欲しいもの
本日私の誕生日となっています。だからと言って変わった事はない。朝起きて、おめでとうと家族からいわれ、夕飯好きな物にしてくれるというのでリクエストして学校へ来たところだ。
そして早速この隣の新開は、プレゼンを抱えていた。やはり人気があるのだ新開は。
「おはよう、おめでとう新開」
「ああ、ありがとうな」
新開が私に手を広げてくる。
「…全く」
ハイっと渡すは鞄から出した新作のお菓子。
「おめでとう」
「おお!これ食べたかったんだ」
「ちなみに新開私の誕生日知ってる?」
「いやぁ、知らないな」
「今日」
「…おめでとさん」
「はい、どうも」
お返しはお菓子で良いからと続けた私。
さて、靖友は覚えているのかな。プレゼントとかは要らないし、ただ覚えていてくれたら少し嬉しいなっていう些細な期待。
教室に行くと、私の誕生日を覚えてくれていた友人が声をかけてくれる。
「まさか同じだったのか、なんで言ってくれないんだ」
そんな中新開がプレゼントのお菓子だかを食べながら口を開く。そりゃ去年のその頃は仲良くなり始めな気がするしね。
「言うほどのことじゃないでしょ」
「いやぁ、ほら運命じゃないか?」
バキュンと撃ってくる新開になぜかイラッとする。…これは他の女の子には効くのか?いかんせん謎すぎる。
「新開が言う運命ほど適当なもんもないよ」
そう言いお菓子を新開の口に突っ込んであげた。ボリボリ口を動かす新開だ。
「…あんた達ある意味気が合うよね」
一部始終を見ているミサキが呆れながら発言したのだった。
…
放課後マネ業に勤しむ私。靖友はやはり覚えていないのかー…しょうがないか、今そんな事に浮ついている時期じゃないしね。あと二週間もすればインハイだもん。
照らす日差しが私の肌からも汗を噴きださせる。ぁもう、あいつら程動いてないのになぁ…。
暑くて、しょうがなしにハーフパンツを下から少し折り畳み短くし、半袖Tシャツを少し肩までずり上げる。あいつらはすぐ脱ぐ事が出来て少し羨ましい。Tシャツの裾から、持っていたクリップボードでバサバサと風を送る。こうでもしないとやってられませんわ。
「…なまえやめろそれ、腹冷えんだろ」
そんな事をしていたらいきなり現れたオカン靖友に注意された。しぶしぶTシャツの裾から扇ぐのをやめる。
「外周速かったね」
「ハッ 当たり前ェ」
自信有り気に憎たらしい顔する靖友だ。
「ね、今日自主練してくんでしょ?少し残っててい?」
すると別に良いけどと返された。なんとも往生際が悪い私だ。最近貪欲になってしまったのか、少しでも2人でいたい時がちょくちょくあるのだ。…だって、来年度からこうはいかないだろうし。
部活終わり、靖友は一人外に走り行き自主練を終えた。
「…ねぇ靖友」
「なぁにィなまえチャン」
「…お疲れ様」
うーん…やっぱ自分から言うのも微妙だしなぁ。そんな事を思いながら、汗だくの靖友にタオルを頭から掛けてあげた。
「…言う事言って欲しィ?」
…私は何とも意地悪な彼氏を持ったようだ。タオルの下から覗く靖友の細い目が私を捕らえる。
「まぁ、多少は」
私はどんな顔をしているのだろうか、少し恥ずかしい。
すると靖友がしゃがむ。そして少し驚く私の足にスルッと冷たい手を回して、大腿キスを落とす。
「っ!」
「誕生日おめでとォ」
良い太ももしてんねェとニッと笑う靖友に少しドキッとする。なんとなく、そのサラサラな黒髪に手をやる。大腿へのキスの意味は確か"支配"だっけか…そんな意味があるはずだ。
「…ありがとう」
3年になりなぜか色気の増した靖友だ。何なのかこいつはブサイクなのに…なぜか最近やたらカッコよくてホント嫌。
「っつっても誕生日プレゼントとかマジでないからな。悪ィな」
そう言い撫でていた私の手を握りながら立ち上がる靖友。
…プレゼントはもちろん望んでないけど、欲しいものが見つかった。
「…やっぱ欲しいんだけど」
「あ?無くて良いっつっただろおめェ」
マジで用意してねェからァ!と慌てて続ける靖友に思わず笑う。
「じゃしょうがないから"箱学のインハイ優勝"で手を打ってあげるね」
「!ハッ…んなんいくらでもやってやらァ」
自信有り気なそんな顔が一番好きです。
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