彼女の正体
あれから、二、三日経過した。真撰組内の一部では先日の高杉一派と桂とのやり合いについて調べていた。




「ほォ、桂と高杉がねェ……」





とある定食屋でトシに山崎がその話についての報告をしていた。トシは感心したような声を上げながら、原形が何だかわからないが、丼にマヨネーズをひたすらぶっかけている。…それは実に気味悪いものだった。





「過激派だった桂の野郎も、今ではすっかり穏健派になり変わり、とかく暴走しがちな攘夷浪士たちを押さえるブレーキ役となっていると聞きます。バリバリの武闘派である高杉一派とぶつかり合うのは目に見えていました」





調査したことを、メモを見ながら報告をしていく山崎。話はさらに続く。





「両陣営とも被害は甚大な模様で、死者、行方不明者五十数名。あの人斬り似蔵も行方不明とか……これでしばらく奴らも動けないでしょう……」





その様子を目の当たりにしたわけではないが、壮絶なものだったのだと予測出来る。山崎は目を細めた。






「しかし解せねェ…岡田、河上等猛者を擁する高杉に比べ、桂はろくな手駒を持っていなかったはず。一体どうやって高杉達と互角張り合ったってんだ?」





トシの疑問はそれだった。高杉達武闘派と比べて、桂たちにそんな有名な人斬りやらがいるわけでもなく、乏しい奴らばかり。
…それなのにどうやって……と疑問に思うのは普通のことだ。





「それなんですがね、気になる情報が……桂側に妙な連中が助っ人についていたらしくて……妙なガキを二人連れた馬鹿強い白髪頭の侍らしいんです。」





山崎の言う人物など、そう何人もいないだろう。二人の脳裏に浮かぶのはあの人物……





「…野郎か、確かあの野郎は以前、池田屋の一件のときも桂と関わっている風だったが、うまいこと逃げられたんだったな……」






銀髪の侍…坂田銀時。







「それともう一つ。…これはもう今じゃ攘夷浪士達の間でしか知られてないと思うんですけどね、」


「んぁ、なんだ…?」


「"鬼兵隊の鬼の牙"」


「………なんだそりゃ」






山崎の口から出た言葉に眉を寄せ、首を傾げた。





「攘夷戦争時に高杉晋助率いる義友軍、鬼兵隊の中で一番の剣の腕前を持つ人物の異名で…高杉の右腕とも恐れられた人物…それが"鬼兵隊の鬼の牙"なんすよ」


「ほぉ……で、その"鬼兵隊の鬼の牙"が何だって言うんだよ?」





トシの言葉に、山崎は表情を曇らせた。





「…そいつはここ何年、姿を消し、皆の記憶から消え去っていった……その奴が、いたんですよ!今回の件と絡んでいたんですよ!」




「"鬼兵隊の鬼の牙"…その人物の正体が、わかったんですよ!」


「……何者だ?」






山崎の言葉に、トシは嫌な予感がした。…出来るならば、この言葉の続きを聞きたくない、と。





「花村菜子……そう、菜子さんだったんですよ…"鬼兵隊の鬼の牙"は…!」


「………っ」






山崎の言葉に、少なからず動揺した。






「アイツが、"鬼兵隊の鬼の牙"だァ?はっ、山崎ィ、もっとマシな嘘はつけねーのか?」


「本当ですよ、副長!!現に、菜子さんは姿を消しちまったじゃないですか!!」






…そう、皆はここ二、三日菜子の姿を見ていない。見た人物などいない。…もし、山崎の言うとおり菜子がその"鬼兵隊の鬼の牙"ならば…彼女が姿を消した理由もわかる。…が、あまり信じたくない内容だ。





「チッ…仕方ねェ、あの万屋と菜子について…洗え。元々うさんくさい奴だ、探れば出てくるだろ」


「…はい」






このとき、山崎には気付いていた。…トシが、少し悲しそうな表情を浮かべたことを。



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