踏んだり蹴ったり


「……なんだぁ、そういうことだったのね。びっくりしたぁ〜…」


「だから最初っから言ってたでしょーがっ!銀さんは菜子一筋だって!!」


「そんなのは別にいいからっ!!」





銀ちゃんが抱いていた赤ちゃん、何でも今朝方万屋のは家の前に捨てられていたみたいで仕方なく銀ちゃんが連れて帰った…らしい。




「けど、ホント銀ちゃんそっくりだね!可愛い…」


「え、それって俺も可愛いってこと?」


「正確には昔の銀ちゃん、だけどね。あーよしよし……」


「え、じゃあ今の俺は………?」





銀時の問いかけを軽くスルーし、赤ちゃんを抱き抱え、丁寧にあやす菜子。
そんな彼女の姿に銀時はニヤリと口元を上げた。





「あ、なんかこの光景いーわ…銀さん、グッと来た…」


「え?この光景って……」


「このがきんちょが菜子と銀さんの子だったら………」


「変な妄想は禁止!!」



(…もう、そんなことあり得る筈ないのに)



「……で、どうするの銀ちゃん」


「どうするもこうするも、仕方ねぇじゃねぇか!犬や猫みてぇに捨てとくわけにはいかねぇんだからよー」


「や、そうじゃなくて!……この子のご両親、捜さなくていいの?」


「捜すっつってもよ〜何も手がかりねぇのにどう捜せって言うんだよ」


「まぁ、それはそうだけどさ……けど早めに見つけないと、銀ちゃんが色々困るんじゃないの?」


「はぁ〜…こればっかりはどうしようもねぇっしょ……」




深いため息をつく銀ちゃんに思わず同情してしまう。何せこの人赤ちゃんはホント銀ちゃんにそっくりで、銀ちゃんの子と思うのが普通。




「腐ってるネ……」


「腐ってるよ……」





そのせいで神楽ちゃんは不潔、淫らだとか言って銀ちゃんを苛めるし、新八君は冷たい視線を送って来るし。





「けど、ホント可愛い……」




赤ちゃんを可愛い、の一言で片付けられるはずはないのはよくわかっているけれど……可愛いものは可愛い、仕方がないのだ。





「………だぁーっもううぜぇ!!行くぞ、菜子!!」


「へ、きゃあ!?」





とうとう二人の冷たい視線に耐えられなくなった銀時は、赤ん坊を抱っこする菜子の手を掴んで万事屋から飛び出した。





「……ちょっ、銀ちゃん……!腕痛いってば!そんな強く掴んだら……!」


「あ、わりーわりー!つい力んじまった…」




パッと離された腕には銀ちゃんに掴まれていた証拠として赤い跡がくっきりと残っていた。





「それに銀ちゃんってば早いんだもん……疲れちゃったよ(笑)ねぇ、君も」




抱えている赤ん坊に優しく話しかける菜子。それに赤ちゃんはわけがわからない様子で首を傾げているみたい。





「……あ、菜子と旦那じゃねェですかィ」


「おや、ちょーどいいところに総一郎君」


「旦那、総悟でさァ」





ふと、そんなとき……街を見回っている総悟とばったり会った。





「…つーわけで、後はテメー等警察に任せたぜ?」





銀ちゃんは総悟に赤ちゃんを抱かせて、自分は逃れようとしている。…ホント、呆れた。





「旦那ァ、そら困りますぜィ。俺等は迷子センターじゃねェんでさァ。…それに、旦那にくりそつじゃねェですかィ。旦那もやりますねィ、このっこの!」




総悟は銀ちゃんに言っているかのような素振りを見せるが、実はそうではなく、抱いている赤ん坊に向けてニヤニヤ笑いながら告げている。…絶対ワザとだ。




「ちょっと総悟くぅーん、悪い冗談は止めてくんないっ?シャレになんないから、まじで」


「もう総悟ってば悪ふざけも大概にしとかないと……」





総悟がやるとシャレにならない、本当に。





「旦那ァ、ここは腹括って責任持って………」


「…うおおおお!!」





銀ちゃんは総悟から赤ちゃんを取り上げると近くに流れる川に総悟をぶん投げた。





「きゃー!?総悟!?」




バッシャーン、と大きな水しぶきを立てて総悟は川へと飛んで行ってしまった。その後も色々あったが……銀時と菜子は宛てもなく、街中をブラついていた。





「それにしても、この子も寂しかっただろうにね……ご両親に置いてけぼりにされちゃって……」


「ったく、こっちはいい迷惑だぜ。おい、お前のとーちゃんとかはどこ行っちまったんだぁ?一回でっけぇ声で呼んでみろよ」


「だぁだーっ!!」





銀ちゃんに吊られるかのように赤ちゃんは大きな声を上げた。





「お、その調子だぞー」


「もう、銀ちゃんってば…」


「だぁだ、だぁだ……」





菜子はクスクス笑いながら足を進める。……が、それも出来なくなってしまった。





『ちょいと待ちな、お前さんたち』




気が付けば三人の周りには柄の悪そうな浪人がズラズラと囲んでいた。




「おいおい……いきなりお父さんたくさん出過ぎだろ…」


「……ホント、しかも人相の怖ーい人ばっか……ね」





銀時と菜子は二人背中を合わすように辺りを見渡す。





「無茶をするんじゃねぇぞ、菜子……!」


「……わかっているよ、銀ちゃん」




だけど命に変えてでも、この子は守る。



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