桜散る
過ぎ去る日は早いものだ。3月の卒業式で前任のマネの人に激励をもらいながら別れてからあっという間だ。
高校最後の1年が始まる。くたびれてきた制服ももう少しだ。それと同時にピカピカの制服を纏った1年が入学してきている。なんとも初々しい。
プリントだかも大量に配られる。年間行事表だかを見ると文化祭が秋口になっている。
「あ、文化祭今年変わるだね」
「かき氷は売れなそう、クラスTシャツつなぎだったら丁度いい時期だよね」
ミサキが笑いながら言っている。
部活も強豪という事あって、続々と入部届が提出されていると東堂君伝いに聞いた。これからさらに汗にまみれるだろう彼ら…洗濯のしがいがある。
授業も終わり毎度の部活へ向かう。この春めいた気候は気持ちを穏やかにさせる。
「やっと暖かくなってきたよね」
「そうだな」
「新開もやーっと薄着になってきたよね、冬なんて1.5倍くらいに膨らんでたもん」
「お、よく見てるな」
「そりゃあんたらの身体は見慣れてるし…」
言ったところで微妙な気がした。そりゃあんだけピチッとした服だししょうがないのだ。ヒュウと口鳴らす新開の背中を叩いた。
部活へ行くとこの4月から入ってきた1年に和かに話しかけられた。
「みょうじさん〜今日は何するんですかー?」
「…真波君、練習内容は主将か東堂君にでも聞いて」
「え〜みょうじさんの予定も知りたいです」
真波山岳という問題児に何故か慕われたらしい。
きっかけは新学期が始まり、部内での新入生の挨拶も終わったくらいの時期。
移動教室が終わり、さぁ昼に飲み物買おうと自販に向かっている最中に木陰で寝ている真波君を見つけた。
「…真波君、そこで寝ていると風邪ひくよ」
というかこの子前の時間から寝てるんじゃないのか?何となくマネとしてほっとけなくて声をかけてしまった。
「ん、はい」
寝ぼけた真波君が目を覚ます。欠伸をしながら目を擦る姿が少し幼い。
「えー…とみょうじさん?」
「そ、当たり。じゃまた部活でね」
そのまま過ぎ去っただけだったはず。なのに何故だかよく絡んでくる。
「おめェ、またなんかしたのかァ?」
「またとは何よ。単に桜の木の下で寝てた真波君を一回起こしただけなんだけど…」
先程の真波君との会話を聞いていたらしい靖友が不思議そうに聞いてきたのでありのままを話した。
ただこの真波君はやけに可愛い。2歳年が離れるせいもあるのか加護欲がそそられる。が入部してから、不規則に登場する真波君だ。その為か意外と会う機会は少ない。
もう3年からあいつは今日も山かと呆れながら言われている。なんともこの自転車競技部に似合ったマイペースさだ。
あとは目立つ人と言ったらいいのか…体格が良い銅橋君とかだろうか、入部当初からいざこざが絶えなそうな猪突猛進さだ。でもそんなストレートさは嫌いじゃない。
ちなみに早々と靖友や新開に、喧嘩に割って入るなよと釘をさされた。私をなんだと思っている…確かに銅橋君に殴られるのは勘弁だ。口の中切るだけじゃ済まされなそうだしね。
そうして始まった最後の年度。
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