善は急げ
あの後、屯所に向かうと………やはり想像通りだった。
「……はぁ〜……ど〜しよ、また真撰組の評判ガタ落ちだって……」
「チッ…総悟の野郎……あれほど街中でバズーカをブッ放つなって言ってんのに………」
頭を抱え、ため息ばかりつく真撰組局長と煙草をどんどん吸っていく副長の姿があった。
「こ、こんにちは〜…!」
菜子がなるべく明るめに挨拶をしてみる……が、二人から返って来たのは小さなため息。まぁそれも仕方がないだろう。部下の後始末は上司が取る……と言うわけで自然と二人が始末書を書かされたりするのだから。
(…けど、落ち込んだままでいるのもよくないし……!)
「あの〜お茶でも淹れたので、どうぞ」
「「…………」」
(……確かに、前に見た始末書の量……凄かったもんなぁ…小学校の作文なんか非でもないもん。二人とも仕事終わったばっかなのに夜遅くまで書いていたっけ……)
なんてことを考えながら二人の前にお茶を置いた……そのときだった。
「テメーこのゴリラぁぁぁ!!」
「ぎゃーー!!とっつぁん!?」
バキィッと襖を蹴り上げて登場したのが、松平のとっつぁん。
(……あーあ、この前襖の障子替えたばっかだったのに……)
「また総悟がやらかしてくれたようだなぁ〜…おかげでおじさん、署で居場所ねぇよ!どうしてくれんだぁ!!」
「お、落ち着けってとっつぁん!!」
「ま、松平様!落ち着いてください!!」
「……ん?菜子、"松平様"なんて堅苦しい呼び方する必要なんてねぇぞ?"パ〜パ"と呼び……」
「寝言は夢の中だけでお願いします」
松平の言葉をさらっと笑顔で打ち消す菜子。……と、そのとき。松平のとっつぁんの瞳がキラリと輝きを見せた。
「……そうだ、近藤……オメー菜子を使って真撰組のイメージアップしろぃ!」
「え、菜子?」
「わ、私!?」
突発的な松平の言葉にその場にいた近藤、トシ、菜子は瞳を丸めるばかり。
「……それは具体的にどういう意味だよ?」
「なぁ〜に、菜子みたいなべっぴんさんが真撰組の隊員等と仲いいとわかりゃ〜街の連中もちょっとは真撰組の見る目も変わるだろ〜ぃ」
「ほぉ…それはそうかもしれんな……」
とっつぁんの発案に納得する近藤。
(……って!待ってよ!!)
「な、なんで私なんですか!?」
「だ〜から、言っただろ〜?叔父さんのタイプだからだよ」
「それ絶対今言ってなかったって!!」
「や、けど案外それ使えるんじゃねぇの?それこそ一日真撰組隊士として活動してもらえば仲間にこういう奴がいるんだって街の住人に好印象与えられるしな」
「一日隊士か………いいな、それ!」
(待ってって!!)
「わ、私に拒否権はないの!?」
「お願いだよ、菜子。パパ一生のお願いだって」
「や、松平様、無理です!それに貴方は私のパパじゃないです!」
「これも俺達のためなんだ!」
「こ、近藤さんたちのためって言われても……」
「なぁに、菜子は俺等と一緒に街の見回りする程度で構わねぇよ」
「と、トシまで……!」
(…うう…1対3って絶対不利だって。私、推しに弱いタイプだし……)
「頼む!」
「お願いだよ菜子!!」
「俺からも頼むぜ…」
(………うぅ………)
「…ホントに、見回りしかしませんからね」
「「「よっし!!」」」
(……はぁ〜……私ってなんて弱いんだろ…)
自分の性格に嫌気がさし、小さくため息を零した。
「じゃー早速制服合わせでもやろーかなっ!」
「えっ、今!?」
「善は急げって言うだろ?いや〜それにしてもこういうときの為に女性専用の隊服を作っておいて正解だったな、トシ!」
「あぁ、全くだ」
「じょ、女性専用の隊服って何ー!?何それ!?いつのまにそんなもの用意してたの!?」
「そりゃー……アレだ。万が一ってこともあるからなァ?」
「いや〜おじさん嬉しいよ〜愛娘と同じ職に就くことになるなんてよ〜」
(……絶対前々から企んでいたな。この様子だと絶対みんなグルだったんだ)
「……一日、だけですからね」
一度引き受けると言ってしまった以上、仕方ないことなのだろうが、菜子からすればホントおかしな話だった。数年前まで鬼兵隊の一人で、真撰組の大敵だったって言うのに……今は真撰組のみんなとこんなに馴染んじゃっているという事実に、苦笑するしかなかった。
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