お疲れ様。
8月、やたら長く熱い三日間が終わりを告げた。そうインハイだ。
「お疲れ様」
終了後、独り言の様に呟いた私だった。赤くなった目を見られたくなくて、必死に隠れて目を冷やした。選手が泣かないのに私が泣けるわけがなかった。
…
インハイ翌日、自宅で休養する靖友部屋にお邪魔した。妹さんによって通される靖友部屋だ。
「…あー…いらっしゃい」
気だるそうに横になるベットから声をかけてくる靖友だ。
「…お疲れ様でした」
そんな靖友のベットの下に座る。
「…」
「…」
何と声をかけたら良いのだろうか。色々なセリフをシミュレートしてきたがピンッとくるセリフは思いつかなかった。
「ごめん、お邪魔して」
「別にィ」
「…こっち来いってェ」
「あ、うん」
ぶっきら棒な言葉に誘われる。ギッと鳴るベットに乗り、靖友の隣に横になる。
「目…腫れてんな」
「そんな事ないよ」
前髪をかき分けられる様に呟かれたその言葉。何となく見られたくなくて前髪を弄り元に戻した。
「悪ィな、プレゼント無理だったわァ」
「ふふ、覚えてたんだ」
先月の誕生日に言った単なる激励の言葉だ。靖友なりの冗談だろう。
「…んー…と、そうだね。じゃ来年貰おうかと思う、泉田君達に」
「ああ、持ち越しだなァ」
控え目に笑いあった私達だ。
グッと引っ張られ、私の胸元に頭を埋められる。黒い髪が私の顔を撫でる。そのまま固まった靖友だ。
…どんな顔をしているのか…見れないや。だから、靖友の手を探して重ねて、サラサラな頭にキスをした。
「おかえり」
「ぉー…ただいまァ…」
…
翌々日、自転車競技部ではほぼ反省会が行われた。私としては書記してるくらいだ。
終わりと同時に東堂君に話しかけられる。
「そういえば、みょうじ。巻ちゃん伝いなんだが…」
そう言い私に携帯画面を見せてくるので覗き込む。
「!!!?」
…いやいや、落ち着け!私。なぜその写真が東堂君の携帯に…。
「違うよ」
「俺は何も言ってないんだがな」
「っ!」
「意外と似合ってるではないかメイ「うわぁああ!やめてよバカ東堂!!マジでウザい!!」
「うざくはないな!!」
そんなお馴染みのツッコミ要らないから!つーかなんで、その春休みのバイト写真が…!
「消してよ!!」
含み笑顔の東堂君に迫る私。
「せっかくだから荒北にも見せんと思ってな」
「いーや!!!」
携帯を奪おうとしたらヒョイっと東堂君の頭上に挙げられた。それに向かってジャンプする。
そんな事をしていたら、それを聞きつけたアホどもがわらわらと寄ってくる。
「ぅあー!!!新開やめて!!」
新開が東堂君の携帯を見る…そして靖友も覗き込もうとする。奴らの高い頭上で携帯がやりとりされる。ああ、もうこれはボディブローも有り!?インハイ終わったし平気だよね!?物騒な事を考えながら跳ねる私。
「…おお!!」
「…」
チラッと私を見てくる靖友と新開のその視線がなんか嫌なんですけど。
「っ何よ!?」
「よく似合うぞメイド「うるさい!!も、いーでしょ!?」
「小野田君がどうもみょうじに似ていると言っていたらしくな巻ちゃん伝いに教えてくれたのだ!」
…あのメガネの少年。総北だったのか…思わぬ所で敗北した。畜生…晒すな言ってあったのに!あー…もう本当なんであの時許したんだろう。きっとあれでもノリノリだったのか私は…。
「分かった、本当それ私だから消してください。お願いします」
「尽八、消す前に俺に送ってくれ」
「ってそれ消す意味ないでしょ!?」
飄々とさも当然の様に言う新開にツッコミを入れる。
「…俺にもォ」
「っ…!」
…そう言われたら、何も言えないじゃない。ああもう!ここの自転車競技部はアホばかりだ。
...
その後一人になりあるところに向かう。
今日はないけど夏休み中に行われている補習。やらないわけにいかないこの状況が嫌。部活もほぼ終わりに向かって、出る回数はめっきり減って行くのだろう。追い出しファンライドまではそれなりに顔を出そうとしているが、学業とのバランスとなるのだろう。
「はぁ…」
私が居るのは進路室だ。色々な大学等の資料が置いてある。せめて…幾つかくらい絞り込まないとマズイ。
「奇遇だねーなまえ」
「あ、ミサキ…」
今日学校へ来ていたらしいミサキと出くわした。
「探し物?」
「まぁ、さすがに絞らないとマズイからね」
私に同意してくれるミサキ。ミサキは文系の大学に行くと意気込んでいた。
ペラペラ捲る資料に幾つか候補を挙げる。
「…何、他県?」
「うー…ん。色々候補はあるんだけど…こっち系で」
「…推薦いけんじゃない?」
その後ミサキと色々話した結果、近いうちにある大学のオープンキャンパスに行った。
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