抱擁と温もり
「すごいぞラビ!俺、感動したぞっ!」
「ありがとーチョッパーちゃんっ」
「お前すげー歌うめェのな!」
「そう、なのかな…?けど、私一つ思い出したことがあるよ!」
私は…歌が、音楽が大好きなんだってこと。
「…おいラビ」
「っ!」
ふと、背後から聞こえた…聞き慣れた声。面倒そうな、だけど私のことをする絶対に見捨てない優しい声。
「…ロー、キャプテンっ!!」
そう言って、声のした方へラビが駆け寄ろうとしたそのときだった。
「きゃうっ!?」
「…っ馬鹿!!」
石に躓き、ラビは派手に頭から転んでしまった。
「おい、大丈夫か?」
「…いったーい」
「…!…ラビ?」
「?なーに、ロー」
「お前、記憶が…」
「記憶…?」
…どうやら今転んだことを拍子に記憶を取り戻したようだった。
「ラビっどこか怪我とかしてないかっ!?誰か医者ぁぁ!…って俺だぁぁ!!」
「チョッパーちゃん…?」
「ひゃひゃひゃっまぁこの様子だと大丈夫そうだなっ!」
「ルフィ君」
ラビが転んだのを見て、慌てて駆け寄ってきてくれたルフィとチョッパー。だが当の本人は何があったのか未だ理解出来ておらず、目が点の状態である。
「…麦わら屋、うちのクルーが世話になったな」
「?おうっ!」
「こいつはうちに連れて帰る。ラビ、帰るぞ」
「はーいっ!それじゃまたねっ」
「またなー!」
ローに連れられながらもルフィたちに大きく手を振って別れるラビ。すっかり元の彼女に戻ったようだ。
「…ねー、ロー」
「なんだ」
「私ね、なんかここ数日の記憶がないって言うか…あやふやなんだけど…」
船へ帰る途中、ラビはちょこちょことローの後をついていきながらもそんな話をしたらローは急に足を止めた。
「ぶふっ!?…もう、急にとまらないでよぅ…鼻ぶつけちゃったじゃんかー」
いきなり止まったローの背中にぶつかってしまったようで、ラビの鼻は真っ赤になり、そこを押さえつつもローに文句を零している。そんな彼女の文句などほっといて、ローはラビの方に振り向き、じぃっと彼女を見始めた。
「なっなに…?」
「…ほんと、面倒くせー女だ」
「な、何さいきなり!失礼だよ!」
「いい体してんのにまだまだガキだしな」
「え、えっち!」
「歌うことと踊ることしか頭にねェ」
「うぅ…そりゃそう、だけど…!」
段々ローの言葉に反論出来なくなっていくラビ。彼にかなわないことはとっくの昔に承知済みだが、やはり悔しいものである。
「なのに何で俺ァこんな間抜け面に惚れちまってんだろうな」
「ま、間抜けって!………え?」
「これは流石の俺でもわからない難問だな」
「ろ、ロー…!」
「何だ」
「か、顔…っ」
「俺の顔に何か付いてるか?」
「〜っ違う!…近いのっ」
ジリジリと接近してきたローにたじたじになるラビ。必死に彼の胸板を押し、抵抗してみるが、そんなものは大したものではない。
「近付けてんだから当然だ」
「な…なんで?」
「…二度と、俺のこと忘れたなどと言わせないためだ」
「?わけわかんなっ…んー!?」
ラビのぷくっとした桃色の唇はローのそれにより塞がれた。いつもながら、その口付けは激しい。気付けばラビは先程まで叩いていたローの胸板に寄り掛かるかのように口付けを続けていた。
「ん、ん〜っ!!」
「ハッ、相変わらず下手なキスだ」
「…もっ文句言うくらいなら…っしないでよぅ…!」
「俺に命令するな」
「ローの、自己中!」
「今更だろ」
抱擁と温もり
(えっ私、記憶喪失だったの!?…そんな馬鹿な〜あははっ)
(…もういっぺん頭からぶん殴ってやろーか?)
…何だかんだでラビが元に戻って嬉しいロー。