くなったところに丁寧に湿布を貼って、上から軽く叩く。
「いっ!」
それで顔を歪めるみょうじさん。
「俺だって...先輩のこと大事ですから、怪我なんかしないで下さい」
それも俺を庇った傷なんかしてほしくはない。
「はいはーい」
そして俺の頭を笑顔で撫でてくるみょうじさん...この人本当にわかってるのだろうか。

そして、問題はこの日だけでなかった。翌日から荒北さんとみょうじさんの間に不穏な空気が漂っている。あれから仲直りしてないのか。やけに話さない、近づかない2人が怖かった。




それから約2週間が過ぎた月曜。

「なまえチャン数学のプリント写させてくんナァイ?」
2週間ぶりに荒北さんがみょうじさんに堂々と絡んでいる。
「そんなの昨日部活なかったんだし出来る時間あったはずだけど?」
「無理、色々疲れてたからァ」
「...っ、今日だけだからね」
部室で荒北さんになんだかんだ言いながらプリントだかを渡しているみょうじさん。
...なんだか事情が読めた俺からしたら単にいちゃついてるとしか見えないんですけど。

荒北さんの首周りにも所々赤くなってんし、つーかいつもよりジャージ前開いてね?
対極にみょうじさんはジャージのジッパーを上まで上げた上にいつもはしないタオルを首に巻いて結んでいる。いつもは動きにくいとかいってそんなことしてないのに。...なんだか週末の事が読めた気がした俺。

「黒田、あのタオル取っちゃダメだからなァ」
「取りませんから!!」
肩にタオルをかけて上機嫌でシャワーを浴びに行く荒北さんを見送った。
もうひとっ走りしてくるか...打倒荒北さんだ。






.......






なまえチャンにつけられた多数の赤い痕が、多少嬉しいバカな俺。すげぇ寒ィのにいつもよりサイクルジャージの前を少し開けてみた。
それに気付いたのか、時折コソッと怖い顔したなまえチャンが俺に近寄ってきては無言でジッパーをいつもより上げていく。
ほら、あん時おめぇが盛り上がって楽しんでつけるからそーなんだヨ。人の事は言えねェけどな。なまえチャンのその行動に思わずせせら笑ってしまう。

「あのさ靖友...そんなに前開けないでよ...」
部活終わりにコソッと呟くなまえチャンに内心悶えてたら、脇腹に弱いストレートな拳が入った。

なんか鏡に映るこの痕を見ると一昨日を思い出して良い感じに興奮すんだヨ。初めて俺の上で腰振った割には良い腰つきしやがって死ぬかと思った、まぁそれで死ねたら本望だけどォ。


その夜寮の風呂場に行く俺。いつも通り適当に洗って汗を流して広い風呂に浸かる。

そんな中、後から来たうぜぇ2人が絡んでくる。...ったく風呂くらいゆっくり浸からせろ、ボケなす。
「...おめさん、みょうじを困らせんなよ」
頭にタオルをのせてその上にパワーバーを乗せている新開。バカか湿気るだろ、いやんなもん持ち込むなっつーの。
「っせ」
「あぁそうだな!みょうじとは選択で一緒だが、マフラー外さないから注意受けてたぞ!?風邪で寒気止まらないとか言い訳なぞさせて!」
「あぁ、すぐそう返してたから、前もって考えてたんだなみょうじ」

あぁ日中はそう隠してんのか。思わずそれを想像するともっと付けておきゃ良かったなとゲスい考えが浮かぶ。首から鎖骨にかけて歯型がまだ残ってんだろうな、ハッ良いゴキブリ避けだ。
「つーか、んなになまえチャン見てんじゃねェヨ」
俺合同体育以外かぶってねぇつーのによォ!

「靖友も靖友だ。みょうじに変な事頼むなよ」
新開が真顔で俺に付いた1番濃い痕に人差し指を突き刺す。この痕触んじゃねぇヨ。
「触んな」
手を払う俺。
「あの後の事は大体想像がつく!だが荒北!無理やりはいかんよ!!」
「ゴホッ」
風呂の中で思わずむせる俺。
「てめぇ、声でけぇ!...つか無理やりするわけ...ねーだろ」
多少自信がなくなり、語尾が小さくなる。いや、あれ同意の上だしな...っ多少、無理矢理感はあったのか?
「おめさん、...一発殴っていいか?」
俯く新開の見えない目が想像つきそうだ。
「新開!ここで鬼になるのではないぞ!」
「っ...これはあいつが無理やりつけてきたんだっつーのォ...」
小声で言ったっつーのに、本当にこいつら地獄耳だ。
「...みょうじが、か?」
「他にいねぇだろボケなす」
額に垂れてくる水を肩にかけてあったタオルで拭う。

「「....」」
湯船で固まったバカ2人。
「...そうか、攻めのみょうじか悪くないな」
「いや、それはどうなのだ?」
「みょうじにはよく似合うな、よし俺にもつけてもらおう」
「させねーヨォ!?」
何言い出すんだこいつは。

湯船からザバーッと立ち上がった東堂が俺を指差してくる。その拍子にウザい前髪から水が降ってくる。
「大体な荒北!マネと付き合うとかそんな青春を送っている自体が羨ましくてたまらんのだ!!そりゃ出来たマネだが....っ!みょうじもそうだ、そもそもなんで荒北なんだ!趣味が悪すぎる!普通はこのトークも切れて美形な俺だろ!」
手のひらでビシッとてめぇの胸を指す東堂。
「うぜェ!つーか粗末なもん見せんなさっさと沈め!」
「うざくはないな!」
そして風呂場でけぇ声で喋んな頭に響くだろ。

「あーあ...靖友とくっつく前にマジで奪ってやればよかったな。みょうじになら攻められた上に攻めてぇ...」
...だから新開、てめぇのその小声の呟きがガチに聞こえんだヨ。




「何を騒いでるんだ?」
いつの間にかシャワーを浴びた福チャンがそこにいた。チャポンと音を立てて入ってくる。
「福チャーン!!マジこいつらうぜェのォ!」
「フク!それが荒北がだな...」「おお、寿一も来たのか?奇遇だな...」

更に騒がしくなった風呂場だった。

















(頂きネタ:寮の風呂でキスマークを新、東に羨ましがられる)


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