あと少し
「なまえチャン勉強教えてヨ」
「ハイハイ」
中間テストを控えている私達。部室で私の腕を掴んできた靖友だ。
「みょうじ接触禁止令解いたのか?」
「ぅ、まぁ…」
私の腕を掴む靖友に気付いて新開が話しかけてきた。その…なんとも激しい解き方をしたのは勿論内緒だ。
「いやぁ、まだ発令してようぜ?」
そう言い新開が私の頭に顔を乗せてくる。正直少し重い。
「おめェ邪魔」
「調子乗るなよ靖友」
「るせーヨ」
「どこで勉強しようか…今週末でするでしょ?」
「あー…俺ん家で」
「了解」
「…おめさん達俺は混ぜてくれないんだな」
寂しそうに言う新開に、手を振りながら答える。
「えと、また学校で教えるよ「てめぇはまず起きて授業をしっかり受けろヨ」
確かに靖友の言葉通りか。今度からしっかり起こそう、こいつだって3年だ。
靖友に引き摺られる様に部室を後にする。
「荒北、勉強だからね!しないよ?もう3年なんだから本気で!」
「分かってんヨ!俺だって馬鹿じゃねェからァ」
そりゃそうだよね、靖友だって分かってるよね。胸をなで下ろす私。
「なまえチャン明後日くらいから生理だからなァ」
思わず靖友の足を踏んだ。
…
そんな感じに迎えた土曜日
「お邪魔しますー…」
荒北家にお邪魔する私。いつも通り靖友の部屋に案内される。
さすがというか、言われた通りに生理中だ。彼氏に知られている生理周期とか本当やめて欲しいんだけど。そりゃ、私スケジュール帳買っても1カ月で飽きるよ!?とりあえず、どこか変態くさい靖友で少し残念だ…いや、よく私の事を見てくれてるカッコハートと嬉しがるところだろうか。
教科書を開く私達。さすがに真剣だ。
カリカリとシャーペンの音が進む室内。30分もしてからふと目線を上げると靖友のノートに向かう真剣な眼差し。うん、嫌いじゃない寧ろ好きな眼差しだ。細い手で雑に文字を書いていく手つきも嫌いじゃないし、荒々しくページをめくるのもなんとも靖友らしくて好きだと思う。
「…生理中のなまえチャンって目線がえっちなんだよねェ」
「っ!?」
靖友がノートから顔を上げずに呟く。まさか見てたのがバレていたのか。
「煽ってんのォ?」
ニヤつく靖友が頬杖をつく。
「…違う」
「ハッ、よく言う。オラ、腰あげろ腰」
言われた通りに膝立ちする。すると靖友が机越しにキスをしてきた。ペロッと唇を舐められ少し口を開くと舌が入ってきて私の口内を一周舐めていった。
「ん、」
「これで我慢な、勉強しろベンキョー」
「っ分かってます!」
ニッと意地悪く笑う靖友。何さ、人を欲求不満みたいに言って。そりゃ、ちょっと見てただけじゃないか。
「…ねぇ、靖友進路ってどこ考えてるの?」
手元のシャーペンを動かしながら靖友に話しかける。
「まだ分かんねェ、決めてねェ」
「だよねー…」
嫌になる高校の3年、2年から進路希望調査も配られていたけど3年になり一気に現実味を帯びてきた。色々と終わりが見え始める残り1年。部活も夏が終われば一気に受験モードだろう。こうやって靖友と顔を合わす事も来年には少なくなるのだろうか…。そう思うとキュッと胸が痛くなる。
進路先は幅が広いといいと思い学力を維持してきた。幅が広くなったが迷う元である。
「…靖友、来年、」
「あ?」
「なんでもない」
どうなってるんだろうね私達なんてやっぱり口に出せないや。
ミサキや新開や東堂君や福富君とバラバラになるのだ必然的に。当たり前の事なのにそれを考えると寂しい。中学から高校の別れなんて、まだまだ可愛いもんだったな…。
目の前の靖友とも離れる事になるのだろう。はぁ、こんなに近いのにな。
「靖友、好きだよ」
「知ってんヨ」
今はとりあえずその憎らしい笑顔で安心してあげようじゃないの。
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