彼の真意
「おい、ラビ」
「…只今留守でございまーす…」
「ふざけた真似すんじゃねェぞ」
ドア越しでもわかる。向こうにいるのがローで、機嫌は最高潮に悪いってことぐらい。けど、今ローの顔を見て話すだなんて…そんなことは出来そうもなかった。
「…キスの一つや二つでゴチャゴチャ騒いでんじゃねェよ」
「…っ!…キスの一つや二つって何さ…!!」
ローが溜息混じりで放ったその一言が、ラビの癇に障った。
「あァ?」
「……っそりゃ、ローは私と違ってモテるし…?女の子との経験も豊富だし…どうってことないかもしんないけど…!」
「…お前、何キレてる?」
「ローにはわかんないよっ!!」
私は、ローとは違う。恋なんて無縁なものだった。だからそんな…経験なんてないし、自分がそういうことするなんて考えたこともないし、想像もつかなかった。なのに、ローはそんな私と違って顔色変えず平然とキスをしてくる。……私がこんな戸惑って、あたふたしてるだなんて知らずに。
「…ローは、誰とでもいいんでしょ…?」
「…何がだ」
「……誰とだって、軽くキス…とかしちゃうんでしょ…!?」
「は?」
しばらくはドアの近くでローと話をしていたが…そんな気分じゃなくなり、自分のベッドへと横たわる。
「……私は、ローの周りにいた恋愛経験豊富で、綺麗で、美人な女の人達とは違うのっ……」
……自分でも、何が言いたいのかよくわからなくなった。頭の中がぐちゃぐちゃで…混乱気味で。だけど、不思議なことにローには私の言いたいことが伝わったらしい。
「…おい、今すぐここを開けろ」
「だからやだって……」
「じゃ、壊すまでだ」
「っ!?な、何を…!」
ローの放った一言に驚き、体を起こしてドアの方に目を向けた瞬間だった。バキッ…と音を立ててドアがローによって潰された。
「…なんてことするの!?ロー!!」
「うるせェ、お前がなかなかドアを開けねェからだろ?」
「だからって壊すこと……っわぁ!」
ローに反論しようと口開くラビであったが…そんな暇もなく、ローに押し倒され、再び体はベッドへと深く沈む。
「…な、何をっ…離して……!」
「こうでもしねェと、お前逃げるだろ?」
「…っ」
確かに、今すぐにでもここから逃げ出したいのは事実で……それを見透かしたローは私を離す気などさらさらなさそうだ。
「…お前にキスしたのが、そんなに悪いことか?」
「…ろ、ロー……っ」
ぐいぐいと追い詰められ、ラビとローの顔の距離は間近で、鼻と鼻とがもうくっつきそうなほどである。あまりの近さに顔を逸らすラビだが、一瞬で向き直され、目を逸らすことさえ許されなかった。
「したいからして何が悪い?」
「…そうやって、誰かれ構わずっ」
「お前だから、キスしたとは考えねェのか?」
「…えっ?」
ローのその一言が、私の動きを止めた。
「誰かれ構わずするかよ、んなこと。そんな尻軽女たちに興味ねェ」
「…ろーっ……?」
「お前だから、ラビだからした。それの何が悪い?」
「ちょっ…ロー…!?」
近づいてくるローの胸板を押し返すが、それ以上にローは攻めてくる。強引に顎を持たれ、また、深い口づけを落とされたのだった。溺れるようなその感覚に、逆らうことなど出来ずに。
彼の真意…お前が好きなんだよ、馬鹿
その一言が、さらに私の頬を赤く染めさせた。
(も、わかったから…っ)
(いいや、絶対まだわかってねェ)(つかやり足りねェ)
(は、離してェェ…っ!)