直線鬼と豆撒き


2月に入り、寒さが増す。制服の上からコート着ても脚は寒いし、サイクルジャージもアンダー着たってとにかく寒い。
あまりの寒さにセーターの上に箱学ジャージも着ている暖かそうなみょうじを引っ捕まえて背後から抱きしめてみようとしたら軽く足を踏まれた。
「ぅ、冷えた足にはそれ堪えるぞ、おめさん」
「ならこの相手は泉田君でいいじゃない」

いやぁ、おめさんが良いんだって、いつかのニケツの時の様にひっついて欲しいのにな。そんなこと叶わずいつものみょうじだ。みょうじの雰囲気と女の子特有の匂いと柔らかさと温かさが、とくに冬は恋しくさせる...あぁやっぱり靖友はズルいな、これを独り占めしてるからなぁ。

この前寝坊で色々忘れたみょうじに、貸した教科書代として肩を借りたら机に突っ伏すほどの爆撃を受けたのは新しい。

その日ジャージを忘れた時のタートルネックも最高だった。水着とは違った良さがあった、凹凸ある身体のラインがなんとも言えなくて、後輩が目のやり場に固まっていたな。
しかも初めてみる眼鏡付き...黒田には要素詰め込みすぎだと言われたがそんな事はどうでも良いくらいだった。
ダボダボな靖友ジャージを着ているみょうじに頼み込んで、どこかのグラビアのように眼鏡の端を咥えてるみょうじもなかなか良かったな。あの時に写真撮らなかったり抱きつかなかっただけよしとしてほしい。



そんなこんなで、本日節分。
OBからの落花生の差し入れがあったので、部活終わりに食べ始めてたのだ。
しかし豆撒きという名の俺イジメが始まった。
今作りました的な雑な鬼のお面を付けさせられた。いや靖友と尽八にせがんでみょうじが本当に今作ってたんだけどな。

「よし!早く新開かぶるのだ!」
「この役はてめェしかいねぇだろ!」
「そうだ!よし鬼になれ!」
落花生を握りしめている楽しそうな尽八と靖友。なまえを助けを求めるかのようにチラ見したらなまえも笑顔で落花生を握りしめていた。寿一!振り向いたら、目を輝かせていた。お、俺の味方が居ないのか…。

「新開さんっ!!」
「まぁまぁ塔一郎。あ、いっすよ荒北さん。始めて」
心配してくれるらしい泉田を抑えている黒田。
思わずため息をついて観念して手作り感満載のお面をかぶる。

「「「「鬼は外〜!!」」」」
俺に当たる大量の落花生。
「いてぇ!」
靖友、ここぞとばかりに振りかぶって投げるな、冷えた体にピシピシと当たる落花生が痛いんだ。俺なんかしたのかっていうほど、上から投げつけてくる。…まぁ色々している自覚はある。

「「「「福は内〜」」」」
寿一には下から優しく投げる...なんとも非常に解せない。むしろそれがやりたかっただけだろうおめさん達。
パラパラと落花生をかぶる寿一だ。きっと鬼だってきっと泣きたかったんであろう。って節分で鬼の気持ちを考えるとは思わなかった。

「おめさん達、鬼も内・福も内の地域だってあるんだぜ?」
そんな俺の一言も聞いてもらえない様子だ。結局のところ落花生を投げつけられる事には変わりはなかったぞ。





部室に散らばった落花生を騒ぎながら食いながら拾う俺ら。いや、拾いながら食った俺たちか。結局はこうなるんだ。

しゃがんで落花生を拾うみょうじがパキッと落花生を砕いて中身のピーナッツを手のひらに出す。
「ほら、新開、"鬼も内、福も内"ってね」
髪を耳にかけながら笑顔で差し出されたピーナッツ。ああ、おめさん聞こえてたのか、俺のひとり言。鬼にとってのおめさんは福だろうな。
フォローしてくれたみょうじの手首を持って、手のひらに口をつけて食おうとしたら少し困り笑顔のみょうじの背後に鬼神が目を光らせていた。

...ヒュウ、おめさんのが鬼役似合うぜ?
俺の恵方巻きでも食うか?とかセクハラ発言も飲みんで、しぶしぶ手でピーナッツを摘んだ俺だった。


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