不器用な守り方

それからと言うもの、ラビは一方的にローを避けた。いや、避けたなんてそんな生半可なものではない。
『拒絶』と言う言葉が正しいかもしれない。
起床就寝の時間は勿論のこと、食事の時間もローとずらしたり、と徹底的に彼を避けた。おかげでこの一週間、目すら合わせていない。
ラビはいつもベポやシャチやらと一緒にいて、彼らのために歌い、踊る。決して、自分のためではない。そんな彼女のあからさまな態度にローが不愉快を感じないわけがなかった。





「……っあ、!」


「…………」





ふと、船内の廊下でばったりと会ったラビとロー。ラビはと言うと、大きく目を開かせて驚きを隠せないでいた。そして次の瞬間、




「……っ!」


「……てめー…」







クルッと、方向を転換して来た道を戻ろうとするラビ。…要するにローを避けたわけだ。あからさますぎるその態度は更にローの機嫌を悪化させたことは、言うまでもない。







「っや、離してよ!」


「俺に命令すんじゃねぇ」


「いた、…痛い痛いっ!」





この場を逃げようとしたラビを一瞬で捕え、彼女の手首を跡が残ってしまうであろうと思えるほど強く握り、壁へと押さえ付けたロー。
その痛みにラビは顔を歪ませた。





「何故俺を避ける?」


「べ、つに避けてなんか」


「なら何故俺の目を見ない?」


「そ、れは……」


「答えろ」





言葉を詰まらせるラビにローはただただ迫った。そんな彼の様子にラビは顔色を曇らせる。





「…俺が、怖いか?」


「…っ」


「目を逸らすな」





彼女の顎を持ち上げ、無理矢理自分と視線を絡ませた。…ラビの瞳は薄らと涙を浮かべていた。





「今更俺が何者か実感したのか?」





ハートの海賊船、船長…トラファルガー・ロー。またの名を、死の外科医。賞金首2億ベリー。





「…その様子だと、図星のようだな」





自分に怯えるラビの姿など見ていたくなくて…ローは直ぐ様彼女を離し、その場を後にしようとしたそのときだった。





「〜っローの馬鹿ぁっ!!」





彼女の大声が背後から飛んできたのは。




「何さっ!いきなり乱暴なことしたかと思えば、サッと一人で勝手に冷めちゃってさ…!私に話聞いたんなら、ちゃんと最後まで聞いてよ!っ馬鹿馬鹿っ!!」


「…てめー、黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって…!!」


「だって…ローが悪いんじゃない!!」


「あぁ!?」


「だって、ローがっ……私のこと、邪魔者扱いしたから…っ」





最初は強い口調で話すラビだったが…段々とその口調は弱々しいものへと変わり、それと同時にうるうると涙を浮かばせ始めた。
しかし、ローからしてみれば彼女の言葉の意味がわからない。……いつ俺がラビを邪魔者扱いしたと言うんだ、と首を傾げていた。





「してねぇ」


「うそ…っしたじゃない…!この船のクルー…なのにっ私は戦わなくてもいいって……脅してまでっ……っわたしが、邪魔だから……」


「…それは違う」


「何が違うって言うの…っ!?……私、あのときほんとに怖かったんだから……っ」





ボロボロと零れ落ちる涙はラビの頬を伝って、床へと落ちた。




「ローが……っわたしのこと、邪魔だって……言うんじゃないかって……だから、私に対してあんな冷たい、」


「守りながら戦い抜くのは面倒なんだよ」


「……え、」





予想外のローの言葉に、ラビは瞳を何回もパチパチ、と瞬きを繰り返した。




「…守る?」



「…自分の船のクルーを守って何が悪い」


「あ、やっそうじゃなくて…!!」





ローの口から出てきた言葉に、ラビは慌てて話の詳細を聞こうとした。





「…私のこと、守ってくれて…たの?」


「………」





ローの背中にラビは問い掛けたが、彼は何も答えず、無言でこの場を立ち去っていった。…ただ、何となくではあるが彼の気持ちが伝わった気がする。





「心配、してくれたんだよね…?」





私のこと邪魔だと思って遠ざけたんじゃないんだよね?私の身を心配して…戦いから遠ざけたんだよね…?





「〜っ待ってよ、ロー!!」






今はもう見えなくなった彼の背中を追い掛けるため、ラビは後を追ったのだった。





不器用な守り方…わかりにくいよ、ばか…!




(あ、キャプテンとラビってばやっと仲直りしたんだ?)
(よかったーキャプテンの機嫌の悪さ、尋常じゃなかったもんな)