新開の背中
週末をあけたらいつもの2人がおかしくなっていた。とは言ってもおかしいのは靖友の方だが。
「んー…喧嘩っつー訳じゃなさそうだな」
「そうだな、また荒北が面倒くさいことでも考えているのだろう」
朝の部活終わりに靖友とみょうじが話しているのを少し遠くから尽八と眺める。
「おめさん達喧嘩してるのか?」
教室で隣の席でお菓子を食べているみょうじに話しかける…少しお菓子を奪いながら。
「あ、勝手に食べないでよ。別に喧嘩って程はしてないよ?」
「そうかぁ?靖友寂しそうだろ」
「ふん、いい気味」
妖しく笑うみょうじ。やっぱり何かあったのだろうと予測がついた。
…
みょうじは後輩の中では黒田や泉田がお気に入りなのか、あからさまな贔屓している訳じゃないがよくよく可愛がってる。
今もそうだ、悪戯な顔を浮かべながら黒田にタオルを渡しながら少し背伸びして黒田の明るい髪をワシャワシャしている。んで、黒田が少し怒っている。
それを仏頂面で見ている俺の隣の奴から、ドス黒いオーラが漂ってきている。もう黒田一人くらい殺めていそうだ。そんなに不機嫌になるなら、いつも通りに邪魔しに行けばいいんじゃないか?
そんな靖友を相手にするのも面倒くさいので、敢えて話しかけない俺。
「荒北、新開お疲れさまー」
「ああ、疲れたな」
ハイ、タオルと笑顔で渡してくれるみょうじをいつもの調子でハグしようとする。
ギュッと収まる体…って、え?2人からのツッコミがないんだけど!?ほら、いつもだったら足踏まれたり、靖友に引っぺがされたりするじゃないか。思わぬラッキーに何故か戸惑う俺。
俺の腕の中にすっぽり収まってしまったみょうじの顔が近いし、汗じゃないいい匂いするし、柔らかいし暖かい…。
固まっていたみょうじを抱きしめてたんだが我に返ったみょうじにサラリと腕を解かれた。あー、靖友はフラッとどこかに行っちまったしなぁ。ヤバイなんか不味かったか?
…
微妙な空気感の2人は変わらず1週間は経った。
「だァからァ!もう止めにしねェ?」
「いや、荒北の場合はせめて2ヶ月くらいないとダメだから」
「はぁ!?んなのもう無理に決まってんだろ!?」
「そんな事よりこの間を反省してよ!」
部活終わりに隅で言い合っている2人。ああ、やっぱり喧嘩だったのか?
「…あれ、止めた方がいいっスかね」
黒田が指を指して俺に聞いてくる。
「…痴話喧嘩は犬も食わないっていうな」
とりあえず2人に近づく俺。
「おめさん達、せめて声を落とせ。後輩がビビるだろ?」
チラッと同じタイミングで俺を横目に見る2人、おめさん達仲良いな。
「私は別に声大きくない」
まぁ、確かにな。
「てめェにゃ関係ねェ」
それも一理ある。が、此処はおめさん達以外もいるからな?現に俺まで聞こえてるしなぁ。
「まぁまぁ、結局は原因なんなんだ?」
仲直りさせる為にも、原因を聞こうとした俺。
しかし何か質問を間違ったのだろうか…。2人が真っ赤になって硬直した。え、なんでだ?
「や…、荒北が悪い」
苦々しくみょうじが呟く。
「…」
歪んだ顔の靖友からの反論がないということは、原因は靖友だろうと理解できた。
「さっきから何をしているのだ?」
尽八も気になってきたのか首を突っ込んできた。おい、おめさん達ギャラリー増えてくぞ?
「〜っ」
みょうじが靖友から隠れる様に俺の背中にピトッと張り付く。おお、なんか可愛いな。
「だ、だから!荒北には先週から私への接触禁止令出してんの!」
その吐き捨てられた一言に大爆笑した俺と尽八。原因は分からないが、靖友の不機嫌の理由はわかった。
そりゃ、みょうじ接触禁止令は俺も出されたくないな。
「てっめ!」
「いやぁそれは靖友、発令するくらい何かしでかしたおめさんの自業自得だろ?」
「うんうん、隼人の言う通りだな」
みょうじの味方についた俺と尽八。靖友が口を噛んでいる。
「でしょ!?さすが分かってくれる!?」
「ああ、当たり前だろ?」
みょうじが喜んでそのまま背後からしがみつく感じにきて背中に当たる膨らみ。あ、これすげぇ気持ちいいわ。
「…なまえ、てめェ新開から離れろヨ」
「…やだ、荒北怖い…」
とか言いつつ楽しそうに俺の背中に隠れている。
「荒北、女のコを怖がらせてはならんよ!」
尽八が不敵に笑いながら指を指す。
「てめェら…」
ドスドスと寿一に向かって逃げていった。
…
寮にてそれでもと思い原因を聞いた。
「…あー…この前あいつ風邪ひいてた時に襲ったんだヨ!!つーか、マジ、あいつ酷ェの!あんな状態のなまえみて生殺しなんて出来るわけねぇからァ!!ふっつーに立つに決まってんだろォ!?」
…少し靖友に同情した。そうかみょうじそんな事したのか。靖友はおそらくあの色気垂れ流しにやられて…。
「男なら、同じ状況だったらやんだろ!?」
まぁそうだろうな。
「いや、分からないな」
「ああ!?」
同意しなかった俺にイラっとした靖友だ。
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