お手伝い
そう、それは3月に入る前に言われた一言だ。
"春休みバイトしない?"
もちろん部活もあるだろうし断わった。そうしたら部活休みの時だけ出てくれれば良いからという2つ上の従姉妹からのお誘いだ。そんなんで良いのかと聞いたら寒い中の客引き&ビラ配りだから来てくれるだけありがたいのよと返ってきた。
親に相談したら、良いんじゃないのー?そっちのが家計も助かると簡単に言われてしまった。うん、確かに多少のお金も欲しいと思い、春休みの部活の無い午後はバイトの予定を入れたのだった。
絶賛後悔中だが。
春休みに入り、初めてのバイトは従姉妹の姉さんとある駅で待ち合わせて連れて行かれた先は可愛らしい外観の看板がかかった所謂メイド喫茶だった。
「…バイトって」
「そ、メイドで客引き…っつってもチラシ私と配ってくれれば良いから」
「今更キャンセルは?」
「出来ないでしょ?なまえの性格的に」
確認しとかなかった私が甘かったのか?とかいや事前に言ってよとか反論が頭の中で廻るがもうここまできたら断れなかった。
あれよあれよと店長に挨拶をして、メイド服を渡されて、姉さんと一緒に着替える。
「えっ、と、これここでいいの?」
「そー、んでそのエプロンをー…」
カチューシャやらエプロンやらの小物まで着けさせられた。救いなのは足元まである落ち着いたスカート丈という事だろう。
「えー、スゴイ似合うじゃんなまえ!本職本職!」
「みょうじさん似合うわね、いるいるこういう感じの大人しめなメイドさんは人気よね!」
「…姉さんもう慣れてるもんだね」
姉さんと店長に褒められたが、これを褒められてもそこまで嬉しくないぞ。いや、この服は可愛いんだけどさ!しっかりと作り込まれたメイド服は、ダボつく事なく身体に合うし、クラシックな感じだし大人しめで正直少し可愛い。
でも、それよりも知り合いにこれを見られたら恥ずかしすぎるっていう気持ちが先行する。次からのバイトは眼鏡を着用して、せめてものバレ防止をしよう。よかった…靖友達に何も言ってなくて…。
お仕事は簡単、可愛らしいカゴを持って姉さんの真似をして笑顔で!チラシを配るというもの。笑顔で!を強調された、さすが私という人間を分かっていらっしゃる。
それが初回のバイトのこと。
2回目のバイトの今日は少し慣れてきたのだ、このメイド服と雰囲気と客に。
この前の初回のバイトは恥ずかしくて"〜いかがっすか"と一回目に言ったら居酒屋じゃないんだから!!と姉さんに早速注意を受けたもんだ。あと、笑顔が足りないだの声が低いだの散々素晴らしい笑顔でチラシ配りの最中に耳元で指摘を受けた。
その甲斐もあって本日は完璧な私だ。更に今日は眼鏡を着用しているのだから強気のチラシ配りだ。
着々と減っていくチラシ。今日は初っ端からしっかりとにこやかに笑いながら手渡していく。よく分からない質問されたら"萌え萌えキュン"とでも言えと上から…というか姉さんから教わっている。はい、もう何回か使わせてもらってます。
そして、何回か姉さんとやはり顔の系統が似ているので姉妹かと息を荒くして聞かれたりする。そこで姉さんがそうなんです〜って語尾にハートをつけながら切り替えしていた。さすがだ姉さん勉強になります。
「いかがですか?」
笑顔でママチャリを押す丸眼鏡の少年にチラシを配った。その瞬間、その少年が顔を赤くして固まった。
「あ、あの!その、はい!メイド喫茶っ…、なんていうか、あのそのレベルが高くてですねっ!あ、嫌っていうわけじゃないん、あわ、んですけど!」
途中からよく聞き取れなかったが、まぁ悪い人ではないのだろう。早口で喋る私より少し背の高い可愛らしい少年だった。
「えと…メイドはお嫌いですか?」
「だ、大好きです!!」
「ふふ、よろしかったらいつでもお寄りください」
もちろん営業スマイルで対応する。この控えめな少年…いつも態度が大きい、図体もでかい奴らを相手にしていると物凄く可愛くみえる。
そんな可愛らしい少年が口を開いた
「っはい!!ありが、ありがとうございます。あ…その、○○○○っていうアニメに出てくるキャラによく似てますね!?あ、えと!あの熱いメイドさんが闘うあの有名な!姉妹で、また愛憎劇が魅力の、えとそのそっの!ラブひめに劣らないほどの!いや僕は、あのラブひめ派なんですけど!!」
…なんだろうかそのアニメは。ワタワタと身振り手振り喋る少年だが色々分からない事が多い上に、突っ込みどころ満載で何と返事をしたら良いのか分からない。こういう時はの
「…萌え萌えキュン?」
「っ!それですー!!あの、よく似合いますっ!!」
更に悪化した状況となった。少年は、私が分からない言葉を続けている…、止まらない少年。なんで!?訳分からず姉さんに視線で助けを求めたが他の相手をしていた。
「ほんと、あのすいません!…写真、一枚だけ!ダメでしゅか?」
カミカミの少年だ。写真なんてアウトに決まっている。なので当初の予定通りに断る事にした。
「…それは、ちょっとご遠慮…」
「…っダメですか…?ぁ、やっぱり…そ、そうですよね…はぁ…」
うぉーーー!
すっごく少年落ち込んでるよぉー…、もうめっちゃ下むいて泣きそうに落ち込んでるんだけど!どうしたらいいのこれ!
「…あ、じゃ1枚コソッとですよ?」
「!」
パァっと明るくなった少年にホッとする。少年は、さっと1枚とって、ペコペコと何度も頭を下げてママチャリ押して去っていった。まぁ良い子そうだし、人少なかったし大丈夫だよね。
この写真が数か月後に人目に晒される事をこの時気付けなかった。
(頂きネタ:総北と絡む とりあえず始めは絶対この人でしょう。名前はでてないけど小野田君)
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