所有の証、紅いキスマーク
晋助がそう告げ終わると……彼の手が菜子の着ている着物へと手を伸ばす。その行動に、菜子は顔色を変える。
「…やめて、晋助!!」
菜子が声を上げたときにはもう遅かった。晋助は強引に菜子の着物を乱し、彼女の真っ白の綺麗な肌が着物から覗けて露になる。
そして晋助は、菜子の首筋に顔を埋めるとちくり、と微かな痛みを与えていく。…そこには紅い痣が出来ていて、晋助が付けたキスマークだということはすぐに理解した。その行為を止める素振りなど一切見せず、何個も何個もキスマークを菜子の肌あちこちに付けていく。
それに、菜子は必死に抵抗した。
「やっ…めて!そんなとこ……っ」
「安心しろ。こんなところでオメーを犯したりなんぞしねェよ。今は時間がねぇしな」
晋助は菜子の抵抗の言葉など聞き入れず、一つ、また一つとキスマークを付け続ける。それに菜子は敏感に反応をし、体を揺らした。
「……が、忘れるんじゃねェ。オメーは一生俺のもんだ。オメーは俺以外の野郎のことなんざ考えんじゃねェ」
「なっ!…何言って………私、万斉に言ったはずよ…!?…私、は…もう晋助のところには……」
『戻らない』と。そう晋助に告げろと確かに万斉に言伝を頼んだ。…なのになぜ、そのようなことを私に告げるのだ。
「んなこたァ、知ったこっちゃねェな」
「…晋、助……!」
「今はせいぜい銀時のところで甘えてらァ。……が、いいか?よく頭ん中に叩きこんどけ」
晋助はふと顔を上げると、菜子の耳元に口を運ぶ。
「オメーの居場所は俺のところしかあるめぇよ……菜子……」
「しんす…っ…け……!!」
生理的にか、感情的にか……どちらからかわからないけれど菜子の頬を一粒の雫が零れ落ちる。その言葉が…彼女の胸奥まで沁み渡っていく。晋助によって紡げられた言葉に、どこか喜びを感じる自分がいる。
「っ…晋助…私…!」
「…俺以外の奴のモノに、なんな」
そう告げる晋助の瞳は、なんだから哀しげで。菜子は胸が締め付けられるような感覚に襲われる。そして、そんな彼がまた愛しく感じた。
しばらくそのまま晋助からの愛撫をされるがままで、菜子の身体中にキスマークを付けられていく。
「……次、俺がオメーの前に現れたときには……そのときには…………」
『何が何でも、オメーを連れていく』耳元で囁やかれた言葉にドキ、と胸が高鳴る。
「覚悟しとけよ?菜子……」
それだけ告げると、晋助は先程とは違う、触れるだけの口付けをしてきた。不器用な、彼なりの優しいキスだった。
「……菜子……」
さっきまでとは違う優しい口調で、私の名前を呼ぶ晋助。彼の手のひらが優しく私の頬を撫でる。
「し…っすけ……」
晋助の手のひらが頬から離れると、彼は菜子を一人この場に置いて、背を向け来た道を戻っていく。どんどん二人の間に距離が生まれていく。遠くなっていく彼の晋助の背中が涙で滲んで見えなくなっていく。
(ねぇ……どうして、どうして、そんなに優しくしてくれるの……?)
「…っ何するのよー……馬鹿ぁ…っ」
(もう、お前なんか知るかって……お前のことなんか忘れてやるって……そう突き放してくれて構わないのに…なのに どうして?どうして、そんな………優しく名前を呼んでくれるの?優しく頬を撫でてくれるの?優しく……口付けてくれるの?)
肩を震わせて、菜子は声を押し殺すかのように涙を流した。涙を止めようと、拭っても拭っても………涙は止まるどころかどんどん溢れてくる。
そして、涙と同時に晋助への想いがどっ、と押し寄せてきた。
「っ…こんなの、隠せないじゃない………」
身体中に付けられたキスマークも、忘れようと置き去りにしたはずのこの想いのことも。
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