始まりの証
「エリザベス!!」





声を上げたときにはもう遅かった。派手な色の着物を羽織った男は刀を振り上げて、エリザベスを斬り落とした。





「っ、晋助…!なんてことを……!」




その男の後ろから、聞き覚えある声が……





「菜子さんっ!?」


「なんで菜子がここにいるアルか!?」


「……!新八君、神楽ちゃん……っ」





互いに、この場にいることに驚きを隠せないようだ。一方晋助はと言うと、菜子を自分の方に抱き寄せ、話を進める。




「おいおい……ここはいつから仮装パーティーになったんだ?ここはガキが来るようなとこじゃ……」


『ガキじゃない』




その言葉と同時に斬られたエリザベスの中から人影が飛び出してきた。



(この匂いは……!)



晋助と菜子はその人影の正体すぐ気付いた。飛び出してきた人影は、一気に晋助目がけて斬り掛かった。咄嗟に晋助は菜子を庇い、軽く胸元を斬られた。





「…晋助ェ!」





床に倒れこみ晋助の元へと菜子は駆け寄った。




「晋助様ァ!!」





近くにいたまた子も、晋助の元へと駆け寄る。…その間に、菜子はゆっくりと晋助を斬り掛かった人物に目をやる。





「…ヅラ、貴方…やっぱり生きてたのね……」





「ヅラじゃない、桂だ」






エリザベスから姿を現したのは、似蔵に髪を切られ、短くなったヅラ。





「桂さん!?貴方もどうしてここに……」


「蘇って来た。昔からの仲間に殺されたとあっては、死ぬに死に切れんものだ。なぁ、高杉?お前もそうだろう?」





倒れていた晋助を菜子が支え、ゆっくりと体を起こす。すると晋助はククク…と桂の言葉に笑った。





「未だ仲間だと思ってくれていたとは、ありがた迷惑な話だなァ?」




晋助は懐に手を入れ、自分の身を守ってくれた"あるもの"を取り出した。それに、菜子は瞳を丸めた。





「そ、れ……教科書、……」





幼い頃に、皆が松陽先生の私塾で使用していた教科書だった。……四人の始まりの証。





「…フッ、まだそんなものを持っていたか……お互い馬鹿らしい。」




そしてヅラも、同じように懐から教科書を取り出した。…お互い、それのおかげで命が助かったようだ。







「ククク…思い出は大切にするもんだなァ」


「ハッ……お前の無能な部下のおかげだ。余程興奮していたんだろうして、何も確認せずに髪だけ切り取って行った」


「ヅラも、無事だったのね……」





菜子はホッと安心して胸を下ろす。彼女は状況を大体読めたが、新八たちは少し混乱気味のようだ。





「…で、奴を仕向けた俺への復讐にでもしに来たって言うのか?」


「お前が命令したのか、奴の独断か、いまさらどうでもいい……ただ、お前の企みを黙って見過ごすわけには行かない」





桂がそう言った瞬間、船内が爆発した。真っ赤な炎が激しく燃える。





「貴様の野望、悪いが海に消えてもらおう……そして、菜子を返してもらう」


「…っ!ヅラ……」


「………菜子は、渡さねェぜ?」


「きゃっ……」





また晋助に、先程と同じように抱き寄せられる菜子。…いや、先程より強く抱き締められる。晋助と桂の睨みの間に、菜子は挟まれたのであった。


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