君の為に全て捨てる

出会ったころは、まさかこんなにも僕の中で琥珀の存在が大きくなるやなんて思ってもおらんかった。
彼女を手放さなければあかんときが来るって、わかっとったはずやのに…実際に手放してみれば、身が引き裂かれるんやないかと思うほど苦しかった。


せやけど、もう一度…彼女と共に過ごすためやからと、必死に耐えてたのに…肝心の彼女がいなくなってしまっては元も子もないやないの。







「……琥珀」






僕の腕の中で眠る彼女は、冷たくなってしまった。






『ギンちゃんの手、冷たいよぉ』

『そーか?』

『琥珀がぎゅーってして、あっためてあげるよ。そしたらギンちゃん、冷たくないよ?』

『あらほんまや。琥珀の手はあったかいんやね』

『えへへ』





僕の手を、その小さな手で握り返してほしい。そんな願いすら、もう叶わへん。






「……琥珀、一人で…怖かったやろ?先に一人逝かせてもうて、堪忍な…」






もう一度、琥珀に会うためやったら。






「すぐに僕も、琥珀のもとへ逝くさかい…」






ス…と自分の斬魄刀を取り出し、自分の腹へ刃先を向ける。
…なんも怖いことなんてあらへん。琥珀がいないこの世界で一人生きていく方が僕にとってはずっと怖いことや。






「もう、寂しい思いなんかさせへん」






ずっと、琥珀の傍におるよ。もう嫌というほど傍におるから。
せやから、僕がそっちに逝ったら…またその可愛い声で僕の名前を呼んでほしい。その小さな手で僕の手を握り返して、そのまん丸の大きい瞳で僕の姿を映してほしい。その赤い唇で、僕の唇をふさいでほしい。







『ギンちゃん』






琥珀、君は…僕のかけがえのない宝物やった。