小麦色の誘惑


太陽は高く昇っている。暑苦しいくらい日差しは強く、そんな中で体を動かすほど憂鬱なことはない。

少なくとも、高杉はそう思っている。


校庭で馬鹿みたいに騒いでいるクラスの連中を、高杉は教室で見下ろしていた。…要はサボリである。

何も昼飯後の、特に太陽の日差しが一番強い時間帯に体育なんて授業を組む先公どもの考えがわからねェ。


あほらしい…そう思った高杉が机に伏せて昼寝でもするかの窓辺から離れようとしたそのとき。





「……っあ、高杉君!」


「…!?…花村…」




体操服姿の菜子が怪訝そうにこちらを見ていた。





「高杉君、次体育だけど…出ないの?」


「……悪ィか」


「…よくはない、かな」




クスクス笑う菜子につられて、思わず口元が緩みそうになる。
…ギリギリ手のひらで覆って隠したが。




「けど、確かに今の時間に体育って憂鬱だもんね。気持ちわかるよ」




暑い…と手で風を送る菜子。…体操服から見える、少し焼けた肌がどこか色っぽい。


……って、何を考えているんだ俺は。



「…っ花村は何しに来たんだよ」


「私ー?タオル取りに来たの。やっぱ汗気になるし」




そう言って無邪気に笑う姿がまた愛らしい。汗なんか、お前が可愛いすぎて気にならねェっつの。





「…ね、高杉君」


「なんだよ」


「今度の体育は一緒に出ようよ?男女混合でサッカーするんだって!」


「…へぇ」


「…高杉君もやろう?」


「…だりぃ」


「そう言わないでさ!…きっと高杉君と一緒の方が楽しいし!ね?」



……誘い方も可愛い。つか可愛くねェとこなんてなくね?こいつ、どこもかしこも可愛すぎじゃねーか。



「…気が向いたら、な」


「約束だよ?」




そう告げる菜子の声さえも愛しさを感じた。





小麦色(こむぎいろ)の誘惑
(それ以上かき乱すな!)






*前】【次#