寵愛

「…恋次君、これ恋次君が任務でいなかった分、書類まとめておいたわ。一度目を通しておいてもらえるかしら」
「え、あぁ…ありがとう、ございます憂さん」




副隊長である恋次に彼の仕事だった書類を渡す憂。書類整理が不得意である恋次にとっては幸運だった。




「虚退治お疲れ様。毎度毎度副隊長様は大変ね」
「…そういや、憂さん、三席につくほど実力の持ち主なのに実践ってあまりないような…」
「…あぁ、それは…白哉が、私の体のことを気遣って、あまりさせていないの」
「隊長が!?」




憂の言葉に恋次は思わず大声が出た。普段から淡々としている白哉が婚約者である憂に目をかけていることは知ってはいたが、まさかそんなことまで手を回しているとは思わなかったのだ。
恋次が呆然としていると、次の瞬間すごい霊圧が漂って来た。




「…うるさいぞ、恋次」
「うわ!?本物!?」




背後から聞こえた本人の声にまたもびっくりする恋次。白哉の手には一枚の紙が握られている。




「…朽木隊長、副隊長に御用ですか?なら私は戻りますので…」
「別に構わぬ。…恋次、今から隊を率いて虚退治に行け」
「…えぇ!?今からっすか!?」
「…何か文句でもあるのか?」
「い、今から行ってきまーす……」




先ほど終えて帰って来てばっかりなのに、恋次は体に鞭を打ちながらも部屋を出て行った。
その背中がどこか切なく見えて、憂は白哉へ向き直る。




「…白哉、たまには恋次君ばかりじゃなくて私に命じてくれればいいのに」
「ならぬ」
「もう…心配症ね、白哉は」




白哉を見上げ、優しく微笑みながら彼の綺麗な頬に手を伸ばす憂。そんな彼女の小さな手を白哉は握り返した。




「…兄に何かあってからでは遅い」
「私も一応三席の実力はあるのに…だけど、心配してくれて嬉しいわ」
「憂の心配するのは当然のことだ」
「…でも安心して。私は大丈夫…私は白哉一人を置いて消えたりはしないから」




私の帰る場所は、貴方の元だから…そう告げると、白哉は少しほっとした表情を浮かべた。





「だから、たまには恋次君も休ませてあげてね?」
「……兄の頼みなら、仕方ない」



そのことに関しては、素直に納得したとは言えないようで、不満気な顔をしている白哉に憂はクスクスと笑い返したのだった。