途切れた記憶

「…しっかりしろ、ラビ」


「…ロー…っごめ、なさ…」


「謝るくらいなら最初から命令に反するような真似すんじゃねぇ」





はぁはぁ、と荒い息遣いをしながらベッドに横たわっているラビの額に手を伸ばし、そっと撫でてやるロー。





「ご、めっ…なさ…い」


「もう喋るな」





謝罪の言葉ばかり繰り返すラビに半ば呆れながらも、彼女を寝付かせ、そっと部屋を出た。
ラビは、病気にかかっていた。…病気と言うより、毒に侵されていると言った方が正しい。
きっかけは、ハートの海賊団は無人のジャングル島へと辿り着いたことから始まる。





「わぁ…!すごい!見たことない花!!あ、あそこに綺麗な湖みーっけ!!」


「いちいちはしゃぐな、ラビ」


「だって、すごいんだもん!」





船から乗り出して島の様子を眺めているラビ。あっちを見たり、こっちを見たりと忙しそうにしている彼女だが、その表情はどこかウキウキとしているように見える。
そして同時に、ローは嫌な予感がした。




「…おいラビ、お前どこでも勝手に」


「ちょっと行ってきまーす!」




えいっ、と船から降り、一人島へと移るラビ。ローの言葉など一切聞いていない。





「てめぇ…ラビっ…!」


「だいじょぶ、だいじょぶっ!」





元気そうにローに向かって手を振り、島の奥へと駆けこんでいくラビ。あの馬鹿……とローは小さく呟くと、直ぐ様クルー達に船を停泊させるよう指示を送った。
一方、一人で島の奥へと進んでいくラビ。彼女の視界には人間の手を加えられていない、そのままの自然が広がっていた。






「…う〜…踊りたい……!」





綺麗な島の自然を見て、うずうずと体が疼き始めるラビ。





「ふふっ、踊っちゃえー!」





高めのヒールのある靴をその辺りに脱ぎ棄て、草原の上で裸足になるラビ。そして思いきり…ジャンプをし、続いて軽やかにステップを繰り返す。
単純なリズムではあるが、本人にしてみればラビにとってこのひとときは幸せの絶頂にいると言ってもいい。
そんな、ときだった。




「…っきゃ…!?」





何かが、ラビの白い足に絡まった。




「〜っもう、何いったい…!?…きゃ、きゃあああっ!!」






自分の足に絡まったものを見てラビは顔色悪くし、叫んだ。何故ならその絡まってきたものは真っ白な長い蛇だったからだ。






「やっやっ離れてよぉ…!」






シャー…と舌を出し、威嚇する蛇にラビは半泣きで離れるよう抵抗する。足をバタつかせ、足から離れさせようとした瞬間だった。





「いたいっ!!…やだ、やだ…っ」





カプ…と蛇の尖った牙がラビの白い太ももへと咬み付いた。少しではあるが出血もしている。





「ロー…みんな…!助けて…!!」




と、助けを求めたそのときだった。




「ROOM」





聞き慣れた声が、耳に届き、辺りは丸いサークルに囲まれた。





「シャンブルズ」


「…っろー…」


「何蛇相手に苦戦してんだよ、ラビ」





ローの技で居場所は蛇から離れ、ローの元へと来た。ちなみにラビと入れ替わったのはペンギンで、今蛇退治を没頭している。





「船長命令を聞かないからこんな目に遭うんだ」


「だ、だって……っいた…!」





ローに言い返そうとしたラビだが、それは出来ずに終わる。先程蛇に咬まれたところが疼きだしたからだ。




「お前、咬まれたのか?」


「…ちょ、ちょっとだけ…」


「馬鹿!なんでそれを早く言わない!!…あの蛇は毒を持ってんだぞ…」


「そ、んなこと言われたって……っきゃ!?」





次の瞬間、ローに両足を掴まれ、彼の肩へと担がれた。





「や、恥ずかしいよっロー!!」


「勘違いすんな、毒を吸い取るだけだ…暴れんなよ」


「〜っ!?」





咬まれたところにローのか唇が当てられ、そこを吸われた。応急処置で毒を抜くためとは言え、この体勢はいくら何でも恥ずかしい。





「や、やめてよ…もうだいじょぶだってばぁ…!!」


「少しの間も大人しくしてらんねェのか?」


「もうほんとにだいじょぶだってば…!!」


「…どこが大丈夫だ?見ろ、咬まれたところが熱を持ち始めてやがる…!」


「…っは、」


「チッ…毒がもう回り始まりやがったか……おいラビ、しっかり……──」





それ以降は、よく覚えてない。ローが私の名前を呼んで、そこから記憶が飛んだ。




途切れた記憶


(…っ…ろぅ〜……)
(…ほんと手の掛かる奴だ)(しっかりしろ、馬鹿)