強い抱擁に、奴の言葉

本日の屯所での仕事も無事済み、万屋へと向かったらちょうど風呂上がりの銀ちゃんの姿があった。





「あ、銀ちゃんお風呂入ったところだった?」


「…あ〜あ、やっちゃったよ〜…俺の馬鹿…!くそっ!」




菜子を目に入れた途端、銀ちゃんはため息をつき、頭を抱えだした。いきなりそんな態度を取られれば誰だってうろたえるもので…それは菜子も同じだった。慌てて銀時にもとへと駆け寄る。





「ぎ、銀ちゃん…一体何を、やっちゃったの…?」


「後少し菜子を待ってりゃ、一緒に風呂入れたのによ〜」


「っな、バカ!!」





何を言いだすかと思えば、またもや下らないことで…銀時の言葉に菜子は思わず顔を赤く染めた。





「え、何々〜?菜子も銀さんと風呂に入りたかったの〜?何なら銀さんもう一回風呂に入っても……」


「っ銀ちゃんの変態!そんなに何度もお風呂入ったらふやけちゃうんだから!」





ハハハ…と楽しげに笑う銀ちゃんの様子に、またからかわれたと恥ずかしさが増す。まぁ、そのことを振り払いながらも部屋の奥へと足を踏み入れた。





「……あれ?神楽ちゃん達は?」


「ん?あぁ、今日は新八んところに泊まるってよ」


「じゃあ今夜銀ちゃん一人ぼっちなんだ?」


「べっ、別に銀さん、寂しくなんかないもんね〜!銀さん、糖分さえあれば何とかなるから」




わかりやすい銀ちゃんの反応に、思わず笑みが零れてしまう菜子。ふと、あることに気付いた。





「銀ちゃん、髪まだ濡れているじゃない…!ちゃんと拭かないと風邪引くよ?」


「大丈夫大丈夫、銀さん毎日カルシウム摂ってるから。人生カルシウムさえ摂っていれば何とかなんだよ〜」


「何とかならないって!…大体カルシウムって、銀ちゃん苺牛乳しか飲まないじゃないっ!」


「銀さんと苺牛乳は切れない仲で繋がっているんですゥ!」


「もう、また変なこと言って……ほら、タオル!」





ソファーで呑気に座っている銀時の頭にタオルを被せる菜子。そして背後から銀時の髪をくしゃくしゃと拭いていく。





「わぁ…銀ちゃんの髪、ふわふわ〜!気持ちいい!」


「銀さんのは天然物のパーマだから。羨ましいだろ?コノヤロー」


「わたあめみたいっ可愛い〜」





クスクス笑いながら銀時の髪を丁寧に拭いていく菜子。それが心地いいのか、銀時も抵抗しない。





「…なぁ菜子〜銀さん、思ったんだけど〜」


「ん?なぁに?」


「まるで新婚みたいじゃね?」


「…何が?」


「俺等に決まってんだろー菜子が奥さんで、俺が旦那さん……あーいいなぁ、言っとくけど俺、束縛するから。友達の誘い断れなかったからって合コン行くの禁止だからな?」


「やーやーやーっ!話進み過ぎだから!」





銀時の突発的な発言に、直ぐ様突っ込んでしまう。





「大体銀ちゃんに私なんかもったいないよ?せっかくかっこいいんだからさ」





フフ、と笑いながら銀時の髪を拭き続けようとしたら……いきなりガシッと手首を取られてしまった。





「……ぎ、銀ちゃん……?」


「…菜子ーっ!!」


「ひゃっ…!?」





銀ちゃんが振り向いて来た、かと思えば抱きついてきた。銀ちゃんの逞しい体がすぐ目の前にあって、思わず顔を赤く染めてしまう。





「やっぱ銀さんには菜子と結野アナしかいねぇな〜」


「は、はい?」


「やば、銀さんあまりの嬉しさに涙が出てきた。いや、まじで」


「えぇ!?」


「……オメーの方が、もったいねぇよ」


「え………?」





意味のわからない銀時の言葉に、菜子はきょとん、とした表情を浮かべながら首を傾げた。





「あんなわけわかんねー野郎に銀さん、菜子ちゃんは渡したくないわ〜」


「っぎ、銀ちゃん……!?」





銀時の、抱き締めてくる力が強くなってきた。菜子は銀時がふざけてこんなことをしているのではないと気付いた。






「…っどしたの?銀ちゃん……?」


「ん〜…ついつい菜子が抱き心地いいから銀さん離したくなくなっちゃった〜」





口調はふざけ気味なのに力はぎゅうう…と抱き締めてくるのに変わりはない。





「離したく、なくなっちゃっただけだから。今日一緒に寝……」


「ば、バカっ!」





菜子をからかいながらも、銀時の脳裏には昨夜掛かってきた電話の内容しかなかった。





『銀時……アイツは、菜子は返してもらうからなァ……?』





アイツの言葉が、声が……頭から離れなかった。




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