広がる青空の彼方に
銀ちゃんや、ヅラに背を向けて晋助の元へと向かったとき……涙が零れた。二人に対する、皆に対する罪悪感に襲われた。



(……けどね、それでも私は……)







「…っ晋、助」





海賊【春雨】の船の上。菜子は愛しい彼の名を呼ぶ。すると、彼はゆっくりとこちらに視線を向けてきた。





「…来い」





たった一言。彼の口から告げられた通りに菜子は足を進める。
彼の胸元が目の前になるぐらいまで近寄り、その後、彼に引き寄せられた。…伝わってくるのは、彼の温もりだった。






「…テメーは、離さねェ」


「……うん」





菜子の耳元で、菜子にしか聞こえない声量で。そう告げた晋助に、新たに愛しさが増す。…あぁ、これ以上晋助に溺れてどうするのだろうか。これ以上晋助依存性になってしまったらどうするのだろうか。



(…そんなことはわからなかったけれど、一つだけ、わかったことがあるよ。それはね……私達は一緒に歩んで行くんだ…今までと同じように、ずっとずっと離れないで……互いに互いを支え合って生きていくんだ)










「銀時ィ!」


「あぁ?」







剣を豪快に振り、敵を片付けていく銀時と桂。二人は戦乱の中で、同じ思いを胸にしていた。






「っ世の事というのは、なかなか思い通りにはいかぬものだな!…国どころか、友一人変えることも、愛した女子を変えることもままならんわ!」






大切な、仲間を……






「ヅラぁ、お前に友達や女子なんていたのか!?そいつァ勘違いだ!」


「斬り殺されたいか貴様!!」






銀時の飛び跳ねた話に思わず突っ込んでしまう桂。二人の話はまだ続く。





「銀時ィ!!」


「ああ!?」


「っ、お前は…変わってくれるなよ……お前を斬るのは、骨がいりそうだ。まっぴら御免こうむる」


「ヅラぁ、お前が変わったときは俺が真っ先に叩き斬ってやらァ」





剣先を、晋助の方へと向ける二人。その様子を晋助は菜子を抱き寄せながらも笑みを浮かべて、眺めていた。





「高杉ィィ!!」


「そーいうことだ!!」





二人の叫びが、辺りに響いた。







「俺達ゃ次会った時は仲間もクソも関係ねェ!!」


「「全力で…テメーをぶった斬る!!」」






少し遠いところだったが、二人の声はハッキリ響いてきた。




「「菜子!!」」


「ぎん、ちゃ……ヅラぁ…!」





…あぁ、泣かないでおこうと思ったのに。銀ちゃんとヅラに名前を呼ばれて、なんだか抑えていたものが全て溢れ出た気がする。





「っ、泣くな、菜子!お前は、お前らしくずっと笑ってろォ!!」


「…ヅラっ…!」


「高杉ィィ!テメー菜子泣かせるよーな真似したらぜってぇ許さねェからな!!即銀さんとこに嫁に来てもらうからなァ!!」





二人はそれだけを告げると、船から飛び降り、桂が備えていたパラシュートで脱出してしまった。






「…も、銀ちゃん…ってば、…」

「ハッ……アイツは、相変わらずふざけたことを吐かす奴だなァ…クク」





ギュッと晋助の抱き締めてくる力が強まった。…そして菜子は晋助の手に、自分の手を重ね置きながら去って行く二人を見つめた。






「……っありがとうォ!!」





こんな私と、一緒にいてくれてありがとう。優しくしてくれてありがとう。
"仲間"だと言ってくれてありがとう。
涙がまた一滴、零れ落ちた。









「用意周到なこって〜ルパンかお前は」


「ルパンじゃないヅラだ!あ、間違った桂だ!!…伊達に今まで真撰組の追跡を交わしてきたわけじゃない」





鬼兵隊の砲撃を気にせず、パラシュートで地上へと降りていく銀時と桂。ゆらりゆらりと揺れている。





「…しかし、まさか奴も、コイツもまだ持っていたとはな……」





懐を漁り、手にしたのは……似蔵に斬られる際、守ってくれた……幼き頃学んだ教本だった。





「…始まりはみんな、同じだった」





一緒に笑い、一緒に泣き、一緒に怒り………それが普通だったのに。それが日常だったのに。






「なのに、随分と遠くへ離れてしまったものだな」





鬼兵隊の船から離れていく様子は、まるで今の自分達を表しているようだと桂は思わず苦笑する。






「銀時…お前も覚えているか?コイツを……」


「……ああ、ラーメンこぼして捨てた」






銀時の言葉が、広がる青空の彼方へと消えていった。
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