まるでシトラスのように輝く
昼はいつもコンビニ弁当か売店で売っているパン。母親からの手作り弁当…なんて最後に食べたのは何年前だ?
まぁ一人暮らしなのだから仕方ないが。
昼食の時間。岡田に買いに行かせたパンを適当に食っていると、視線を感じた。
「……高杉君、いつも見るたびご飯、パンとかコンビニのお弁当とかばっかだけど…」
その視線の相手は菜子だった。心配そうにこちらを見てくる彼女に思わずドキ、と鼓動が高鳴る。
「…あー、俺一人暮らしだから」
「…じゃあ毎日ご飯どうしてるの?」
「適当に買って帰るか食わねェ」
「!?だ、駄目だよ…ちゃんとご飯食べなきゃ!だから高杉君そんなに細いんだよ」
「細くねェよ」
そういうお前こそどうなんだって話だ。
そんな細い手首で重い荷物なんて持てねェだろ、そんな小さい手で何を掴めるって言うんだ。
「……高杉君が迷惑じゃなかったら…私、お弁当作ってきてあげようか?」
「…は?」
今こいつ、なんて言った?え、夢?俺まだ寝てんじゃねぇのか。…や、夢ならまだ覚めんじゃねェ。
「これでもご飯作るの得意だし!味にも自信はあるし…勿論栄養バランスだって…」
と、色々話す菜子には悪いんだが生憎俺の頭の中はそれどころではない。
幸せの絶頂に浸っているのだから。
「…あ、迷惑だったらいいよ?勝手なおせっかいだと思うし…」
「…んなこと、ねェよ」
「え?」
きょとんとした表情を浮かべる菜子に高杉は不器用ながらも言葉を紡ぐ。
「…花村が悪くないなら、」
「…よかった、じゃあ明日楽しみにしててね」
…明日学校行くのが楽しみだなんて、思ったのはいつぶりだろうか。
まるで
シトラスのように輝く
(その時が恋しく感じた)
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