悲しいくらいの境界線

ねぇ、ギンちゃん。
琥珀はやっぱり、ギンちゃんが大好きだよ。
きっと何をされてもギンちゃんのこと、嫌いになんてなれないよ。


ひとりぼっちだった琥珀の手を取ってくれたあのときから、琥珀の世界はギンちゃん中心なんだよ。








決戦の日。各隊長たちはそれぞれの破面たちに当たり、戦闘をしていた。
そんな中、乱菊はギンと対峙していた。





「…ギン!」

「…何やの、乱菊。そないボロボロの体で何しに来たん?」

「……アンタに話があるの」




乱菊がキッと鋭い目つきでギンを睨みつけるも、ギンは顔色一つ変えることもなく、こちらを見ている。…いつからだろう、この男が何を考えているのかわからなくなったのは。





「話て?」

「…琥珀のことよ。…ギン、アンタ…どうして琥珀を傷つけるような真似したの?」





乱菊の瞳には怒りの感情と悲しみの感情が混じり合っていた。だけど、ギンから目を反らすことなく、問い続けた。





「あの子は!!…琥珀は、ギンのことが大好きで…口を開けば、ギンちゃんギンちゃんってアンタのことばっかり。…私がギン以上に可愛がったとしても、琥珀にはギンしかいないのよ。……裏切られた今でもね!!」

「……」

「なのにアンタは!純粋無垢な琥珀を容赦なく傷つけた!!どうしてよ!?琥珀が、今どんな思いでっ……」





ご飯を食べるよう訴えても、受け付けることなく、ただただギンの名前を呼ぶ。あの子の頭の中にはギンしかいない。

あんなにも、琥珀に思われながらも、裏切ったのは何故?傷つけたのは何故?あの子が一体何をしたって言うの?





「話は、それで終いなん?」

「なっ…」

「僕が琥珀を拾ったんは、ただの気まぐれや。それ以外何もあらへん。ただただつまらんかったさかい、暇つぶしや」

「ギンっ、アンタ!!」

「…僕からの話は、これで終いさかい……そろそろ乱菊にも黙ってもらおか」

「…っ!!」





次の瞬間、乱菊は瞼を閉じ、気絶した。…息の根までは止めへんかった。


乱菊の訴えてきた一言一言が、僕の胸を締め付けた。





『ギンちゃんっ』

『んー?…どないしたん、琥珀』

『あのねー……だいすきっ!』




そう告げる琥珀はどこか照れくさそうに頬を赤く染めながら、僕の羽織をそっと握り締めていた。可愛らしい声で僕に好きだと告げるその可愛らしい唇を、僕は自分のもので塞いだ。

……これが、一時の幸せであることを噛み締めながら。





「……ほんまに、暇つぶしで終わっとたらどれだけ楽やったんやろな…」





ポツリと呟いた一言は、風音によって掻き消された。