若草色に染まる
はい、これ……と渡されたものは昨日からずっと楽しみにしていたものだった。
水色の包みに包まれている弁当箱。
目の前にはもちろん、愛しい菜子の笑顔。
「高杉君に作るんだって思ったら張り切っちゃった。」
もうこいつどんだけ可愛いんだ。やばい、もう弁当よりこっち食いてェ。
「また嫌いなものとかあったら、言ってね。気を付けるから」
「…悪ぃな」
「ううんっ私が好きでしてることだから」
「……っ」
顔が赤くなってねぇか、にやついてねェか…つい気になっちまうじゃねェか。
「それじゃ私教室に戻るね」
「…っ…待てよ」
戻ろうとする菜子を慌てて彼女の腕を掴み、引き留めた。
「…?どうしたの、高杉君」
「……昼、空いてるか…?」
そう告げる高杉の声は、珍しくも情けないもので。きっとこんな彼を見たことがある人物は目の前の彼女が初めてだろう。
「…お昼?うん、空いてるけど……」
「…じゃあ、一緒に食わねェか?…これ返すのもその方が楽だしよ…」
…なんでそんな無愛想にしか言えねェんだよ、俺。
「……いいの?」
「…悪かったら誘ったりしねェ」
「…うんっじゃあ一緒に食べよっか」
高杉の言葉に可愛らしい笑みと声で答える菜子。高杉が心の中でガッツポーズを決めていたことなど勿論知るはずもなかったのだった。
若草色(わかくさいろ)に染まる
(自分らしさなんて、)
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