嘘
本日も日中からよく走る彼等を眺める。暖かくなっきたのかやけに活発だ。私も飽きることなくマネ業を行う、あと半年もすると終わっているのだろう。そう思うと切ない想いがある。
「みょうじさん、今日エイプリルフールなんですよー」
やたら高いところからホワンとした声が聞こえた。そう葦木場君だ。
「えー、それ明日だよ?」
「えっ!?」
直ぐに返す私に素直に驚いてくれた実に可愛い後輩だ。しっかりと今日はエイプリルフールだ。黒田君がアワアワしている葦木場君に今日で合ってるぞとフォローしてくれている。さすが黒田君。
「みょうじさん酷いですー」
「ふふ、ごめんて」
眉を下げる葦木場君。時々洗濯干すのを手伝ってくれる葦木場君も最近は笑顔が増えてきた。ちなみに私との身長差は40cm以上だ。なので物凄く圧迫感があるはずなのに本人のキャラクターによって緩和されている。
そんな彼が今日手が空いているからと言い、断る私の洗濯を手伝ってくれるらしい。スパッと服の皺を伸ばす手つきも様になっている。そして洗濯干し棒よりも頭出ている…そりゃ2mあるもんね。
「普通のベッドとかだと足出ちゃうよね、それ様な大きいベッド?」
「あ、そうです。そういうのあるんですよー」
「へぇ」
「みょうじさん小さいからそれ様です?」
「…」
質問の意味がどういう事だか分からない。が本人は先ほどから変わらずニコニコしている。
「そーそー、そんな感じ」
だから空気を読んで適当に流すことにした私。
「荒北さんと寝るんですかぁ?」
「っ!いや、寝ないから!」
いきなりぶっ飛んだ質問に言葉に詰まる私。こ、これだから天然さんは困るんだけど。
「え、そうなんですか?」
「そうそう」
「えー、それも嘘です?エイプリルフールですし」
首傾げている葦木場君だ。
「いや、いやホントに」
「じゃ、いつ寝るんですかぁ?」
「っ」
大きい図体の割に首傾げてるの可愛いなって、そんな事を考えながら必死に否定する。だって、本当寝たことないし、ただつい何やら他の事まで頭の隅で考えてしまった自分自身が終わっていると思った。
「…干すの終わりました?」
そこに助っ人な黒田君が来た。
「よく来てくれた!黒田君!」
黒田君の腕をグイっと引っ張り、私と葦木場君の間に障害物の様に立たせた。
「えー、ユキちゃん邪魔ー」
「黒田君!葦木場君連れて行って練習させてやって下さい。練習したいようです」
「え、何あったんスか?」
「…」
「みょうじさんに荒北さんと寝るのか聞いてたんだ」
「っ、おま、何聞いて!」
キリッと言う葦木場君の内容に戸惑う黒田君。そりゃそうだろう身内のような人間のそんな話なんか聞きたくないだろう。
…でも、ここはエイプリルフールらしく答えて凌ごうではないか。後輩にからかわれっぱなしもつまらない。
「えー、…とホラ実はこうだから」
黒田君の腕に寄り添う様に少し腕を絡ませてみた。黒田君だし、分かってくれるだろう。
「え!!!ユキちゃんそうだったの!!?」
手を口にやり驚いてくれる葦木場君。と何故か固まった黒田君。
慌てた葦木場君が何処かに走り去っていった。
「…あの?黒田、君?」
顔を覗くと少し赤く苦い顔をしていた。
「みょうじさん、…俺荒北さんに殺されたらどうするんスか」
「う、骨は拾ってあげます」
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