余計なことは言っちゃ駄目

ぶっちゃけてしまえば……こんな国、世の中……どうなろうと知ったこっちゃない。先生をこの世から、私たちから奪ってしまったこんな世界に意味なんてないんだから。
…ただ、もうこれ以上大切なものを失いたくない……ただそれだけなの。私の想いは。






「…てめぇ高杉……菜子が毎日誰のこと想って生きてんのかわかってんのか!?」





流れる血をそのままに、かつての仲間に訴えかける銀時。彼の脳裏に思い浮かぶのは…たまに寂しげな笑顔を浮かべる菜子の姿。





「てめぇみたいなワケわかんねー野郎をいつもいつも気に留めている菜子の気持ちを察することは、てめぇには出来ねぇのかよ!?」


「フ……銀時ぃ…何吐かしてやがる。俺ァ全てわかってるつもりだぜ?」





菜子の気持ちも、菜子の優しさも、菜子の傷も…彼女の全てを。






「だったらなんで…っ!!」


「アイツの苦しみや憎しみは俺が抱えてやらァ……俺が、唯一心許してる奴は、アイツしかいねぇからなァ……」





ふと、銀時の背後の人の気配が消えた。直ぐ様振り向くもののやはり誰もいない。風のように、高杉は姿を暗ました。











「っ晋助ぇ!!どこにいるの…!?」





一方で……菜子はただただ想い人の姿を捜し回っていた。逃げゆく人々にぶつがりながらも、草履で足が痛くなっても…声を上げて、辺りを見渡して、ただただ捜した。





「いるんでしょっ……?返事してよ……っ晋助ぇ!!」





……が、どれだけ捜し回っても、祭りの騒乱が落ち着いても、晋助の姿を見つけだすことは出来なかった。
…結局、祭りはあの騒乱で中止。その原因である平賀は指名手配犯となり、今でも町中を逃げ回っているそうだ。






「銀ちゃん、手…大丈夫?」


「なぁに、こんなのただのかすり傷に過ぎねぇよ!」





万事屋で銀時の怪我した手のひらに、器用に包帯を巻いていく菜子。あの祭りで軽く怪我しただけだから、と笑いながら言う銀ちゃんに私はそれ以上とやかく聞かなかった。そして、晋助に会ったことも……私は言わなかった。






「真撰組のみんなも大変みたい。平賀さんや攘夷志士たちを捕らえようと必死になって捜しているの」


「ハッ……幕府の犬も大変だなァ」






今でも、あの夜は夢だったんじゃないかって思う。晋助に会ったあの祭りの夜。あの短い一時しか彼には会わなかったから。



(……身体中に付けられたキスマークを見るたびに夢ではなかったことを思い知らされるんだけどね)




「さてと、私はそろそろ屯所に行かなきゃ。今日は真撰組のみんなと夕食一緒にするからここには来ないからね」


「えぇ〜…あんなむっさいゴリラとかくっさいマヨラーとかと飯一緒に食う必要なんてねぇだろーよ。今日は銀さんと一緒に………」


「だーめっ!毎日銀ちゃんたちとご飯一緒にしてるんだからたまには真撰組のみんなとご一緒しなきゃ!神楽ちゃんたちにもよろしく、それじゃあね」


「…おーじゃ、また明日な」


「うんっ!」





ガラガラ…と扉を閉め、菜子は万事屋を後にした。






「おはようございまーす!」


「おぉ、菜子!遅かったなァ〜」




まず最初に会ったのが局長、近藤さん。





「銀ちゃんのところに寄って来たらいつもより少し遅くなっちゃいました」


「そーかそーか。いや〜ホント万事屋と菜子は仲がいいんだな〜」


「銀ちゃんとは昔からの仲ですからね!あ、それじゃあ私はこれで……」


「おぉ、今日もよろしくなァ!俺は今からお妙さんのボディーガードして来るよ!」


「は、ハハ………」


(……ボディーガードじゃなくてストーキングの間違いじゃ………)


「…まぁ、いいかな…さて、私も女中の仕事に………」




入ろうとしたそのとき、菜子の視界にあるものが入ってきた。……それは、





『えいっやぁ、ハッ!!』


『とりゃああ!!』




朝稽古に取り組む隊士たちの姿だった。まだ朝だと言うのに、力一杯剣を振るう姿は見ていて気持ちがいいものだ。





「……懐かしいなぁ…」




昔は私も、ああやって稽古していたんだもんなぁ……と、遠い昔を思い出した。






「……あれ…?」




ふと、菜子はある隊士の様子に目を細めた。剣の振るいもまぁ、悪くはない。が、無駄な動きもあり、第一剣の扱い方が彼の身体には合っていない気がする。





「……ねぇ、貴方…!」


『え、はい!?僕、ですか………?』


「そう、貴方!…ねぇ、私からのアドバイスって言うのも変なのかもしれないんだけど………貴方の体付きから考えて、今の剣の扱いはよくないと思うわ」


『…はぁ』


「だから、貴方の場合だと剣はこう持って……振りはこう、した方が動きやすいんじゃないかしら?」


『………あ、ホントだ』





つい見ていられなくて、自分の今までの剣の道から隊士に適確なアドバイスを送る菜子。隊士も最初はなんで女なんかに……と不満げそうだったが、実際に菜子に言われた通り剣を振ってみると今までのより良くなっているのが自分でもわかった。






「へェ〜…随分剣術に詳しいようですねィ、菜子」


「っわぁ?!そ、総悟……っ」




ふと背後から聞き覚えある声が聞こえたので振り向いてみると、なんとそこには総悟の姿が。





「なんでィ、俺ァてっきり最初、菜子を"無理矢理"にでも隊士にさせよーとしたときに嫌がるから剣使えねェんかと思っていやしたが…俺の勘違いかィ」


(な、なんか今変なところを強調去れた気がするんですけど……)


「な、何言ってるのさ!第一私、剣なんて扱える内に入らないよ…っ!」


『え、けど今俺への適確なアドバイスは長年剣使ってねぇとわからないもんっすよ!!んな貶さなくても!!』


(ちょっとー!!変に言わないでよ君っ!!ますます私が怪しくなるじゃない!!)


「っ気のせいよ、さて、仕事仕事〜」





…とりあえず、ワザとらしいとは自分自身思いながらも今のこの場を逃げ出した菜子なのでした。





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