少女×お酒=?
「乱菊!」
「もう〜そんな怒んなくったっていーじゃない〜」
ぴしゃり、とギンの怒鳴り声が乱菊がよく通う居酒屋の店内に響いた。が、怒鳴られた本人はと言うと、何も気に留めていない様子である。…それもそのはず。何故なら、すでに酒のせいで出来上がっているからだ。
仕事をさぼっていたため、残業する羽目になったギンは乱菊に琥珀を託し、一緒にご飯を食べるように任せたのだが…まさかこのようなことになるとは思ってもいなかった。
「何してくれてんねん!僕、琥珀にだけは酒飲ますなってあれほど言うてたやん」
「ジュースとお酒を渡し間違えちゃったのよ〜…ひっく」
「んなアホな」
はぁ、と溜め息を溢すギンの視線が向かうのは…乱菊の隣で顔を真っ赤に染めて横になっている琥珀だった。
「琥珀、大丈夫か?しっかりしぃ…」
「ギン、ちゃん…?ひっく…」
琥珀に話し掛けると、彼女からは相応しくない酒の匂いが漂ってきた。とろーん、とした瞳が可愛らしい…なんて思ってる場合ではなさそうだ。
「へへっ…ギンちゃんが三人もいる〜!どれが本物の、ギンちゃん…?ひっく」
「…こらあかん、完全に酔っ払っとるわ。琥珀、おいで。帰るで」
「ひっく」
彼女をそっと抱き上げるギン。いつもより琥珀の体温が少し熱い。
すると琥珀はスルスルとギンの首元に腕を回す。
「…ギンちゃんの、匂いらぁ…!」
「…ちょ、琥珀!?」
すりすりと自分の頬を摺り寄せてくる琥珀に若干戸惑い気味のギン。酔っ払っているとはいえ、普段とはまた違った甘え方をしてきた彼女にギンはどう対処すべきなのかわからなかった。
「ギンちゃん好き好き〜」
「ちょお琥珀!落ち着き!?な?」
「…ギンの方が落ち着くべきなんじゃないの?ひっく」
「乱菊は黙っとり!……あっ琥珀!どこ触ってんねん!?」
「お肌つるつるらね、ギンちゃん〜…ひっく」
「あかんて琥珀!…ここの勘定は僕が払うさかい、乱菊も帰り」
「えーだってまだ飲み足りない…」
「ええから!!」
バタバタと騒がしくしつつも、何とか乱菊を帰し、琥珀を連れて帰ることに成功したギン。…だが、ここからがまた大変だった。
「…っちょ、琥珀、くすぐったいやん…」
「ちゅっちゅっするの〜」
彼女の言葉通り、琥珀はギンの胸元に顔を埋めて、口づけを繰り返している。キスマークを残すわけでもなく、ただただ口を這わすだけだ。
一方ギンも、口では「あかん」などと言って窘めているが…本音を零せば、こんな風に琥珀が素直に自分に甘えて来てくれていることが嬉しくて堪らない。口角は上がりっぱなしである。
「…ほんま、いつもこうやったらええのに…」
「?ギンちゃん…ひっく」
「琥珀、まだそれやるん?」
「ちゅっちゅっするの〜…らってね?琥珀、ギンちゃんのことが…らーい好きなんらもん…へへ…」
「…!」
呂律が回っていない少女相手に、こうも自分が惑わされるとは思わなかったと自分自身に驚いているギン。胸が掻き毟られるような衝動に駆られた。
「……ギンちゃん、ちゅっちゅ…嫌?…琥珀、嫌い?」
「…んなわけないやん、めちゃくちゃ好きや」
瞳に涙を込み上げ、今にも泣き出しそうな少女をギンは包み込むように優しく抱き寄せる。そして、先程まで自分の胸元辺りに口づけを繰り返していた少女の唇に自分のを重ね合わせた。
「…ほんと…?」
「せやったら、琥珀が気が済むまで接吻しよか?」
「…ちゅー、してもいいの?」
「ええよ」
不安そうに顔を上げる琥珀に、再び口づけを落とすギン。すると琥珀はまたギンにしがみつくように抱きついてきた。
「…こら、今後絶対に僕の目の届かんところでお酒飲ませたらあかんなぁ…」
「?ギンちゃ…?ひっく…」
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