コスプレではありません!
「…あ、あのー……やっぱ見せなきゃ駄目……?」
「「「「当然」」」」
襖から顔を覗かせ、皆に声を掛ける菜子。
「……恥ずかしいんだけど、この格好……」
この格好というのはもちろん真撰組の隊士の女性隊服。菜子からしたらコスプレをしている気分で恥ずかしい。ちなみに襖の向こうにいるのは松平のとっつぁん、近藤、トシ、総悟の四人である。……その四人以外の気配も感じるけれど。
「早く出てこねェと今晩辺り襲いに行き……」
「わっ、わかったってばぁ…!」
総悟の言葉に危機感を感じたのでおそるおそる皆に姿を現す。
(あーもー恥ずかしいっ…ほら、みんなキョトンとした顔してるし………)
「……あの、やっぱ着替え直して………」
「さすがパパの娘だね〜なんでも似合うなぁ〜ゴリラ」
「確かによく似合う……ってとっつぁん、今ゴリラって言わなかった!?ねぇ!?」
「……フン、まぁ、似合ってんじゃねぇの?」
「あ〜やだやだ、かっこつけちゃってまさァ、土方コノヤロー」
「てめぇ総悟!やる気か!?」
「上等でさァ!!」
「……ちょっ待って、話進まないからっ!」
「てゆーか近藤さん、なんでミニスカじゃねェんです?その方が色々とやりやすくて……」
「総悟、てめぇは一体何をする気だぁ!?」
「何って…んなもんアレしかねェさァ」
「ちょ、身の危険感じるんだけど!物凄く危険感じるんだけどー!!」
総悟ってば、ほんとドSだから何をするかわかったもんじゃないんだもん!!
「あ〜確かに菜子ちゃんにはミニスカの方が似合うかもね〜だけどおじさん色々と心配症だから、ズボンの方がパパも安心するよぅ〜」
「は、はぁ?」
「とっつぁんも悪ノリ……」
「うるせぇ!このゴリラ!!娘の心配して何が悪ぃ!?テメーの眉間に弾ブチ込まれたいかァ!?あぁん?」
「ひっ、ひぃぃぃ!!」
「わ、松平様っ!危ないですって!!」
この後、屯所から数発の銃声が鳴り響いたことは言うまでもないだろう。
「じゃ、そろそろ見回りに行って来るか…」
「菜子も俺達に付いて来るんだぞ?」
「はい」
…と言うことでようやく見回りを開始した。
街の中は至って何事もなく、安全な様子。……ただ、街の人々の視線が集中してきて肩身が狭い。
「…やっぱり目立つのかな…一日だけとは言え、女隊士だなんて」
「まぁ物珍しいんだろ、街の住人も。そのうち見慣れんだろ」
隣にいるトシは煙草を口に含んで吸っている。
「…そういうものかなぁ?」
「そういうもんだよ」
トシにそうハッキリと言われるとそう思えてくるのはなぜだろう。…不思議だな。……と、そのときだった。
「副長ーっ!大変ですーっ!!」
「なんだよ、山崎!」
山崎が大急ぎでこちらにやって来た。彼の浮かべる表情からだと、いい話ではなさそうだ。
「住宅地で火災が発生したんすよ!!」
「あぁ?火災だと?」
「っ、!」
山崎の言葉に一番に反応したのは隊士たちではなく、菜子だった。
「んなもん火消しがどうにかするもんじゃねェか」
「それが火消しの人たちは渋滞に巻き込まれててなかなか来れなくて……中にはまだ子供が……!」
「何っ!?」
このまま火消しを待っていたら、まだ体力ない子供はへたばって死んでしまうだろう。
……時間の問題だった。
「ちっ、仕方ねぇ……おい山崎今からそこに……」
「その火事の場所はどこ!?」
トシの声を遮って菜子が大声で問う。
「えっ、あぁ…あっちの三丁目の……」
「わかった!」
「っお、おい……菜子!!」
皆の静止の声を耳に入れず、菜子はただひたすら火災の起きている現場へと走った。自分の、幼いときに起きた火事を思い出しながら…。
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