本気の瞳

「敵襲だああっ!!」





そんな船員の声が船内に響き渡る。それと同時にその場にいた船員たちは立ち上がり、皆敵襲に対抗するため甲板の方に足を向ける。
それはもちろん、ローも例外ではなくて。





「…っロー!」





無言で甲板へと向かおうとする彼の後をラビは瞬時に追い掛けようとした。彼女の手にはしっかりと彼女の武器であるバトンを握られていた。





「ロー、私はローの近くで戦えば…」





…と、船長である彼に指示を尋ねたラビだったが





「ベポ」


「アイアイ?」


「ラビを俺の部屋に放り込んで閉じ込めておけ」


「なっ…!?」





次の瞬間、ラビはベポの肩に担がれていた。ベポはベポで方向転換し、船の奥…ローの部屋の方へと向かい出すではないか。ラビは慌てて口を開いた。





「ま、待ってよベポ!…〜っロー!なんで!?私もみんなと戦うってば!!」






段々と遠くなっていくローの背中へ言葉を投げ掛けることしかできない。しかし、ラビはやめなかった…彼の姿が見えなくなるまで。






「確かに私はローみたいに強くないけど…多少は戦えるよっ!なのに戦わせてくれないの!?」






遠くなってゆくローの背中に向かって叫ぶかのように自分の気持ちを訴えるラビだが、ローは何も言わずに、こちらに振り向くことすらしない。





「私だって、これでもハートの海賊団のクルーなんだよ!女でも戦うよ!怪我を負うことなんて怖くないよ…!…っみんなと一緒に戦えるってばぁっ!!」





どれだけ言葉を投げ掛けても、ローはやっぱり何も答えてなどくれず…そこから感じる寂しさから、私の視界は涙で歪んだ。






「…っな、んで…!」


「…ごめん、ラビ。だけどこれもキャプテンの命令だから……」





涙流すラビにベポはおどおどと戸惑うが、自分は自分で今から戦いに行かねばならなくて…彼女をローに言われたとおり、彼の部屋へと入れ、外からドアを塞いだのだった。一人、部屋の中でラビはベッドのシーツを纏い、涙を零した。
それから、どのくらい経ったのだろうか。ざわついていた船内も落ち着いてきた。…どうやら敵を追いやることが出来たのだろう。





「…おい」


「……………」





ベッドの上でシーツを纏いながらも蹲っているラビに、戦闘を終えたばかりのローが姿を現し、声を掛けた。…が、先程と違い、今度はラビが答えない。





「…そんなにバラバラにされてぇのか?」


「…っ!!」





しかし、ローの方が一枚上手で、たった一言でラビを起き上がらせてしまう。
ビクッ…と体を震わせ、俊敏に起き上がったラビの瞳には未だ薄らと涙が浮かんでいた。
だが、ラビにも意地があるようで…ローに背を向けているが。





「何をそんなに不貞腐れている?」


「……なんで?」


「ああ?」


「どうして、私にも戦わせてくれなかったの?」


「…そんなに殺りたかったのか?」


「〜っちがう!!」





ローの信じられない一言に怒りの感情を露にして大声を上げるラビ。まるでローを差別するかのように、冷たい瞳で彼を睨んだ。





「…っ確かに私は、ローやベポみたいに強くないよ…っ。歌ったり、踊ることにしか脳がない女だけど、でもみんなの手助けくら」


「そんなに死に急ぎたいか?」


「っ!」





ローの口から出た『死』の一言に、ラビは言葉を失った。


「お前みたいな甘っちょろい奴は一瞬で消されちまう。それが、これからの海だ」


「そ、そんなことっ…別に、怖くなんて」


「"ROOM"」


「っ!」





ラビに、ローが発動させたサークルに囲まれた。それと同時に彼女に恐怖心が襲い掛かった。




「や…ローっ…」


「これは船長命令だ」


「…っずるい、こんなやり方…っずるいよ、ロー!!」


「…お前に拒否権は、ない」





鞘からゆっくりと刀を抜くローの瞳は、本気だった。





「選べよ。今この場で俺にバラバラにされて死ぬか、大人しく俺の命令に従うか」


「やっ…やめ……」


「ラビ」






ローが刀を振り落とそうとしたそのとき、





「…〜っわ、わかったから…!ローの言うこと聞くから……だから、殺さないで……っ」





死に恐れ、泣きながらローに懇願するラビ。同時に彼女の周りを囲んでいたサークルは消え、ローは何も言わずにこの場を立ち去っていった。
緊張感が一気に抜けたラビはそのまま気を失ってしまったのだった。




本気の瞳




(もしあのとき、ローに従わなかったら…)(…私はあのまま殺されてしまっていた……)