私の世界

歌や踊りの物語に出てくる恋い焦がれる女の子の気持ちなんて全くわからなかった。
『好きです、愛してます』…そんな言葉の重みがイマイチ理解できず、今まで旋律を奏でてた。






「え、まだキャプテンと恋人同士じゃなかったの?」





先日の、ローとの一件を船のキッチンでベポに相談してみたら有り得ない返答が返ってきた。





「違うよっ!何言い出すのさ、ベポ!?…私、びっくりしたんだから。ローにその、あんなこと言われて……」


「周りから見れば、気付かなかったラビにびっくりだよ」


「…えっ、そうなの…?」





ラビはそういうのに疎いから仕方ないよ、とベポに言われたけど…年頃の女の子が白くまにそう言われちゃうってどうなんだろうか…。





「そういうのは、私にはかけ離れた世界だったんだもん…ずっと歌うこととか、舞うことしか考えてこなかったから……」


「…ずっと?」


「うん、だってそれが…私の世界の全てだったもん」





そう話すラビの表情は柔らかく、楽しげである。





「けどさ、楽しかったことだけじゃないでしょ?」


「…そりゃ、そうだよー?どれだけ練習しても上手く踊れなかったり、声が伸びなかったりするといくら私でも嫌になるよ」


「じゃあ、どうして続けられたの?」


「だって、いつもローが………っ!」





ベポに質問され、答えていく内に一人の存在が私の中で大きくなっていった。





『また怪我か』




私が練習のし過ぎで足を痛めたときはテーピングして、楽にしてくれた。




『何凹んでんだよ…お前らしくねぇな』




私が上手くステップ踏めなくて落ち込んでたら、優しく頭を撫でてくれた。




『やれよ、お前自身が決めたことだろ』




私が現実から逃げ出そうしたとき、私の腕を掴んで、止めてくれた。




『…安心しろ、最後まで見ててやる』




私がいつも町で踊るとき、例え誰も足を止めて見てくれなくても…ずっと最後まで見守ってくれた。




『ラビ、来い』





私が立ち止まってしまったとき、私をここまで引っ張ってくれた。




いつも、私のすぐ隣にはローがいてくれた。だから私は今までやってこれた。
ローの存在無しでは、今の私の世界はなかった。私の世界の全ては、歌でも舞いでもなかった。
トラファルガー・ロー…ただ一人だったんだ。





「…そっか…そうだったんだ……私ってば、ほんとダメだな…」





くしゃ、と自分の髪を掴み、情けなく眉を下げるラビ。自分のことでいっぱいいっぱいで、周りのことなんて見えていない。勝手な人間だよ、本当に……





「…ベポ、私わかった気がする!」


「アイアイ、それはよかった」





ベポにそう告げると、ベポはどこか嬉しそうだった。…ううん、ベポだけじゃない、私も嬉しい。
この想いを私らしくローに伝えたい。その一心で、ラビはドタバタと私室へ駆け込んだのだった。彼女は紙とペンを取り出し、机に向かい始めたのだった。





私の世界



(ベポ、よくやったな!これで俺達もキャプテンからとばっちり受けずに済むってやつだ!)
(アイアイ)


(…騒がしい奴らだな)