苦いのは苦手


「びゃ、白哉…!大丈夫よ、その…私もう……」


「駄目だ」


「けど、もうこんなにも元気……」


「駄目だ」





うぅ…と眉を寄せ、白哉の方を見つめる憂。しかし白哉は涼しい顔をしたまま自分の意見を変えようとしない。





「薬を飲まねば早く治るものも治らない」


「………薬の苦味が、ちょっと……」





…そう。憂がここまで薬を拒む理由はその"苦味"だった。あの独特の苦味が憂が昔から苦手だった。幼き頃から体が弱く、薬を飲む機会も多かったけれど何度飲んでも慣れなかった。
また、彼女がここまで拒むのも珍しいもので白哉も多少であるが驚いている。……が、もちろん許すはずがない。




「…どうしても飲まぬというのであれば、こちらにも考えがある」


「え…?」




白哉の瞳が鋭くなった……かと思えばいきなり憂のその苦い薬と水を口に含んだ。そして慣れた手付きで憂の顎下を手に取る。





「えっ…びゃくっ、……」




まさか……憂の脳裏に浮かんだ予想は見事当たった。




「ふ…んんっ…!」





口元を彼のそれで塞がれたかと思えば、ゆっくりと口移しで流させられるのは憂が最も苦手とする苦い薬。憂は白哉の胸板をトントン…と叩き、抵抗するものの、敵うはずもなく白哉にされるがまま。そしてじわじわ…と、独特の苦味が憂の口内へと広がり、憂の眉尻は下がっていく。





「ん、んんっ!!」





薬を飲み終わった後も、しばらく長い口付けをされ続け……ようやく離してもらえたときにはもう、顔が赤く染まっていた。





「…はっ…ぁ…」


「薬は飲んだようだな」


「〜っ!……もう、…貴方には、敵いません…」


「兄が薬を飲まぬと言うならまた我が飲ませてやろう」


「………!の…飲み、ます…」




頬に熱が再び集まってくるのを感じ、憂は両手で両頬を覆ったのだった。