電話
「うおーーー!どこだぁぁ〜〜〜!!俺のケータイ〜〜!」
東堂君がまさかの携帯を無くしたらしい。東堂君の叫び声が部活中時折聞こえる。
「ハッ いい気味ィ」
踏ん反り返って椅子をギシギシ言わせている靖友。いやいや、さすがにあの携帯依存症の東堂君にそれは可哀想だ。
「教室じゃないのか?」
福富君は、しっかりと心配している。
「まぁ、そのうち出てくるさ。パワーバー食うか?」
そして四次元ポケットから出したパワーバーをもつ新開。
…東堂君、とりあえず部活が終わってから叫んでくれ。仮にも副部長さんだ。
「…うっざ」
思わず呆れてしまう。そしていつものツッコミを待つ。
「うざくはないな!って最近みょうじ俺に対して冷たくはないか!?」
「そうかぁ?前からじゃないか」
「何!?それはいかんな!みょうじ俺と話し合おうじゃないか、部活の危機だ」
「てめぇ等さっさと走りいっぞ、福チャン待ってるからァ」
靖友が放つ魔法の言葉"福チャン"によって渋々外へ練習へ行く。
「携帯…ねぇ」
鳴らしたりなんなりしても、鳴らないし震えないし…部室にはないのかな。頭の隅においやり、私も仕事を進める。
洗濯室からの帰り、木陰に落ちている無機物を発見した。あ、これのことかな?東堂君の携帯電話。
手にとってみる…ストラップも見憶えなくはない、確か東堂君のはず。そういやいつだか言ってたな、ここを通ると俺の教室から距離がロスなく来れるって。確か日直で遅れてきたから多少なりとも慌てたんであろう。
私中々ナイスじゃない?これは何か奢らせなければならない。
携帯をジャージのポケットに入れる。その瞬間に震える東堂君の携帯電話…が、もちろん無視する。暫くすると切れるバイブレーション。
また仕事をしていると震えだすポケット。…だーからー、東堂君居ませんよーと内心思いながらもちろん無視する。それが4回あった、しつこいな…東堂君達は外周だから暫く戻って来ないって!
電話の主に脳内で答える。
ブブブブ…
…もう!緊急ってことにさせてもらうからね!東堂君!本当ゴメン!!
頭で平謝りしながら、携帯をぱかっと開いて通話ボタンを仕方なしに押し、向こうが喋り出す前にまくしたてる。
「大変申し訳ありません!東堂は今席を外しています。おかけになったところ申し訳ありませんがまたおかけください」
"..."
「…?」
"誰、ショ?"
「…ぇー、箱学マネのみょうじと申します」
"あー…知ってるショ、なかなか出来るマネっショ"
「あ、どうも…」
"東堂いねぇならしょうがねぇショ、悪ぃな"
「はい、勝手に出てすいませんでした」
東堂君に言い訳するかの様に電話の相手にも対応する。
"なかなか良い声っショ、悪くないショ"
「…はぁ」
"あー...この電話は東堂にゃ内緒っショ、あいつの驚く顔見たいショ?"
「ふふ、 そうですね。会えるの楽しみにしています」
通話ボタンで終了する。またなんとも面白い喋り方の人…しょ。思わずうつってしまう、えーっと確か巻島さんだったっけ?東堂君と肩を並べるとウダウダ長々と東堂君が話していたはず。なんというか自転車競技部に相応しい変わった感じの人っしょ…なんとなくうつってしまって脳内で真似をする私。
暫くすると東堂君達が戻ってきた。そして各々休憩している。
「東堂君!お疲れ様」
目当ての人物に話しかける。
「おお、なかなか良い坂だったぞ」
「さすが、…あといいお知らせ」
そう言いポケットから出すは東堂君の携帯電話。
「ぅおーー!見つけてくれたのかみょうじ!」
「そ、感謝してよね」
「ああ!しているぞ、ありがとう!お礼にサインをやろう」
「あ、それは要らないから」
そんな私をほっておきながら東堂君はいそいそと電話をかけている。おそらく相手は巻島さんであろう。
「...ならん!ならんよ巻ちゃん!なぜにみょうじなんだ!?」
まさかの私の名前が聞こえて聞き耳をたてる、というか東堂君をしっかり見る。
「おめさん何したんだ?」
「…いや、特に」
「間があったぞ?」
「いや」
「うーん、そうじゃないんだけどなぁ」
東堂君がワーワー話す横で新開と話す私。ちょっと本当何の話しているのよ…。
「みょうじは優秀なマネだ!誰がやるか!」
ブッと吹き出したのは私だけじゃなかった。
「…なんかしたろおめェ」
「してないから!」
頑なに黙秘する私。本当何もしていないけど、あ、これが巻島さん言っていた"東堂君を驚く顔"っていうことか?
いつもより焦って身振り手振りが大きく、更に声まで大きい。もしかしたら私の為なのでしょうか?
うーん…巻島さん、これ驚く顔よりも焦っている顔に近い気がするけど、確かに東堂君の熱い気持ちをいただいた気がします巻島さん。よりマネ業に力が湧いた放課後だった。
(頂きネタ:総北と絡む 巻島さん)
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