成長期の少女
「市丸隊長、こちらの書類……」
「しぃー!」
「…えっ…?」
イヅルが隊長室へ入った途端、ギンに静かにするよう促された。一体どうしたものかと首を傾げながら隊長室を見渡すと…ソファーのところに横になっている琥珀の姿が目に入った。
「今な、琥珀昼寝中やねん。こない気持ちよさそうに眠ってるところ見るとほんまこっちも気持ちええなぁ」
「…や、隊長。一応まだ執務中ですし、彼女も三番隊の席官を持つ身ならばここはちゃんと起こして執務を…」
「何言うてんの、イヅル。琥珀がせっかく気持ちよう寝とるのに、これを起こせって言うん?そないえげつない真似出来るわけないやろ」
「…そ、そう言われてもですね…!」
「琥珀は今成長期やから、しっかりと睡眠をとる必要があるんや。せやから琥珀は執務中に昼寝してもええねん」
「それは一体どういう理屈なんですか……」
ギンの琥珀贔屓なのをちゃんと理解していたイヅルだが、こうも甘いとやりづらいものが多々ある。彼女自身は、自分が注意したことに関しては謝罪もするし、改めたりもする。
…しかし、ギンはそういうわけにはいかない。どこまででも、とことん彼女を甘やかすし、彼女への批判は一切許さない。
「ほんま、琥珀は寝顔も可愛えぇなぁ〜…思わず襲ってしまいそうや」
「えぇ!?」
「こらこらあかんよ、イヅル。そない声上げたら琥珀が起きてまうやん」
「…す、すみません」
ちらり、と琥珀の方へ視線を向ければ、変わることなく昼寝をする姿があり、イヅルはほっと胸を撫で下ろす。もし今ので彼女を起こしてしまっていたら、どれだけギンに責められるはめになったか、考えるだけでも恐ろしい。
「…後、そないジロジロ琥珀のこと見たらあかんよ。琥珀の寝顔も僕のもんやねんから」
琥珀が眠るすぐ傍まで近寄ると、ギンはそっと彼女の柔らかい頬に口付ける。
「琥珀は全部僕のものやねんから」
にっこりと満面の笑みを浮かべながら、彼女の両頬を両手で包み込むと…今度は彼女の小さく赤い唇にそっと口づけを落としたのだった。
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