突然の抱擁


「あら…この書類、うちじゃなくて三番隊のものだわ」



受け取った書類を確認していると、六番隊の書類の中に何らかの手違いで、三番隊の書類が混ざっていたことに気付いた憂。他の書類はもパラパラと確認してみるが、どうやら一枚だけ紛れ込んでしまったようだ。




「この書類、三番隊のものだから届けてきます」
「…藤宮三席」
「はい」
「…気をつけよ」
「…?はい」




ただ書類を届けに行くだけなのに、気を付けなければならないのか…憂は首を傾げながらも返事をし、三番隊へと向かった。




「失礼致します。六番隊の藤宮です。こちらに三番隊の書類が混ざっていたのでお届けに参りました」
「あ、藤宮さん。すみません、わざわざありがとうございます」
「いえ。それでは私はこれで…」




…と、三番隊の隊員に書類を渡すと六番隊の方へ戻ろうとした。が、それはすぐに阻まれた。




「おやまぁ、憂ちゃんやないの」
「きゃ…!…ギン隊長…!!」




いきなり背後から抱き付かれ、聞き覚えのある声に振り向くとそこにはやはり、予想通りの人。いつもどおりにこにこ笑みを浮かべた市丸がいた。




「どないしたん?憂ちゃんが三番隊の方に出向くなんて珍しいなぁ」
「え、あ…はい。三番隊の方の書類がこちらに混ざっていたので届けに……そ、それより離して頂けませんか…?」




ギン隊長の声が耳元に響いて、嫌でも心臓の鼓動が速く高鳴る。




「顔、赤いなぁ?風邪でも引いたんちゃう?」
「い、いいですから離してください…!」




懇願する憂だが、ギンはそれを少しも受け入れない。





「それにしても、憂ちゃんはホンマえぇ匂いやなぁ」
「ひゃ!?」




憂のうなじに顔を埋めるギン。彼のさらさら、とした髪がくすぐったい。




「可愛い声や」
「や、やめてくださ……!?」




ギンのだんだんとエスカレートしていく行動に必死に声を上げていた藤宮の願いが届いたのか、ちょうどそのときイヅルが三番隊舎へ戻ってきた。




「い、市丸隊長!?何しているんですか!?」
「…吉良くん!お願い、ギン隊長を……!」
「隊長…!憂さんが困っていますよ…!それに、まだまだ今日中に片付けてもらわなければ書類があるんですからね!!」
「あーあ、いけずやなぁイヅルは」




憂の願いを聞き入れ、また仕事が溜まっていることもあり、イヅルは直ぐ様二人を引き離してくれたのだった。
その隙に、憂は三番隊の執務室から逃げ出したのだった。





「ほんま憂ちゃん、可愛ええなぁ。僕のものにしてまおうかな」
「…そんなことより仕事片付けてください、隊長」




そんな会話が三番隊でされてるだなんて、憂は露とも知らず。