通じ合った想い

もう夜遅いというのにラビの部屋はまだ明るく灯されていた。それが気に掛かったローは、自然と彼女の部屋まで足を運んでいた。





「おいラビ」





ドア越しに声を掛けてみるも返答はない。…元来気は短い方ではないが、ラビに無視されると言うことが腹立たしいロー。
ちっ…と舌打ちを打つと、勝手にドアを開け、彼女の部屋へと足を踏み入れた。





「…寝てんのかよ」





すー…と静かに寝息を立てながら机に顔を伏せ、ペンを片手に握っているラビの姿にローは呆れてしまった。




「…バカか、お前。風邪引いたらまた治るまで踊れなくなるだろーが」





捻挫しただけでびーびー泣いていたのに、こういうところは抜けているのだから仕方がない。はぁ、と軽く溜め息を零し、彼女をベッドへと運ぼうとしたそのとき。



伏せているラビの下敷きになっている、一枚の紙切れがローの視界に入った。





「…なんだ、これ」





躊躇いなく、ローはその紙切れに目を通した。






気が付けば僕の世界の全ては君だった。
いつのまにか君の存在は
僕にはなくてはならない存在で
二人で過ごす時間は宝物だった。

挫けた僕の隣にはいつも君
僕より少し大きな手のひらで
僕の全てを受けとめてくれた

君のおかげで僕は前を向いて歩いていける

不器用だけど優しい君の力になりたいよ

君が悲しいときは僕が笑わせる
君が苦しいときは僕が守りたい
君が僕にしてくれたこと全部、君にしたいんだ

君が…────




「好きだから、か」




正直言えば、下手くそな詩だ。内容はまとまりがないし、感情ばかり書いてつまらない詩だ。

…だが、どうしてか。

こんなバカが書いた下手な詩すら、愛しく感じるなんて。





「…ひとの、気配…?……っ!?ろ、ロー!!どうしてここに…あぁっそれ見ちゃ駄目ぇ!!」





人がいる気配を感じたラビはゆっくりと目蓋を開け、そして意識が覚醒するとローが今している行為に冷や汗が出た。

返すよう促し奪い返そうとするが、ローはそんな彼女を簡単にねじ伏せた。





「うるせぇ、俺に命令すんな」


「かーえーしーてーっ!!」


「…何なんだよ、これ」




ペラ…とローの手にある一枚の紙。その中身をローに見られたことが恥ずかしいのか、ラビは顔を赤く染めた。






「……ちょっと、歌詞…つくってみたって言うか……」


「そんなことだと思ったがな。…下手くそ」


「〜っまだ作りかけなの…!だから見ちゃ嫌ぁあ!!」





もうラビは羞恥のあまり、瞳に涙を浮かべていた。


「……で?」


「え………」


「この歌詞の中の"君"って誰だよ」


「っ!」





意地悪い笑みを浮かべながらそう問いかけるロー。きっと彼自身はわかっててそう言っているんだ。……もうやだ、なんでこんな恥ずかしい思いしなきゃいけないんだよぅ…!!





「そ、それは……」


「言え」


「…う、その……」


「これは船長命令だ」





…それを言われたら、ラビはもう従うしかない。
おずおずと…ローの方を指差すラビ。彼女の顔はもうこれ以上ないくらい赤い。ぎゅう…と強く目を閉じていると、次の瞬間、温かい温もりに包まれた。





「な、なに…!?」


「遅ェよ、馬鹿」


「ば、ばか…!?」


「気づくのが、遅ェ」





ラビはローの胸に顔を埋めるかのような体制で、ローの吐息が彼女の耳をこそばゆく擦る。





「…気付くの遅くてごめん、なさい…?」


「少しは賢くなったみてェだな」






…どこまで私は馬鹿扱いされなきゃいけないんだろうか。そりゃ、医者のローからしたら馬鹿にしか見えないんろうけどさ…。だけどそんな皮肉めいたローの言葉も通り抜けてしまうくらい、彼の腕の中は心地よくて……再び眠気が襲ってきたのだった。





通じ合った想い



(…これで寝るとか、あり得ねェだろ…)(…馬鹿みてーに胸当たってんだよ)
(……ん、すーすー…)