新学期


新学期早々、あけましておめでとうを言った瞬間に笑うミサキに絡まれた。
「ね、手ぇ繋いでたんだってぇ?」
...年末のあの日の事か。それなりな人に見られた筈だ。なんしろ相手が元ヤン現在エースアシストな靖友だ、ただでさえ目立つから余計にだろう。

あの日、部活終わりにある先輩に告白された。しかしその人がどうにも靖友をこき下ろす感じで非常に腹がたった。目立つのは好きじゃないけど、こう仲良い感じを見せ付けてやりたくなったのだ。そんな一時の気持ちで目立ってしまった。

「...ミサキ前仲良く帰らないのか的な感じでいったじゃん!」
反抗するがケタケタ笑っているミサキ。
「はぁ...これから楽しみー。あたし休み中含めて何人かにあんた達の事聞かれたからー」
「はい?」
「微妙にあんたも目立つのよ」
え、それはやめてくれ。私は埋れていたい人間なんだって。したり顔のミサキはそのまま自分の席に戻っていった。




その日から数日、何回か聞かれたことは"新開とは付き合っていないのか?"だった。あぁ...そういうことか。新開人気だもんね、こう母性をくすぐられる感じが何とも憎らしいけど。そしてもちろん否定して仲良い部活仲間だと言っておいた。



隣の机に突っ伏している新開の姿を見つめる。今日はやたら寒い寒いうるさいので、私のチェックの膝掛けをかけた新開だ。本当容赦なく膝掛け奪いやがって…。
そう、先日行われた席替え。引き当てたのは窓際の最後尾というそれなりのポジションだ。それなりというのは、いきなりここから当てる先生もいるからっていう事だ。なので私としたらこの席の一つ二つ前の席が良かった。そして新開が隣に来たのだ。

新開…か。
そりゃ新開の事は好きだけど、そういうのじゃない。セクハラも多々あるけど、新開なりの一線があるから大多数が許せてしまう。
あと靖友の手前か知らないけど、新開はミサキは名前で呼ぶけど私のことは苗字で呼び続けているのは気づいている。そしてそれに気付いている私や靖友にすらこいつは気付いているけど何も言わないのだ。微妙にそういうところ気遣ってくれるんだよね新開は。なんだかんだで真面目なやつなのだ。
でも時々誰かしらと付き合ってるっぽいがまず長続きはしない。そんなとこを突っ込みもしないがそれなりに色々あるのだろう。
あとは私となんとなく似ている感覚のところがあるからか仲間意識を勝手に持ってしまっている感じか。


はぁ...またこいつはスヤスヤと気持ち良さそうに寝ちゃって、また追試になりたいのか?腕を枕にして幸せそうにおやすみしている新開に釣られて眠くなる。
暖房の聞いた教室にじいちゃん先生の午後の古典なんか寝るのに最適だもん、気持ちはよく分かるよ。なんしろ私の前も寝ているし、他もチラホラ船漕いでるしね。
追試になるよー?部活にはあんたが必要なんでしょう、入部数ヶ月の私でも分かるよ。
以前"直線鬼"として走っている新開をなんか怖くない?といった友人がいたけど、思わずカッコイイじゃんと言ってしまったっけ。


…。机に突っ伏してる新開の脇腹に向かって、手を伸ばしてボールペンで突つく。いつぞや言った様に蹴らないだけマシであろう。
ガタッという机の音とともに新開がビクッと身体を起こす。おー、良い反応…思わず机に伏せて声を殺して笑う。
そんな私を見て、眠そうな顔でなぜかバキュンと指で打ってきたので教科書をたててガードした。

ほら、ちゃんと授業受けなって。声に出さずに"前みろ"と前を指差し言う。
そんな私を見たのか黒板みて書写し始めた。そーそれそれ、追試になんなよー、新開の横顔をチラ見しながらの授業だった。




「おめさん、あれ結構痛いぞ」
「だったら寝ないでよ、少しは様子見て寝かせてあげたんだから。あの先生結構板書からテスト出すよ?」
放課後部活に向かって廊下を歩く私達。
「いやぁ、おめさんの熱い視線が心地よかったんだ」
「へぇよく言う、見る前から寝てたくせにね」
おいそこ、ヒュウと口を鳴らして誤魔化すな。

「あ、新開脇腹弱いんだね」
さっきやたら反応良かったしな。指で隣を歩く新開の脇腹を指でまた突つく。
「っ!」
先ほどと同じような良い反応をするので、思わず笑う。
「...みょうじ...それやめないか?」
「なら新開も今度からさりげなく太もも触ることはしないでね」
「...」
しっかりと交換条件を叩きつける事を用意していた私。
「...分かった。ならつついてもいいぜ。だからもっと触らせてくれ」
「どんな分かり方!?あのねぇ、私の太ももそんなに安くないんだけど」
「ああ、俺の脇腹も安くないぜ?」
カリッとパワーバーが砕ける音が隣からする。
「へー...10円くらいの価値はありそうかも。あ、写真撮ったら売れそうだからもう少し払ってあげる」
バキュンと新開の真似をして新開を打つ。
「よし、じゃついでに膝枕も頼むな」
「あーそれ、新開破産コースだわ。ご愁傷様」
「あぁ、おめさんなら破産しても構わないぜ」
本家のバキュンをいただく。
「きゃーかっこいいー。あ、そうだ新開、私と新開付き合ってる様に思われてたらしくて何人かに聞かれたんだよね」
「お、しっかり言ったか?付き合ってるって」
「もちろん。コンビニくらいまではしょうがないから付き合ってるってー」
「いやぁもっとだろ?」
「え、そうでしたっけ?」
棒読みで淡々と言い合う私達。



「...お前達なんの話だそれは」
その声に振り向くと背後にカチューシャから飛び出る前髪を揺らした山神様がいた、さすが無音で近づく忍者っぷりだ。不思議そうな顔をしている東堂君。
そして私と新開は顔を見合わせて口を開いた。
「日常会話だ」「通常運転です」

「...荒北に同情せざる終えないな!!」
山神様を呆れされたようだ。








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