マリーゴールドな照れ隠し



昼食の時間。高杉と菜子は屋上にいた。





「…なんか、照れくさいね。こんな風にご飯食べるの初めてだから」





少し照れくさそうに笑う菜子の姿は可愛らしい。高杉のツボにはクリーンヒットである。





「…お弁当…どう、かな?」


「……別に、いいんじゃねェのか」




…いいんじゃない、よすぎるんだ。なんだこれ。こんな飯食ったのは何年ぶりだろうか。


冷凍食品は一切ない。全て手作りである。
黄色い卵焼きは綺麗に巻かれていて、ダシもきいてて美味しい。ホウレンソウのおひたしも味付けは程よく、食感もいい。
味ももちろん、色遣いも綺麗である。




「…そっか、よかった!」




…なんでこんな無愛想な俺にもったいないぐらいニコニコ笑顔で返してくれるんだ?





「ふふ…卵、上手く焼けてる」





美味しそうに口を運ぶ菜子の姿に高杉は幸せを感じる。ずっとこのままでいてほしい。





「……うまかった」


「…!」





高杉に渡したお弁当箱の中身は何一つ残っていない。綺麗になくなっていた。





「…あ、ありがとう…!」


「…何が?」


「こんな綺麗に、食べ終わってくれて……」


「…礼を言うのは、こっちだろ」


「…けど、私、嬉しかったから」





正直、無口な高杉君はお弁当を食べているときも相変わらず無口で、彼の口に合っているのか不安だった。

だけど、こんなに綺麗に食べ終えてくれた…。ご飯粒一つ残さずに。

それがすごく嬉しくて、ほんの少し高杉君のことを知れた気がして…彼と近付けた気がしたんだ。





「…また、頼む」


「…!…うんっ」



単純かもしれないけど、これから毎日のお昼の時間が楽しみになった。





マリーゴールドな照れ隠し
(もっと上手に言葉を並べられたなら)








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