憂鬱
4月半ば、本日ここ箱根学園では身体測定、健康診断等が行われる。午前はそれぞれ体育館や保健室等を回るのだ。そして午後は授業がまっている。
その為運動着で始まった朝のホームルーム。
検査場に移動しながらポツンと呟くミサキ。
「運動着分は引かれるらしいけど、微妙よね」
「本当、体重とかわざわざここで測らなくても気にするんだけど」
ホームルームが終わり、例によってミサキと回る事になった。
「なまえは意外と背ぇ小さいよね。こう並ぶと余計に」
「う…、私としてはもっと伸びる気だったの!でも中1で止まったんだよね」
「バランス良いからもっとありそうに見えるのに…勿体無い」
「あのね、元バレー部には負けますから」
そんな話を渡り廊下で話しながら移動する。
採血に、聴力検査、視力検査に心電図もか…回れるところから並んで行っていく。この大所帯の学園では一大イベントだ。
「私行列って嫌いなんだよね」
ポツンと呟くと、そりゃ好きな人は居ないからとミサキに突っ込まれた。次に回ろうとしている身長や体重測定等の場所の第一体育館を目指す。すれ違い女子達が体重についてワーキャー言いながら騒いでいる。私達も帰りはそうなのだろう。
体育館に着くと、靖友達が並んでいた。なんだ皆一緒になったのか、こいつらはウダウダ言いながらも相変わらず仲良い。
「お、おめさん達もこれからか?」
私達に気付いた新開君が菓子パンを食べながら声をかけてきた。体重測定前にこのお気楽さはさすが男子というところか。いや、さすが新開というところか…。
「そう、あとはここと外に来てるレントゲン撮影」
「…てめぇら、ちゃんと並べヨ…お、なまえチャンここ体重だけど大丈夫かァ?」
振り向いた靖友がヒラヒラと記録表を振ってくる。
「うるさい、前向け荒北」
靖友は見るからに軽そうだからなぁ…こういう時は少し羨ましい。
「みょうじ脱げるところまで脱げば軽くなるぞ」「俺は脱ぐぞ、これもファンサービスの一つなのだ!」
上のジャージを潔く脱ぎ捨てたよく分からない東堂君を放置し、さらに私の肩を叩いてくる新開の手を振り払う。ミサキは呆れた様に笑っていた。
やっと私達の番となり、身長体重を測らされる。記録表をそっと目を落として、係によって書かれた数値をこそっと確認する。…うん、よし、あと1〜2キロ軽くて良いけどこんなもんだろう。
「なまえ身長いくつだった?」
携帯を見ながら聞いてくるミサキ。
「156」
「ハッ ちっせェ」「え、おめさんそれしかないのか?」
ミサキに答えたのに聞こえたらしいデカイ奴等が口出ししてくる。それしかって、それしかだよ!靖友が私の頭に肘掛のように腕を乗せてくる。なんていうかそれ余計に縮みそうなんだけど。
「160はありそうだったな」
福富君によって呟やかれた言葉。そりゃ、私服の時は多少のヒールは履くからそうであろう。私だって160欲しいさ!
「いや、俺に対しての態度のでかさは170以上だろう!」
「…言ったね、東堂君」
最近の東堂君は私に対して扱いが容赦ない。靖友と同じ扱いは止めにして欲しいところだ。
「…あ、ちなみに荒北君達っていくつあるの?」
ミサキが珍しく靖友に話しかける。なので靖友少し驚いている。
「あー…178?」
「え、そんなあるの?荒北」
私の記憶は昔からなので、思わぬ高さに少しびっくりする。
「嘘ついてどうすんだヨ」
「…そだよね」
「で、寿一が180に、尽八が174で、俺177だったかな」
新開が補足の様に教えてくれる。
「…ふ、へぇー…」
「何コソコソ笑ってんのミサキ」
そんな笑うミサキを不思議がる私達。
「え、いや、どうなのかなぁって感想を…」
「何がよ…」
ホラっとミサキが今まで見ていた携帯画面を見せてきた。そのためについ私達は覗いてしまったのだ。
「「っ…」」
何かに気付いて口をつぐんだ私と靖友。
「あ、さすが二人とも。計算一瞬」
私達の顔を見比べるようにクスクスと笑うミサキ。
"キスしやすい身長差12cm、理想のカップル身長差15cm、セックスしやすい身長差22cm、ぎゅっとしやすい身長差32cm"
どこかのコラムらしい、よくある様なネタ文章だ。それがミサキの携帯画面に開かれていた。
「なるほど、そんなものもあるのだな」「…いやぁ、1センチは誤差のうちだな。試してみるか?俺が感想いってやるぞ?」
「…バカでしょ新開、あとミサキも」
半笑いで声をかけてくる皆に思わずため息をつく私。
「…しやすいんじゃねぇのォ」
満を持してボソッと呟いた身長差22cmの靖友の脇腹をコソッとつねった私であった。…ってつねる肉少ないよ…。
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