この手は、いつか君に届くハズ
少女が戦場へ赴いたことを、誰も気付かなかった。
「…ギンちゃんの霊圧…」
まだまだ遠いけれど、間違えることのないギンの霊圧を感じて、ほんの少し笑みを浮かべた。
ギンちゃん、大好きなギンちゃん。もう少しでギンちゃんに会える。
ギンちゃんはもう琥珀のことなんて嫌いになっちゃったかもしれない。…だけどそれでも、琥珀はギンちゃんのことが大好きだから。
ちゃんとその想いを伝えたい。
ちゃんといい子にするから、ギンちゃんの言うこと何でも聞くから…ギンちゃんの傍にいたいって伝えたい。
一途なギンへの想いを抱えて、琥珀は戦場を駆けた。
「…?」
微かに感じ霊圧に違和感を覚えた。何故、彼女の霊圧がここにある?ここにいるはずがない。きっと、何かの間違いに違いない。……あまりにも、会いたすぎるあまり感じたように思えただけ。
……琥珀がここにいるはずが、ないんやから。
「……ただいま戻りました、藍染隊長」
「…戻ったか。彼女はどうした?」
「殺しました」
平然と顔色一つ変えずに言い切ると、藍染は確かに乱菊の霊圧が消えていることを確認したようだ。
「…確かに、彼女の霊圧は消えている。…驚いたな、君は彼女にほんの少しでも情があると思っていたが」
「…情ですか?あらしませんよ、そないなもの。前にも言うたやないですか」
…ほんの少しでも情を見せれば、こちらの負け。
乱菊も……琥珀も守られへんから、僕は非情になる道を選んだんや。
「僕は蛇や。肌は冷やい、心はない。舌先で獲物捜して追い回って…気に入った奴は丸呑みする。そういう生き物や」
琥珀、もう少しや。もう少しやから、大人しゅう待っとって。
そっと藍染の隙を見て、神鎗を放った。
「…ギ、ン…なにを…」
神鎗の刃が藍染の胸を貫いた。
「鏡花水月の能力から逃れる唯一の方法は完全催眠の発動前から刀に触れておくこと。…その一言を聞き出すのに何十年かかったことやら…」
その間もずっと、僕は琥珀を欺くように振舞い続けてきた。
可愛い琥珀を騙すような真似をして、いずれ彼女がどれだけ悲しむかを想像したら胸がどれだけ苦しかったことか。
「死せ、神殺鎗」
その何十年ももがき続けた苦しみを、味わえ藍染惣右介。